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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

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エンジェリック 3

うとうと眠る道明寺。
まだ麻酔が効いてる。
「明日の朝くらいまで、麻酔効いてると思う。皆、一回帰ったら?明日も仕事でしょ?
道明寺はおちついてるから」
アラームが鳴った輸液ポンプをチェックして、ルートの気泡を追いだしながら声をかける。
「おう。一安心したしな」
「司、大丈夫そうだしな。良かったよな、牧野が担当で」
「良かったのか?俺ならイヤだね。意識ないうちに、惚れた女に全身くまなく観察されて
触られまくりだぜ~?」
「羞恥プレイかよ、くくくく」
「うっさいな、仕方ないじゃん。偶然うちの病院に運ばれちゃったんだから」
「司が起きたら教えてやろ~っと」
「げ!絶対だめだからねっ!さ、もう帰って帰って」
「おう。司の事、頼むな」
「任せといて」
ビシッと親指を立ててニッと笑うと、3人が安心した顔で頷いた。

皆がいなくなった病室で
時計を見ると、もうすぐ交替の時間だった。
青白い額にそっと手の平を当てる。
びっくりしたよ、ホント。
「ちゃんと言うこと聞いて、早く良くなりなよ」
そのままくるくるの髪を撫でると、長い睫毛が持ち上がる。

やば。

あたしはイタズラが見つかった子供みたいに手を引こうとして。
大きい手に阻まれた。
指を絡めてくる、点滴につながれた腕。
「どうしたの?痛む?」
「いや。・・・・・・・・牧野が優しいから」
酸素マスクの中で、少し籠る低い声。
「ふふ・・・患者さんにはやさしいよ、アタシは」
「なあ、ずっと居る?」
「交替まではね」
「んだよ、心配じゃねーの?」

手の甲をゆるゆると撫でる親指。
半覚醒のぼんやりした視線。
・・・ちょっとかわいい、かも。
くすくす笑うと、道明寺が眉間にしわを寄せた。
「くっくっく、そんなんで睨んでも全然怖くないよ。明日また来るから。
明日は休みだから、友達として面会にね」
「・・・・友達じゃねぇよ。恋人だろうが」
「口にゲンコツ突っ込むよ」
「ひっでぇ、暴力ナース。・・・なぁ、寝るまでこうしてろよ」
甘えるような声色。絡んだ指に力が入る。

やっぱかわいい。
ぷっ。

「・・・んだよ」
「ううん、なんでもない。ふふふ、しょーがないなぁ。看護師としても友達としてもサービスだけど、眠るまでこうしててあげる」
「だから友達っつーのやめろ。傷つく」
「はい、おやすみ」
そのまま静かにしていると、道明寺はまた眠ってしまった。
今夜は付き添う、と言う西田さんが戻ってから詰所に戻る。
諸々の書類を書きあげると、もう交替の時間だった。

「牧野!!道明寺司が入院したってホント?」
「耳はやっ!何で知ってるんですか?」
「下で同期に聞いた。救急で電話受けたんだって。ねぇ、それよりホント?ホントに居るの?
道明寺司!」
「いますよ。特室に」
「うそ~!いや~ん!嬉しい~!!どうどうどう?ナマ道明寺!やっぱかっこいい?」
「・・・・・ふつう」
「ん・な・わ・け・ないじゃん!あ~、今日夜勤でよかった~!友達に自慢しちゃお~っと」
ウキウキの先輩に心の中で溜め息をつく。
確かに顔はいいかもしれないけど、性格は極悪ですよ、アイツは。
期待してるとがっかりしますよ。
真夜中なのに、眠気も吹っ飛び気合いMAXらしい先輩に、申し送りをして勤務を終えた。



白衣を脱いで、カットソーとジーンズに着替える。
髪をほどいて軽く梳く。
ナースシューズをスニーカーに履き替える。
勤務終了。
「お疲れさまでした」
深夜の病院の玄関を出ると、寮までは徒歩3分。
途中交番があるのが安心なのよね~。

やっぱりちょっとは怖い帰り道に速足になると、突然肘のところをクッと引っ張られた。
「!!!!!おまわ・・・」
りさ~ん!!
と叫ぼうとした喉は、上から聞こえた
「牧野」
と言う柔らかい声に慌てて閉じられ、くるんと振り返る。
「・・・花沢類・・・びっくりした・・・」
「おまわって何?」
くすくす笑って全然悪びれない花沢類に
「いきなり腕つかんだらびっくりするじゃん」
と文句を言うと
「だって牧野、競歩みたいに爆走してんだもん」
ケロッと言っちゃうところは変わらないね。
そして弱ってる時にそばに居てくれるところも。
両眼が熱くなって視界がぼやけた。
一生懸命、我慢したけど。


「う・・・・」

ひとつ嗚咽が漏れたらもう止められなかった。
「花沢類・・・道明寺が・・・・道明寺が・・・し、死んじゃううかと思った・・・出血が多くて・・・良かった・・・良かったよぉ~・・・」

さっきまで看てたのに。
状態だって把握しているのに。

あたしはどうしても身体の震えを止めることができなくて、道明寺の名前を呼びながら
花沢類にしがみついて、泣いた。

「牧野、仕事の時と別人」
しばらくして落ち着いたあたしに花沢類が言う。
「だって仕事は・・・仕事だし・・・」
我ながら意味不明。
「気が緩んだんでしょ。そうかなーと思って」
「はぁー・・・やっぱ花沢類にはかなわないなー。あたし、自分でもこんなに動揺してるとは思わなかった・・・・ なんか、むかしアイツが刺された時の事とかも思い出しちゃったりして・・・ありがとね。心配してくれて」
「ん・・・・じゃ、帰る。また司の見舞いに来るから、ビシッとしたとこ見せなよ」
「任しといてよ。白衣を着たら豹変するんだから」
「ぷぷぷ・・・豹変って・・・くくくくくく」
相変わらずヘンなところでツボに入ってる花沢類に笑って手を振って、寮に帰った。

シャワーを浴びて、髪を乾かしてパジャマを着る。
道明寺、大丈夫かな。
傷が痛んでないかな。
我が儘言って、先輩を困らせてんじゃないかな。
「あ~!もう!落ち着かないなっ!」
明日、起きたら様子を見に行こう。
「そうだよ。友達が自分の病院に入院してきたんだから、様子を見に行ったって全然変じゃないよね?みんなも心配してるし」
よし。
じゃ、寝よう。
たくさん泣いたせいか、それとも緊張が続いた勤務のせいか、ベッドに入ったら夢の中に直行
だった。


RRRRR・・・RRRRRR・・・・・・・・RRRRR・・・・・・
「んー・・・・う・・・・さいなー・・・・」
夜勤明けなんだよ勘弁してよー・・・
マナーにしておかなかった自分を呪いつつ、『病棟』と表示されている携帯を取るとなんだか胸騒ぎ。
「もしもし牧野さん、夜勤明けにごめんなさい」
流れてきた師長の声。
・・・・なんかミスしたっけ。
「・・・・おはようございます」
「あの、牧野さん、お休みのところ悪いんだけど、ちょっと病棟に顔出してもらえないかしら」
「あー、はい。あの・・・なんかありましたか?」
「いえ、何て言ったらいいのか・・・」
言葉を探している師長に
「わかりました。今起きたんで、1時間くらいで行けると思います」
って返事して電話を切った。
時計を見るとまだ8時で。
もうちょっと寝たかったな。
でも何だろう。
電話で話しにくい用事。
やっぱなんかミスしたのかな。
考えても心当たりがなくて。
「う~ん・・・まぁ、行きゃわかる!」
ベッドから跳び出して大きく伸びをした。



「お疲れ様で~す」
病棟に着いたのは9時前。
「牧野さん!ごめんなさいね!」
机に向かっていた師長さんが振り返る。
「いいえ・・・あの、なんかありました?」
詰所の中に入って行くと、がしっ!!!
「ぐぇっ・・・」
「まきの~~~!!!」
「せ、ぱい・・・くるっ苦し・・・・」
「怖かったよ~~~~!!!」
昨日、ウキウキだった先輩が、泣きながら抱きついてきた。

「とにかく何にもさせてくれないのよ!バイタルも観察も処置もっ!かろうじてルートは活きてるから、点滴  なんかは行けてるんだけど、身体に触るような事は全部NG!!!」
先輩は顔の前で大きくバツを作ると、見てよこれ、とカルテを差し出した。
先輩の字で何十行にも渡って書かれた、看護記録。
拒否拒否拒否拒否、拒否、ばっかり・・・・。
酸素のマスクもモニターの電極も自分で取っちゃって・・・。
「ルートも抜かれそうになったの。でもお付きの人が『それは牧野様が大切だとおっしゃってました』って言ったらやめたの。
牧野、道明寺司と知り合いなの?とにかく何を言っても『牧野出せ』の一点張りで。
やだもう~道明寺司。憧れてたのに、あんなコワイ人だったなんて~」

あんにゃろう・・・・
ここは動物病院じゃないんだからね!

「あんのガキ・・・・」
ボキボキッボキボキッ
「ま、牧野さん!何するつもり?」
「大丈夫です師長さん」
にっこり、のつもりだったけど、多分ひきつってたと思う。
「術後の生活について指導してくるだけですから」
そのままドカドカ詰め所を出て行くと、後ろから先輩の
「骨は拾うからっ!」
ってエールが聞こえてきた。
振り返ってガッツポーズを作り、その勢いのまま特別室の引き戸を思い切り開けた。

バンっ!!



「道明寺ぃぃぃぃぃっ!!!」




                                                    


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