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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

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専務と私~あきら・前~

溢れそうな車と人間の間を縫って、広い車寄せに入る。
運転手が開けたドアをくぐって降り立ち、親友がいるはずの、雲を突くような上層階を見上げた。
くらり・・・と、寝不足の脳が一瞬悲鳴をあげる。
軽く頭を振って、エントランスをくぐり、受付に来訪を告げる。
にっこり、笑いかけると受付嬢は赤くなって慌てて内線に手を伸ばした。

ほどなく、ずっと向こうのエレベーターの扉が開いて、小柄な女が降りて来た。
遠くからでもわかる満面の笑顔に、つられて素の笑顔になりながら、歩み寄った。
「美作さん!」
元気に言いながら、きれいに礼をする。
「おい、俺に頭下げんなよ。気持ちわりいな」
笑って言うと、
「一応ね。うちの専務がお待ちですよ。さ、どうぞ」
秘書を車に帰して、牧野と2人、エレベーターに乗った。
すぐに心配そうな声がした。
「どうしたの?今日」
「ん?聞いてねーの?企画の変更あったっつーから確認しに来たんだよ」
「そうじゃなくて。元気ない。顔色悪いよ?」
顔を覗きこまれて苦笑いする。
気ぃ使いめ。
ちょっとの変化に敏感で、口に出してくるところは長女気質。
俺とおんなじ。
「ちょっとな」
「ちゃんと寝て、食べてるの?」
「牧野、お前誰にでもこんななの?」
話しを逸らしたくて、からかうように言った。
「??」
「男と2人きりで、こんな近くに寄ってよ、そんな顔して見たらやべーだろ。ったく、司が心配する訳だよな~」
「な、何にもしてないじゃん!もう、ヘンな事言わないでよ」
「お前が考えてるより、男ってやつは危険なんだよ。気をつけろ?男が皆、司みてぇだと思ったら怪我すんぞ」
「あいつが一番凶暴だっつーの」
笑いながら言う牧野も、わかってるはず。
司が牧野をありえねーくらい大切にしてて。
ありえねーくらい愛してること。

ちん、と機械音が鳴ってエレベーターが止まる。
突き当りの専務室に入ると、親友がPCから顔を上げた。
「おう、悪りぃな、あきら」
ビジネスの世界に足を踏み入れて7年。
日本支社の重役に赴任して3年。
20年来の親友は昔とは段違いの厚い空気をまとう。
が。
おいおい、ダチに威圧すんなよ。
「いや、大丈夫。変更って、あの会場の件だろ。この前言ってたとこ。」
「ああ、やっぱ、も一つ手狭になるらしくてよ。調整しなきゃなんねー」
「オッケ」
ソファーの横で立ったまま話し始めると、下の方から声がかかった。
「あのさ、座って話してくれるとコーヒーが出しやすいんですけど?」
トレイを持ったまま見上げる恋人に、親友が優しい笑顔をおとす。
「牧野、資料持って来て。緑のファイルの方」
「はい」
対する牧野は飄々と。
自分だけが受けられる特権、全く気づいちゃいねーだろ。
変わんねぇな、こいつらも。
仲のいいところを、今見るのは何となく辛くて
「じゃ、仕事の話しようぜ」
と、そっと目を逸らした。



小一時間ほどで打ち合わせが終わって、緊張していた空気がほぐれる。
「んじゃ、今日の内容はまとめて、後で送るからよ」
と、司が牧野を見遣ると、牧野も心得たように頷く。
「夕方くらいにはFAXできると思います」
「おう、ヨロシクな」
軽く伸びをした。
「牧野すっかり慣れたな、司の秘書」
「そうかな。自分じゃよくわかんないけど」
「司、つき合ってるからって会社でヘンな事してんじゃね~ぞ」
からかうつもりで言ってやると、2人が並んで真っ赤になった。
・・・なんかしてんのかよ。
「へへヘンな事言わないで!みむみま美作さん!」
動揺する牧野を笑いとばす。
「ははは、すげえ噛みまくり」
「おんなじ会社に居たってちっともよくねーよ。こいつ相変わらず
ふらふらボケボケしやがって、気の休まる暇がねぇ」
「ちょっと!徘徊痴呆老人かアタシは!」
「昨日なんてこいつ、何してたと思う?男と二人で資料室にシケこんで・・・」
「ヘンな言い方すんなっ!資料整理手伝ってただけでしょーが!
それに坂田さん、来年定年でパパより年上なんだよ?」
「うるせー、年寄りだろーがアカンボだろーが男は男だろーが」
「はははっ、相変わらずだな。司の異常な嫉妬深さは」

わかっていたのに、何で牧野を巻き込んだのかわからない。

多分俺はすげー凹んでて。

牧野の開けっぴろげな雰囲気にすげー癒されて。

気がついたら、下まで送ってくれた牧野とそのまま昼メシ喰って。



ドロドロした気持ちを全部ゲロッてた。







「彼女と連絡取れねーんだよ」
「あっ!彼女って!また人妻?」
デザートまで詰問を待っててくれたのはありがたい。
でも。
んな眉間に皺寄せて睨むなよ。
「まあな」
「まあな、じゃなぁい!!」
それを皮切りにガミガミガミガミ怒られた。
怒って怒って。
でも予想通り、怒ったあとには心配そうな顔で覗き込んできて。
どくん。
・・・・・・司の気持ち、ちょっと解った。
確かにこれじゃあ、気の休まる暇がね~なぁ。

「笑わないっ・・・・・・それで、美作さんは彼女の事が心配で元気ないんだ」
「お前らみて―な落ち付いちまった関係と違うからなぁ。俺ら」
「落ち着いてなんかないよ。まだまだ、どこまで許されるか探り合ってる段階っていうか・・・」
「例えば?」
「例えば、頭にきて車にケリ入れるのはOKだけど、高速で飛び下りようとするのはNGとかさ」
「・・・・・・・・お前が俺の彼女じゃなくてホンットーに良かったよ」
「ほっといてよ。今は美作さんの彼女の話でしょ」
「ああ。少なくとも、嫌われた訳じゃないと思うんだよな。いい感じだったし。
もしかして旦那にばれて、責められてんじゃないかと思って心配で」
「ふ~ん・・・」
牧野はしばらく一点を見つめて、明らかに考えこんでる風で俺を無視して。
それからまっすぐこっちを見て行った。
「あたしが、様子を見て来てあげる」

・・・・・・・は?

「あたしなら女だから、もし旦那さんに会っても大丈夫だし。
ね、彼女の家どこ?今日、帰りに行ってみるよ」
「・・・・・何考えてんだよ、お前」
「美作さんの事だよ。だって、今まで散々お世話になってるんだもん。
たまには借りを返したっていーじゃん」
「だってお前」
「あっ!お昼休みもう終わっちゃう!早く早く、これに住所!」

牧野の勢いに負けたのか、タイムリミット切られて焦りがうつったのかわかんねーけど。
気がついたら牧野の手帳に彼女の住所を書き込んでいた。






美作さんや皆がいなかったら、多分あたしたちもうダメになってた。
だからたまには借りを返したっていーじゃん。

美作さんにもらった住所は、会社から30分、静かな
住宅街の中にあり、番地を探しだした時には薄暗くなっていた。
「・・・・えーと、ここ・・・かな」
・・・立派なお宅・・・
インターホンを鳴らそうと手を上げると、
「うちに何か」
「ひゃっ」
びっくりしてヘンな声を出してしまった口を押さえて振り向くと、
すぐ後ろに背の高い男性がビジネスバッグ片手に立っていた。
「あのっ、すいません!私、葵さんと親しくさせていただいているもので、
急に連絡が取れなくなったので心配で伺ったのですがっ!」
丸暗記していた台詞を一気に吐いたけど、我ながらちょっと棒読み風味で怪しい・・・
案の定
「妻のご友人・・・・あなたが?」
訝しげにじっと見られてくじけそうになる。
「あ、あの、友人と言うかあの、陶芸教室の・・・・」
美作さんからの情報。
彼女はこの前まで陶芸にうちこんでいたらしい。
「ああ、教室のお友達ですか」
ご主人の目が緩む。
「すいません、少し急いでいるので、一緒に家に入ってもらって
いいですか。お願いしたいこともあるので」
「へ?」
すっごく意外な展開に、いやとかそのとかいって時間を稼ごうとしたら、
ご主人は意外とせっかちなのか、あたしの肩を抱いてあっという間に玄関をくぐってしまった。
自宅に招き入れた割にはもてなす訳でもなく、
あちらこちらと歩きまわりながら、ご主人は事情を説明してくれた。

「実は家内は先週から入院しておりまして」
「入院!」
予想外の事に大きい声を上げてしまった。
「切迫流産と言って、わかりますか?」
「せっぱくりゅうざん・・・・・って・・ええええええぇぇぇぇー!?」
ただの知人にしては驚きすぎだったかもしれない。
でも!
切迫流産ってことは、妊娠してるってことで、彼女は
この人のオクサンだけど美作さんの恋人でもあるわけで。

その。

・・・・・どっちの子供・・・・?

「5カ月に入ったところなんです。入院はいつまでになるかちょっと…。
安静が必要なので、身内以外の面会もお断りしていて・・・。
そういう訳ですので、陶芸教室の方は、休会・・・いえ、退会すると伝えていただけますか」
「あ、はい」
あたしが固まってる間に、ご主人は大きな紙袋を手に立っていた。
「宜しくお願いします。いやぁ、本当は入院するほどでもないんですが、
やっと授かった子なのでどうも心配で」
照れ笑いをするご主人はとってもいい笑顔で・・・。

・・・・・・愛されてんじゃん

ご主人と一緒に家から出て、左右に別れたけど、頭の中はぐちゃぐちゃだった。
お腹の中からふつふつと怒りが込み上げてきて。
あんなにいいご主人を裏切るなんてっ!
もしかしたら人の奥さんを妊娠させたかもしれないなんてっ!
だからっ!
不倫なんてっ!

あたしはもやもやした気持ちを解消させるべく、携帯を取り出しその男を呼び出した。


          中編へ


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コメント
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2009/09/08(火) 06:28 | | #[ 編集]
ちふゆさま
クレセントムーン!
ぶはーっ!!
出ました。あきらはちゃんとブレーキをかけている設定でお願いします。
だってそうじゃないと切ないんですもん。
一歩引いて和を考える。いいヒトだ。あきら。
なので司もまあ、メシくらいなら許すかなあ。どうかなあ。
『もしもし?あたし。牧野。ねぇ、あたしこのままお昼入るから』
『・・・・・!・・・・・・!!』
『は?うん、そう。美作さんと行ってくる。久しぶりだし』
『・・・・・・・!!!!・・・・!!』
『あーもーうっさい!切るよっ!!』
電源までプチ。
こんな感じじゃないかなあ。
司、全然許してない雰囲気でしたが。
多分専務室でガーっとなって西田さんに怒られてる。
2009/09/08(火) 09:42 | URL | とば #-[ 編集]
つくしのお節介が・・・
こんにちは!!v-222

結構
ハードな内容ですよね。

あきらにつくしの怒り(説教)爆発?v-412

つくしの行動に司の怒り爆発!!ってな感じ?

    
    では、また・・・。e-463
2009/09/08(火) 13:56 | URL | magenta #-[ 編集]
magentaさま
こんにちは。
度々のコメント、ありがとうございます。
あきら怒られるかなぁ。
怒られますよね。
でもつくしの怒るのって、ギャンギャンうるさいけど怖くなさそうですよねぇ。
ビビるのは司くらいか…。
2009/09/08(火) 14:58 | URL | とば #-[ 編集]
つづきが・・・
続きがすごく気になります。
つくしちゃんの怒り爆発?
司君は?怒るかなー
続きがすごく楽しみです
2009/09/08(火) 15:09 | URL | つゆかノエル #STO9711o[ 編集]
つゆかノエルさま
おはようございます。
コメントありがとうございました。
夕べ爆睡しちゃったので、これから続き、UPします。
予想通りの展開でしょうか…ヨロシクお願いします。
2009/09/09(水) 05:13 | URL | とば #-[ 編集]
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