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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

レスキュー・前

「それで、今、キャベツすごい高いじゃないですかー。
代わりに白菜でどうだって思って、入れてみたんですけど、やっぱりマズくって」
「お好み焼きに白菜ってあんた・・・」
「全部食べましたけどね。白菜から水出ちゃって。
べちょべちょになっちゃって、激マズでした。あはははは」
「懐かしいねぇ。椿様が坊ちゃんのために作ってあげた時も、
最初は食べれるもんじゃなくてねぇ」
「あははは、そうなんですか。やっぱり最初は」
「・・・・あんた、どうしたんだい」
「へ?なにが?」
最初は何を言われてるかわからなかった。
センパイを見返そうと思ったらモヤモヤして見えなかった。
ちゃぶ台の上で、パタパタと音がした。
頬の上を、次々に何かが滑って行って、虫でも付いてんのかと思った。

自分でも気づかない、溢れ出た感情は
センパイにおでこをビシッと叩かれて認識させられる。
「このバカっ!ちゃんと泣きな!あたしの前で強がるんじゃないよ!」
「~~~~~センパイが・・・・センパイが坊ちゃんとかって言うから~~~~~~~!」
「バカだね、あんたは。我慢しすぎなんだよ。ほら、その泣き笑いやめな!」
怒りながらも背中に当ててくれる手があったかくて、
あたしはタガが外れたみたいに泣きじゃくった。
あれから泣かなかった分、全部。

「2年経ったねぇ」
「・・・まっ・・・に・うううう・・・ひっく・・これ・・ああうう…か…
・・・ヒック・・・ど・・うううううぅぅぅ・・・ああ・・・っくがん・・
・・・・・ヒッ・・・ば・・っるっううっう・・えええぇぇぇ」

泣いて
泣いて泣いて。
少し元気が出た。
センパイの、小さな手を感じながら、もうちょっと頑張ろうと思った。


「・・・・・・・・・・と、ケナゲに決意を固めたあたしが、何でここにいるんでしょーか?」
隣にはファーストの大きい座席に埋まるようにしてセンパイ。
「あのー・・・センパイ?」
大学が終わって、校門を出たところで捕まった。
黒い服のでかい男たちに。
車に乗せられて、着いたところは空港ロビー。
キョトンとするあたしにセンパイが言った。
「あたしはこれからNYのお屋敷に定期報告に行くところなんだけどね」
「はぁ、行ってらっしゃい」
見送り強制?
「腰が痛んでどうしようもないから、あんた、一緒にきて介護しな」
「へ?だ、ダメですよ、いきなりそんな」
「かよわい年寄り一人で、何かあったら大変だろ」
「そ、それならお屋敷のどなたかに・・・」
「みんな忙しいんだよ!いいから来なっ!」
「あたしだって忙しいです~~~!!!助けて~~!誰か~~!」
腰が痛いとは思えないすごい力と、ヒトの話を全く聞かない
強引さに、あたしはあの姉弟のルーツを見た気がした。

「あの~・・・やっぱりマズイと思うんですけど~・・・」
途端にぎゅうぎゅうとほっぺをつねられる。
「いらいいらい!へんはいっ!」
「往生際が悪いねっ。いいから坊ちゃんに会っといで。
あんたこのままじゃ、ダメになっちまうよ」
「・・・大丈夫ですよぅ・・・だって、あたしは」
「黙って言う事聞きな。あたしは遠距離恋愛のベテランだよ。
この道62年目のキャリアなんだから。たった2年目のひよっこが語ろうとしてるんじゃないよ」
「え、それってやっぱり相手は」
「旦那に決まってんだろ」

何と言えばいいのか。
もうすぐ会えますよ、ってのもシツレーだし(殴られる)。
おお。
地上と天国で繰り広げられる、スケールのでかい遠恋。
この世とあの世って言った方がいいのか。
圧倒されたあたしは反論を諦めると目を閉じ、
もうどうにでもなれとフカフカのシートに沈み込んだ。

会えるのかな
会ってもいいのかな

意識が沈む前に見えたのは、2年前に別れた時の笑顔で。
それすらぼんやり霞んできていることが悲しくて。
夢の中で泣いた。

***

「それじゃあたしは使用人棟の方へ行ってくるから。あんたは母屋で待たせてもらいな」
「は、はい。あの・・・道明寺のお母さんは?」
「奥さまは今、ヨーロッパへ視察に行っておいでだよ。あんたに会いたがってたけどねぇ」
「えええぇぇっ!なんでっ?」
「大声出すんじゃないよ。まあ、あの奥様の事だから素直には
言わないけど?『2年もしつこく待っていて本当にご苦労な事だこと』
って言ってたから、労うつもりだったんじゃないかねぇ」
「・・・・・わっかりづら・・・・・」
「はははははっ!」

客室で待つように言われたけど、落ち着かなくて玄関ホールまで出てきた。
高い天井。広い空間。シン、としたような空気。
・・・・・威圧される。
いつの間にかあたしは、隅にしゃがみこんで絨毯の模様なんかいじっていた。
この空気の中で、アイツは一人で頑張ってるんだ。
道明寺司として・・・・
「な、なんか、緊張してきた」
久しぶりに会うからどんな顔すればいいかわからない。
嬉しくて不安で恥ずかしくて怖い。

アイツはなんて言うだろう。
なんだお前もうギブかよなっさけねぇな、とか?
俺も会いたかった、とか?うん、それがいいな。

・・・・・・・・忙しいから迷惑だって言われたらどうしよう。

「なに百面相してるんだい」
「せ、センパイッ」
ぎぇ、見られてた。
「もうすぐ帰って来られるそうだ。あんたが来てる事は言ってないから」
その方が感動的だろ・・・目を三日月みたいにして肘でつつかれて・・・・
「・・・・・遊ばないでクダサイよ・・・」
がくーっと力が抜けてその場にしゃがみこんだ途端、ドアが開いた。

うっ・・・わぁ・・・・・・!

・・・・・・来た・・・・!

コートをひるがえしてモデルみたいな男が入ってきた。
変わらないくるくるの頭に、彫刻みたいに整った冷たい感じの美貌。
不機嫌な表情。
長い睫毛の下の真っ黒な瞳。
しなやかに動く獣みたいに、野性的なオーラを纏うこの男。

あたしの

大好きな

目と目があった。
ぴたりと彼の動きが止まる。
「・・・・・・よお」
会いたかったとか、来ちゃったとか、そういうのも一応用意してはいたんだけど。
悲しいくらいあたしはあたしで。

「・・・・・・・・・まきの?」
しゃがんだあたしからは道明寺の顔が逆光で見えなくて。
早く顔を見たいような見るのが怖いような一瞬の躊躇。
「・・・・・・・本物か?」
「おうよ」
強気で言ったはずの言葉はカッコ悪く震えて響いた。

道明寺が広いエントランスを5歩で横切ってあたしの前に立つ。
そのまま膝をついて頬を挟み込む。
「マジかよ・・・・」
呆然とした道明寺は、確かめるように何度も何度も頬を撫で。

それから

めちゃめちゃ嬉しそうに笑った。


「久しぶり」
あたしも笑ったつもりが失敗して。
多分すごくヘンな顔。
泣くまい、と思ってたのに涙は勝手に溢れてきて、
彼の手を伝って絨毯に無数の小さなシミを作っていく。
「牧野」
キレイな顔が傾けられ、ゆっくりと近づいてくる。
伏せた睫毛の長さと、その下から覗く瞳の熱っぽさをうっとり見ていた
あたしは、視界の端に居並ぶ使用人たちを見つけて、突然我にかえった。
「ひええぇぇぇぇっ!」

ガンッ!

「・・・・っつ~・・・」
「ちょっとあんた!こんなとこで何してくれようとしてんのよっ!」
「ってーな!この暴力女!2年ぶりに会った彼氏様にイキナリ頭突きかましてんじゃねーぞ!」
「あんたが人前でヘンな事しようとするからじゃん!」
「ちょっとは感動的な再会に流されろ、ブス!くちゃくちゃな顔しやがって」
「流されるか、アホ!あんたに任しといたら公衆の面前で押し倒されるわ!」
「やったろーか!くっそ、マジかわいくねぇ」
目が合った。
お互い同じことを考えてるのがわかって同時に吹き出した。

全然変わってないじゃん。

呆気にとられている使用人たちの前でゲラゲラ笑って。
どちらからともなく立ち上がる。
「ちょっと背ェ伸びたかよ」
なんて頭をぽんと叩かれて。
「伸びるか!」
なんて笑ってたらイキナリ手を掴まれて引っ張られた。
「行くぞ!」
「行くってどこに。ちょっと、センパイも来てる・・・」
「タマは毎月来てるからいい。じゃな、タマ」
「ちょっとどこ行くのよ!速い、速いって!もっとゆっくり歩いて!」
「うるせぇな、俺の部屋だよ!」
「ゆっくりってば!」
歩調を合わせてくれないから殆んど全力疾走で。
ぜぇぜぇ息を切らせてついていく。
キライだ、広い家なんて。





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コメント
せつない・・・・
涙をコントロールできないくらい、がんばったね。
つくしぃ。

うれしそうな司が見れて(想像できて?)うれしいよぉ。
で?部屋で?何があるのかなぁ・・・
ウッヒヒヒヒ❤

感動的に流されちゃう再会もみたかったケド
らしくて、いっかぁ~と思ってしまいました。
2009/09/19(土) 16:17 | URL | ちふゆ #-[ 編集]
ご褒美ですね。
 いつも楽しみに読ませてもらってます。
タマ先輩の心意気にドキューンです!!。
2009/09/19(土) 21:05 | URL | to-ma #-[ 編集]
久々の再会で・・
つくしちゃん我慢の限界で、読んでいてもせつないです。タマさんがすごい優しい
次は司とのラブラブ?
楽しみにしていますがんばって下さい。
2009/09/20(日) 01:30 | URL | つゆかノエル #STO9711o[ 編集]
ちふゆさま
ウッヒヒヒヒって・・・すっごい爆笑しました。
しかもハート、黒いし。
ラブラブ目指します頑張ります。
このつくし、ちょっと乙女入ってるから、いけっかも。
2009/09/20(日) 06:22 | URL | とば #-[ 編集]
to-maさま
いつもお寄りいただきありがとうございます。
センパイ、かなりゴーインですね。
拉致って…

2009/09/20(日) 06:33 | URL | とば #-[ 編集]
つゆかノエルさま
度々のコメント、ありがとうございます。
ラブラブ頑張ります。
気を抜くとすぐにふざけた方向に行っちゃうんです~!
つくしが悪い。←めっちゃ責任転嫁

2009/09/20(日) 06:37 | URL | とば #-[ 編集]
こんちは~!!e-463

タマさんの心意気と久しぶりの再会に
しっとりいいムードe-446と思ってたら
やっぱり・・・ね。

続きが楽しみです。フフフ・・・


     では、また・・・。e-463

2009/09/20(日) 15:41 | URL | magenta #-[ 編集]
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