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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

専務と私~攻防~

メシ喰いがてらのシゴトを終えて、今度は書類トレイの中身と格闘するために社に戻る。
相手方の秘書と詰める話があるっつー西田は、残してそのまま直帰させた。
就業時間を過ぎたエントランスはガランとして、常夜灯の明かりだけがフロアをぼんやりと照らす。
エレベーターに乗って52階。
眼下に煌めく光の渦に、愛しいボケ女の瞳を思い出して・・・・・・・・・ムカついた。


『だから、人数集まんなくて困ってたから、出るって
言っちゃったんだって!いーじゃん!どうせあんた今日、会食でいないし!』
『ざけんな、てめぇ!なんだよ、コレ!』
牧野のデスクに置かれた回覧文書には
《女子社員対象》の表題と
・痴漢にあった時の対処法
・自分の身を守る
・女性特有の危険に会ってしまったら
とか書いてあって、問題は一番下だ。

*動きやすい服装でご参加ください。
 男性社員の協力による実技演習があります。

そこをトンと指さすと、ボケ女が、それが何か?みてぇな顔で見上げる。
かっわいくねぇ。
『俺がシゴトでメシ喰ってる時に、テメェは他の男と組んずほぐれつかよ、信じらんねぇ』
言ってやると、牧野はぶぅっと吹いて
『バカっ!何が組んずほぐれつよ!ヘンな事考えんな、アホ!
協力してくれる人たちに失礼でしょーが!』
『ドサクサに紛れて触ることしか考えてねーよ、男なんて』
『そんなの、あんただけだよ!』
『るせぇ!とにかく認めねぇ。いいか、ぜってぇ出んなよ!断われ!
言うこときかねぇと、泣かすぞ』
『絶対出る!約束したもん。研修出て、痴漢の撃退法習って、
あんたなんかぶっ飛ばしてやるんだから!』
『習わなくたって常に暴力ザンマイだろーがよ!』
『言っとくけど邪魔したら許さないからねっ!』


あったまくる、あのワガママ女。
思いだしたらやっぱ許せねぇ。
メシ喰ってる時だって、ずっと頭ん中じゃ他の男とアイツのからんでる姿がぐるぐるして。
ハナシなんて半分スル―だった。
まあ、今日は親睦を深める、みたいなのが目的だったし別にいい。
相手のジジィの息子がフランス女と結婚した、なんてハナシ、興味ねぇし。
その後で、娘もそろそろいい年頃で・・・なんて話
出してきやがったのは、やっぱそーゆーコトなんだろう。
ケッ
ったくウゼぇ。

いっそ牧野の事を大っぴらにしちまおうか。
他の男どもへの牽制にもなるし、玉の輿狙いの女どもも、ちっとは静かになんだろうし、
政略結婚狙いのクソどもにも予防線張れるし、何より俺が嬉しいし。
簡単だ。
エントランスのど真ん中で、牧野にキスの一つでもしてやりゃいい。
うんと濃いヤツ。
抵抗しなくなるまで可愛がってやって、大人しくなったところで
抱きしめてやりゃあ一発だ、お披露目。
まあ、牧野には半殺しにされるだろうが、半分生きてりゃ大丈夫だ。
俺の打たれ強さをなめんな。
ダテにあのキョーボー女と長年付き合ってる訳じゃねぇ。

ちん

軽い音がしてエレベーターが到着し、扉が開く。
壁にもたれたまま少し考えて。

ボタンを押した。




回覧には2階の研修室って書いてあった。
こんなとこ来んの初めてかもしんねぇ俺、研修ねぇし。
そこだけ蛍光灯がついたフロアはやけに明るくて、別世界に見える。
ドアの前に立つと、
「それではこれから実技に入りますので、すみませんがテーブルと椅子を隅に寄せてください」
と、女の声と、ガタガタ物音。

「セーフ」

《研修中。御用の方はお静かに》
っつー貼り紙にクッ・・・と笑うと、遠慮なくドアをバン!と開けてやった。
「せっ・・・!!」

ザワッ・・・

専務、と呟く幾つもの声と女どものキャア、みてぇな悲鳴じみた声。
無視して大声で呼んでやった。
「牧野、いるだろ」
ザワメキが変化する。
ターゲットを探す視線と、あちこちから牧野さん、牧野さんと慌てた声。
そして。
人垣が割れたところからこっちに向かってくる、凶悪なツラした俺の女。
「何でしょうか」
「シゴト。上行くぞ」
来ると思ってたろ?
ニヤリと笑って言ってやった。
が。
残務なんかないとか就業時間は過ぎてるとか研修中だとか邪魔すんなとか。
暴言、毒吐きなんか山ほど予想してたのに。
以外にも牧野はこっくりうなずくと、係の女に断わって部屋を出てきた。
そのままエレベーターに向かって足早に歩き出す。
「え」
あんまり意外だったからついてくの忘れてその場に立ち尽くす。
どうしたんだアイツ。
呆然と見送る間に、牧野は行っちまった。
慌てて追いかけながら、いつもと違う牧野の様子にめちゃくちゃ動揺してた。
あの牧野が。
あの牧野が。
もっかい言うけどあの牧野が、文句も言わず黙って言う事聞くなんて。
・・・・・・・・・気持ち悪りぃ
軽い機械音をたててエレベーターが止まる。
扉が開くのももどかしく、飛び出した。

専務室に入ると、ソファーの上に膝を抱えた牧野がちんまりと納まっていた。
ぼんやりとしてとらえどころのない表情。
「どうしたよ」
隣に座って覗き込むと顔を背ける。
「俺がなんかしたかよ」
したけど。

返事がない顎のラインをじっと見てたら、それは細かく震えだして。
弱々しく言葉を紡ぎ始めた。
「話し・・・聞いてたら、思い出しちゃって・・・・」
「何を」
「昔・・・・・乱暴されそうになったこと・・・とか・・・」
「誰にだよっ!」
カッ・・と、目の前が真っ赤になった。
一気に全身の血液が沸騰して頭に上り。
腹の底からドロドロしたものが噴き上がってくる。
牧野は顔を背けたまま黙っている。
「誰だ!言え牧野。その男、ぶち殺してやる!」
爪が喰い込むくらい拳を握りしめて唸った。


「あんた」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

「あんた。道明寺」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

一瞬で頭の中に、俺と牧野の愛の想い出劇場を繰り広げた俺は、ようやくそれに行きあたって。
・・・・・・・・・・・・あれかよ
愕然とする。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・時効だろ」

「・・・・怖かった・・・あたし何にもしてないのに追いかけられて・・・
・・・誰もいなくて、助けてって言っても誰もいなくて・・・
・・・一生懸命、抵抗したのに全然ダメで・・・怖くて、怖くて・・・・」
牧野の肩が震える。
泣いてんのかよ、顔見えねぇ。

「男の力には敵わないんだって・・・・必死で暴れたのに、逃げられなくて・・・怖くて・・・」


ああ。
夕陽の校舎。逃げる牧野。引きちぎったボタン。シャツに滲んだ血。
牧野の・・・・涙・・・
心臓が、棒を突き立てられたみたいに痛む。
ぶち殺してやりてぇ、あの時の俺。
例え昔の話でも、それが自分でも。
牧野をこんな風に泣かせて・・・・
泣かせて・・・・
・・・・・泣かせて・・・・?



「・・・・おい?」

・・・・・・・・笑ってんじゃねーかっ!

「・・・・・・・・っ・・・・・・・ぅぶっ・・ぶぶぶぶはははははっ!!ダメっ!ダメだもうっ!」
そのままゲラゲラ笑いだすバカ女の頭を引っ掴み、こっち向かせる。
「てめぇっ!」
「あははははは!ビックリした?やったね!」
すんげーハイテンションのこの女をどうしてくれよう。
丸めて塩かけて喰っちまってもいいか?
「絶対、来ると思ったんだよね~!あんた言ったら聞かないから。
で、拉致られたらとーぜん5発は入れてやるつもりだったけど、
研修中にあの事思い出したから、精神的に苛めてやることにした。ははははは」
目尻の涙を拭きながら笑い止まないバカ女は、こっちに向き直って上目遣いで攻めてくる。
「反省した?」
・・・ったく始末におえねぇ。
「・・・マジで犯すぞ、てめぇ」
「あ~!全然反省してないじゃん!」
牧野は大声で言って、いきなりのけ反った。

ガシンっ!
「ぐぇっ・・ゲホッ・・」
ドサッ!

胸の真ん中に不意打ちのヘッドバットくらって、ソファにひっくり返る
俺の腹の上に牧野が乗っかってくる。
「ねぇ。思い出しついでに聞きたいことがあんだけど」
暴力振るっといてへーゼンと話しかけてくんじゃねぇ、このキョーボー女!

「あの時、何であんな事したの?」

・・・・・っ
うるせぇ。
バカ女。
んな昔の話、今さら蒸し返してきやがって、執念深いにも程があるだろって。
あんなの未遂だし結局キスしかしてねぇし今は俺の女でもっとスゲェ事してるくせに。
しかもなんだよこの体勢。
服、脱いでたら絶対拒否るくせに。いっつも無理矢理乗っけられて
恥ずかしがって半べそかいてるくせに。
つーか、こんな自分から乗っかってくるんなら脱げ。今すぐ。

記憶の『忘れたいグループ』に沈めてある、あの時の感情に、
意識が向きそうになるのを必死で逸らして、牧野を睨みつける。
「忘れた」
「はあ?」
殴られるかと思ったが、意外にも牧野は冷静に溜め息をつくと、
まあ、道明寺だからね、とか言いやがった。

・・・んな訳ねーだろーが。
今だって鮮明に思い出せる。
あの時の。
勘違いして、一人で浮かれて。
思ってもみなかった事実突き付けられて、キレて。
暴れて。
苦しくてどうしようもなくて、全部牧野にぶつけようとした。
ハラん中焼き切れるんじゃねーかと思うくらいの激情。
あ、ちくしょー。
思い出しちまったじゃねぇか。
すっげぇブルーになった俺をボケ女が覗き込む。
「『ゴメンナサイ』って言ったら許してやってもいいよ?」
得意そうに笑う唇を今すぐ塞いでやりてぇ。
言うまで離してやんな~いとか言って、上に乗っかって両手押さえつけて。
バカ女。

「お前は何でだと思った?」
素直に謝るのを許さねぇ、くだらねぇプライドを恨めしく思いつつ、
恨み節覚悟で牧野に聞いてやると、真面目な顔になって目を合わせてきた。
「うん、あたしもすっごく考えて、わかったんだけど」
それから首をかしげながら、すげーカワイイ顔して

「思春期の衝動?」

とかホザキやがった。
「は?」
唖然とした俺に畳みかけるように
「ほら、あたし女だからわかんないけど。あるんでしょ?
盗んだバイクで走りだしたりとか?夜中に校舎中の窓ガラス割ったりとか」
そういえば窓ガラスは割ってたね、とか言って笑った。

コイツ全然わかってねぇーっ!!!

ちくしょう。俺のさっきの反省返せ。
あの時のどうしようもない苦しさも。
こんなボケ女に捧げたかと思うと、すっげぇ脱力。
こっちの気持ちも知らねーで、あ、違ったの、なんて言ってきやがって。
どうしてくれよう。

俺は牧野を乗っけたまま勢いよく起き上がった。
「ひゃあぁぁっ!!」
バランスを崩した牧野をソファーに沈めて、一瞬で押さえつけて。
そのままジリジリとウエイトかけて乗っかる。
「バーカ、てめぇみてーな小っせーのがオトコ押さえこめると思うなよ」
ニヤリと笑って言ってやると真ん丸な目で見上げてくる。
隙だらけの唇に、音立てて吸いついて。
優しく優しく言ってやった。
「そういや悪かったな、研修邪魔して」
「へ?」
牧野は目をパチパチさせて全く状況わかってねぇし。
「実技だったんだろ、あれから。代わりに俺が教えてやるよ」
途端にバタバタ暴れ出して
「やっだ!いらないし!あんたぜっったいヘンな事考えてるでしょ!」
「何がだよ。言ったろ、護身術習わされてたって。つえーぞ俺は」
「いいから!いらないっ!」
「ほら牧野。手」
ほとんど無理矢理両手を掴んでソファーにゆっくり押しつける。
「何だっけ。『オトコに押し倒された時の対処』だったか」
「やだ!やだってば!」
ギッと睨んでくるカワイクねぇ両眼にキスしてつぶらせて。
耳まで辿りながら囁いた。
「いいか牧野、よく聞け。オトコが乗っかってきて、こーゆー体勢になったらな」


「もう逃げらんねぇよ」
「ぎゃああああぁぁぁぁぁっ!やっぱりいいいぃぃぃぃぃぃっっ!」

叫び出した牧野に笑いながらキスを落とす。
さあて、何してやろうか。
繊細な俺を傷つけた仕返し。

覚悟しやがれ

 


                   Fin


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コメント
専務シリーズうれしいなぁ~

しっかり、あだ討ちにあってますねぇ。
つくしちゃん。

過去かぁ・・・
司は鈍感つくしちゃんに、だいぶ長い間いたぶら・・悩まさ・・・うん、適切な表現が難しい。翻弄されてた!!(←これがぴったり?)からなぁ。

暴力あり、恥ずかしいことあり、色々あったもんね・・・
今の関係になるまで、だいぶ紆余曲折。
でも、笑い話になっていて本当によかったぁ。
いや、襲うキッカケ?

繊細な司には、誰もかなわないってコトで。
2009/09/18(金) 14:26 | URL | ちふゆ #-[ 編集]
うれしいー
毎日更新お疲れ様です。
ホント、面白いです。
サイト見るのが楽しみです。
過去作品も何度も何度も読んでます。
これからもがんばってくださいねーv-238
2009/09/18(金) 15:15 | URL | ひと #pJwfKlE.[ 編集]
わーい
専務シリーズ楽しみにしていました。
面白くて、一人で笑っています。
時々、過去の作品も読み返しています。
次のお話も楽しみにしています。
がんばって下さい。
2009/09/18(金) 15:25 | URL | つゆかノエル #STO9711o[ 編集]
ちふゆさま
こんにちは。
度々のコメントありがとうございます。
今確認してみたら、問題のシーンは3巻でした。
そりゃ時効ですよね。←え
あの頃の司は、髪のロッドも細くて、ホントにイジワル顔してたっけ・・・(回想)
2009/09/18(金) 16:16 | URL | とば #-[ 編集]
ひとさま
こんにちは。
コメントありがとうございます。
温かいお言葉、本当に励みになります。
拙い文章を自覚しながらも、漏れる愛ゆえに恥をさらし続けております。
頑張りますのでヨロシクお願いします。
2009/09/18(金) 16:20 | URL | とば #-[ 編集]
つゆかノエルさま
こんにちは。
度々のコメントありがとうございます。
専務シリーズ…ちょっぴりイイ感じで終わったのに、やっぱり書き足りなくてやっちゃいました。
バカップルめ。
2009/09/18(金) 16:25 | URL | とば #-[ 編集]
ふふふ(*^-^*)
 すごく素敵ですね。読ませてもらって、すごく楽しいです。にやけてしまいます。
 次回作も楽しみに待ってます。
2009/09/18(金) 22:03 | URL | to-ma #-[ 編集]
to-maさま
こんばんは。
コメントありがとうございます。嬉しいです~。
これからも頑張ってラブっていきたいと思います。
2009/09/18(金) 22:39 | URL | とば #-[ 編集]
こんにちは。
バカップル最高です。
続き楽しみにしてます~。
2009/09/19(土) 09:59 | URL | usausa #-[ 編集]
坊ちゃんの琴線
こんにちは!!e-320

やっぱ、専務と私は・・・おもしろい!!e-454v-218

坊ちゃんの繊細な(?)心の琴線に触れるような
過去の心情も垣間見れて……
やっぱり最後はガバッっとつくしに襲い掛かる

二人はこうじゃないと・・・e-440フッ

     
     では、また・・・。e-463

2009/09/19(土) 14:41 | URL | magenta #-[ 編集]
usausaさま
こんにちは。
コメントありがとうございます。嬉しいです。
ワタクシもバカップル大好きなんですが、陰で苦労している西田さんのことを考えると…ほろり
2009/09/19(土) 14:54 | URL | とば #-[ 編集]
magentaさま
こんにちは。
坊ちゃんよく繊細って漢字で言えたなぁ、みたいな。
昔はカタカナでしたよね。
過去のトラウマも武器に変える、つくしの雑草魂もスゴイ。
それに比べりゃ司なんてガラスのハートですね。
2009/09/19(土) 14:58 | URL | とば #-[ 編集]
初めまして(ペコリ)。どの話も面白い><キャーもう司ヤバイぐらいカッコイイですね~。これからも楽しみにしてますので頑張って下さい
2009/10/04(日) 06:27 | URL | 蝶羅 #vgU955dU[ 編集]
蝶羅さま
はじめまして、こんにちは。
すっごい嬉しいです~~~!
ウチの坊ちゃんにカッコイイ・・・きゃぁ、初めてかも。
ニヤニヤしちゃいました。
ありがとうございました。
2009/10/04(日) 15:19 | URL | とば #-[ 編集]
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