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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

専務と私~あきら・中~

21:00
『どこでもいいから個室の所』と指定されて選んだバー。
牧野は会ってから一言も喋らず、オニみて―な顔していやがる。
・・・・・司の気持ちに、どんどん詳しくなりそうだ俺・・・
わかる。
牧野が怒りのオーラを背負い始めると、途端に司がビビる気持ち。
・・・・・こえーよー。

個室まで案内してきた支配人を早々に退室させ、適当にオーダーする。
一回のサーブで済むように、ボトルを持って来させた。

パタン

ウェイターが静かに出て行くと、ソファーには俺と牧野の2人だけ。
彼女の家で何があったのか、彼女がどうしてるか気になって。
口を開こうとしたら、牧野がぐっと顔を上げた。
「美作さんに確かめたいことがあるっ!」
果たし合いかよっつー気合いに、つい後ろに下がって
「なななんだよ」
・・・ドモっちまった・・・天下のF4が。
デキると評判の美作商事のJrが。
優雅な振る舞いがウリの貴公子が。
ちくしょう、司の気持ちが以下同文。


「ねぇ、彼女が妊娠してたこと知ってたの?」

「ガガガガたらガガガガガでてガガガガガガ
ガガガガだからガガガガガガガガガガガ」
「ガガガガガガアオイさガガガガガガガったらガガガガ
・・・・・・・・・・・ガガガガ?」

いきなり牧野の声が聞こえなくなって、ノイズだけが頭の中で響く。
何て言った。
今、牧野何て言った。

気がついたら、心配そうな牧野の目が至近距離にあって、俺を覗きこんでいた。

「美作さんっ!ごめん、大丈夫?あたしいきなり・・・・」
「・・・・・妊娠・・・してんのか、彼女」
我ながら情けねー声だった。
そのまま言葉にならずに黙りこむ。
牧野は今度はゆっくりと、葵さんの旦那に聞いたって話をしてくれた。


「・・・・・・・旦那とは、冷めきってるって、言ってたんだ」
「うん」
「愛されてなくて、淋しいって」
「うん」
「・・・・・んだよ・・・」
俺とつき合った時にはもう、愛の結晶ってヤツがいたんじゃん。
ピル飲んでるから大丈夫だって言ったじゃん。
全部ウソかよ。

・・・・マジ凹む・・・・

「美作さん?」
心配そうに覗き込む牧野。
「大丈夫だ。ちゃんと旦那の子供だから」
頭をくしゃりと撫でて、嗤った。
「こんなのは慣れてんだよ。何年不倫ばっかしてると思ってんだ」
「だから不倫なんてやめなさいって言ってんでしょ」
「大丈夫だって。こういうのもお互い合意の上ってやつでさ、
なかなかいい関係なんだぜ。さ、ヤケ酒つきあえよな」
ボトルに手を伸ばすと、いきなり牧野が立ち上がった。
ジャケットを脱ぎ捨て、俺の前に立つ。

「おい・・・おいおいおい」
固まってる俺の膝を割って入ってきた牧野は、俺の頭を
鷲掴みにして自分の腹に埋めると、そのまま抱き込んだ。
「あたし今、美作さんのお姉さんね?」
「・・・俺に姉はいねーよ」
「じゃあお母さん」
「こんなガサツなお袋、イヤだ」

「うっさいなぁ、もう。何でもいいから、泣いときなよ!
失恋した時はねぇ、泣くのが一番。我慢してると引きずるよ」
「牧野に恋愛指導されたくねーよ」
「あたししか居ないんだから仕方ないでしょ」

俺は本当に泣きたくはなかった。
お節介牧野め。
男と女は違うんだよ。
そう思ってたのに。

細い腕で抱きこまれた小さな牧野の空間。
あったかくて。
やわらかくて。
甘い匂いがして。

喉が詰まったみたいに苦しくなって。

泣けてくる。


ありえねぇ・・・
この俺が。
牧野にすがりついて泣いている。
女の腕の中で泣いている。
力いっぱい抱きしめた腰は多分苦しいだろう。
さっき骨のきしむ音がした。
ヘタすりゃ腕が2周りはするんじゃねーかと思う、細い身体。
やわらかく髪を撫でる手も。

胸の奥に沈んだ苦しさが、少しずつ流れ出て行くような気がした。






「皆に言うなよ」
「ぷっ・ぷぷぷ」
「なんだよ」
「そんな真っ赤な目で睨んでも効かないよ」
「うるせーな、おまえのせいだぞ。ったく、お節介牧野め・・・・・司にも絶対内緒だぞ」
「わかったわかった。指きりでもする?」
「しねーよ」
「あはは、さ、じゃあ今度はヤケ酒につきあうよ」

さっきまで、優しくて柔らかくて、マジ母性の権化みて―だったのに、もう元に戻ってる。
蒸し返すのも何だと思ったが、どうしても気になって聞いてみた。
「なあ、司にもたまにやってやんのか?」
「なにを?」
「その・・・さっきみたいに」
「ヒミツ」
ずるい顔で笑った牧野に、どうしようもなく司を羨む気持ちがこみ上げてきた。

「じゃ、乾杯」
チン、とグラスを合わせた途端に鳴る牧野の携帯。
表示は『道明寺』。
すげぇな、野生の勘。
意識しねーで俺に牽制かけてきやがる。
・・・わかってるよ。
お前のもんだ。
手なんか出すかよ。

「え・うん。美作さんと一緒。・・・・・・今、呑み始めたとこだよ。・・・・・あはは、いーじゃん、接待ってことで・・・っていうか御馳走になってるからあたしが接待されてんのか」
「はははははは」
牧野の言葉に思わず大声で笑うと、電話から野獣の怒鳴り声が響いてきた。
「もう、ウルサイ!わかったって早く帰るから、はぁ?美作さんだよ?ある訳ないじゃん。
じゃ、切るからね」
まだ何か怒鳴ってる電話を容赦なくブチ切ると、カバンに投げ入れる。
「ほんと、司にそんな事できんの、お前だけだよ」
苦笑しながら言うと
「なにが?」
きょとんと見上げる顔に笑う。
「いいよ、呑もうぜ」

いい酒だった。
呑みながら、ウソツキの彼女を思い出し、それでも。

幸せになってほしいと思った。

「サンキュな、牧野」
声をかけた相手は、もうつぶれてぐーぐー寝ていたが。
俺は携帯を開くと、ヤキモキしているだろう野獣の番号を呼び出した。



あれから3日経った。
明日は又、ここで美作さんと打ち合わせがある。
元気出たかな。
就業に向けてPCを閉じてたら、デスクの上の内線が鳴った。
道明寺当てに、郵便物が届いてるっていう連絡で、庶務課まで取りに行った。
A4の封筒を、決裁を待つ分の書類トレイの一番上に載せる。
今日はアイツ、今行ってる会議で終わりだけど・・・・・
多分それからこの書類と格闘だな。
ピン、と封筒をはじいて控室に戻った。

チン・・・
と微かにエレベーターの到着音が聞こえた。
続いて専務室に入ってくる音
「お疲れさま」
「おう。何かあった?」
「いいえ。西田さんに残務、確認してから終わります」
「ちょっと待ってろよ。1時間。早く帰れそーだからメシ行こうぜ」
「オッケ。じゃ、ちょっと行ってくるね」
専務室を出た時は機嫌が良かったのに。
いつもみたいに穏やかに笑ってたのに。
帰ってきた時は氷点下だなんて・・・・
ねえ、誰が想像できる?




・・・・氷点下って言うよりは火山噴火って感じ?
あたしはこの状況をどうしていいかわからずに黙る。
怒髪天を突く。
烈火の如く。
可愛さ余って憎さ百倍。
あとはえーと・・・
現実逃避の脳は、咆哮に現実に引きずり戻される。
「説明しろっつってんだよっ!!!」
バンっ!!!
と、デスクを叩く音に、予想してたくせにビクッと身体が震えた。
「・・・・・・言えない」
「・・・・・したのか、浮気」
「・・・・・してない」
「それなら説明してみろっつってんだろ!!!」
さっきから繰り返される不毛な会話に神経がささくれ立つ。
デスクの上にばら撒かれているのは、美作さんとあたしが笑いながら歩いている写真。
そして。
葵さんのご主人に肩を抱かれて、家に入っていこうとしているあたしの写真だった。

こういうのは初めてじゃない。
こういう風に『道明寺さんの彼女の浮気現場』を送りつけてくるのは珍しい事じゃない。
あたしのことが邪魔な、上流階級のタヌキにキツネ。
皆考えることは同じらしく、興信所に頼むパターンが多いみたいで。
花沢類が一番多いかな。
後は西門さん、美作さんは常連。
和也君、西田さん、近所のおじさん、社内の男性社員。
進やパパって言うのもあったな。
興信所ならちゃんと調べてよって感じなんだけど。
とにかく、2人で並んで歩いてると撮られるって感じで。
あんまり多いから、最初うるさかった道明寺も呆れてるくらいだったんだけど・・・。

やばいな・・・
美作さんと約束したし、これは説明ができない・・・。
ちら、と見上げると刺すように睨む視線とぶつかって・・・
こ・・・怖いよ~・・・
「誰だ、この男」
「・・・・・言えない」
「この男と何した」
「・・・・・何にもしてない」
「説明しろよ」
「・・・・・できない」
「牧野っ!!!!」
殴られるっ!!
手が動くのが視界の端に見えて、ぎゅっと目をつぶって歯を喰いしばった。
ガシャーン!!!
苛ついた腕はデスクの上の電話を叩き落とす。
「ひっ!」
「てめぇは」
「専務、どうかされましたか」
急にかけられた声に空気が変わる。
ドアの向こうに、西田さんの顔が見えた。
「・・・・・・・何でもねぇよ」
「そうですか」
西田さんは道明寺と、あたしと、落ちた電話を順番に見た。


こ、この隙に逃げちゃおっかな~。
あたしの考えを読んだみたいに、道明寺が腕を掴んだ。
「ちょっ・・いた、痛い!」
そのまま引きずられるみたいに歩かされて、道を開けた西田さんの前を通る。
「帰る」
「お疲れさまでした」
えーっ!!!
帰らせちゃうのーっ!!
まだ仕事残ってるんですよ、西田さんー!!
ほらほらほら、書類トレイみてくださいよ~!
こんな時だけ融通きかせなくてもー!!
必死に目で訴えたけど、残念ながらいつもの能面フェイスで慇懃にお見送りされた。


        後編へ

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コメント
ほらやっぱりぃ~
はやりどんな状況でも、つくしはあきらにとって「満月にしてくれるオンナ」ですねぇ~

でも、その体制・・・司がみたら 葵さんのだんなさんの写真よりもっと・・・怖いかも?

一緒に飲むだけで・・・だもんねぇ?
あ、すっかり忘れてました。

写真の方、ケリは・・・やはり×××ですかね?
途中で、司ってば 何を怒ってたか忘れたり・・・
しませんよねぇ?

嫉妬の鬼、塊、権化だし?

また、横ネタで聞かせてもらえるとうれしぃなぁ~♪
なんて、おねだりしちゃったりして?

次のお話も楽しみにしています!
2009/09/09(水) 11:12 | URL | ちふゆ #-[ 編集]
ちふゆさま
コメントありがとうございます。
和を大切にするあきら、思いっきり親友の彼女に抱きついちゃってますが・・・・
大丈夫ですか。
途中で何を怒ってるか忘れる司っていうのがすごくウケましたゲラゲラ。
思わずその方向に進みたくなりました。
2009/09/09(水) 14:18 | URL | とば #-[ 編集]
つくしちゃ~ん,大丈夫・・・?
こんばんは!!v-222

あきらを慰めるつくしが
なんか可笑しいe-455
あきらを無理やり泣かせるし
それであきらもすっきりしたみたいだからいいけど…
相手の女が一番したたかなんじゃん!

司に知れたら・・・と思ってたら
別な方面からの密告が
つくしは板挟みで大変ね。

怒りの司につくしは
あ~んなことや、そ~んなことされて
フラフラになる?

大変なことばっかりなのに
つくしには悪いけどなんか笑えてしまう。e-455

無事でいろよ、つくしちゃ~んv-237v-237
2009/09/09(水) 18:08 | URL | magenta #-[ 編集]
magentaさま
度々のコメント、ありがとうございます。
ほんと、あきらいいヒトですねぇ。
連れ去られたつくしはどこへ…次回、怒れる野獣の調教風景をお送りいたします。
2009/09/10(木) 06:09 | URL | とば #-[ 編集]
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