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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

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エンジェリック 2

ようやく道明寺をOP室に入室させて。
病棟へ戻る。
手術予定時間は2時間。
やはり西田さんから特別室へ入室の依頼がある。
「手術が終わるまで2時間くらいかかるけど、どうする?待つ?」
F3に尋ねると、モチロンと返ってきた。
「それじゃあ、病室で待っててよ。そこに居られると目立ってしょうがない」
長身・モデル体型・美貌の3人は、例えそこが病院の廊下であろうともキラキラした光を放っていて、めっちゃ目立ちまくっている。
患者のおばあちゃんが
「眼福眼福」
とか拝んでるし・・・・・。
「病室どこ?牧野」
さすがに落ち着かないのか3人は素直にあたしの後に付いてきた。

道明寺を迎える準備を進める。
酸素。
モニター。
点滴。
サクション。
電気毛布でベッドを温めて・・・・
慣れた手順だから、あまり頭を使わなくても勝手に身体が動く。

「牧野の仕事してるとこ、初めて見た」
暇なのか、3人にじーっと見られている。
「そりゃそーだよ。あんたたちは怪我したってかかりつけのお医者さんがいるでしょ」
「なんかカッコいいな、牧野」
「うん、かっこいい」
「おい、何だよ、その顔。ははは」
目を丸くしたあたしに呆れたように西門さんが噴き出した。
「あんたたちが褒めるなんて・・・キモッ!何か企んでんじゃないの」
「ばーか。企むか。・・・ってかマジでびっくりした。すげえよ牧野。普段あんなボケボケしてるお前が、めっちゃ頼れるナースに見えたぜ」
「ふっふっふ、思い知ったか」
「・・・・・・今ので10点減点な・・・・」
「あんたたちが刺されても、ビシッとお世話したげるねっ」
「うわ、それはちょっとビミョ―」
「『そんなの』とか言われたら、凹むよなぁ、繊細だから。はははは」
さっきのを思い出したのか、花沢類が噴き出した。

「それで、誰に刺されたの?道明寺」
「ああ、ずっと末端の、倒産した会社の社長らしい。・・・・ったく!司が動いた訳でもあるまいし
逆恨みしやがって!」
「・・・・・・・・そう」
思わずぴたりと手が止まってしまった。
昔々の出来事がフラッシュバックする。
逆恨みで刺された道明寺。
崩れ落ちた身体。
アスファルトの血だまり。
意識不明の重体。
長時間にわたる手術。
泣くだけしかできなかったあたし。
暗い暗い待合室。
・・・・・・・・・・そして意識を取り戻したあいつは・・・・・・・

あたしだけ

忘れて


「・・・・牧野?」
突然ふわりと頬が温かくなって、覗き込む花沢類と目が合った。
「・・・・・・・あ」
「なんかへンなこと考えてた?」
「う、ううんっ!」
ぶんぶん首を振ったらまた笑われて、それがちょっと悔しくて慌てて言った。
「全然、何にも思い出してないし。それに今じゃ、あたしの事なんて忘れて欲しいくらいだし。
ねぇ?却ってその方がいいんじゃない?新しい気持で、婚約者と上手くやればいいよね、はははは・・・そうそう、前だって手術の後で記憶障害になったんだから、今回も、もしかするかもねー
あはははは」
「はぁ~・・・牧野。意地張るなって」
「い意地なんか張ってないよ!実際あたしたちとっくの昔に別れたわけだし」
「そう思ってんのはお前だけだって」
「司的には全然別れたつもりなんてね~ぞ」
「何言ってんのよ。あたしはねぇ、婚約者のいる人となんか付き合わないよ。二股かけられて黙ってる女だと思わないでよね。それに、道明寺がその人と結婚でもしたら不倫じゃん!あ~、やだやだ!」
「まきの~・・・なんでお前はそんなに頑固なんだよ」
美作さんの溜め息なんて聞こえないふり。
「でも牧野、この前司とキスしてたじゃん」
「はっ!はなざわるいっ!」

どうしてどうしてどうして!

爆弾落とすのが上手なのっ!

「ほ~、つくしちゃん、そ~なんだ~」
「西門さん目がやらしいっ!」
「やっぱお前ら・・・」
「美作さんっ!違うっ!あああれは無理矢理・・・そそそれにその後ボコッてやったし!!」
「・・・・司・・・」
「不憫なヤツ・・・」
「くくくくく」
「あああたし忙しいからもう行くっ!じゃあね!」
慌てて特別室から出て廊下の鏡を見ると・・・・真っ赤だった。
う・・・・仕事中に・・・・
なさけない・・・・。




道明寺は嵌められたらしい。
本人が言ってた。
婚約者の事、そんな女会ったこともねーって言ってた。
彼の親友たちも言ってた。
椿お姉さんも言ってた。

遠距離恋愛が始まって、半年経った秋。

アイツの意思は関係なく、上手に相手に絡め取られて、婚約させられたんだって。
非難するには相手が大きすぎて・・・・・・
撤回するにはやり方が巧妙すぎて・・・・
だってさ。

・・・・・・・・・・・そんなの関係ない。

罠に嵌まったって、ホントの気持ちは違うって言われたって。
道明寺に婚約者がいるのは事実だ。
婚約者がいる男となんてつき合えないっていうのは、当然のモラルだ。

婚約が発表された後、泣いて泣いて泣いて泣いて。

アイツと別れた。

そんな必要ないって、皆に諭されたけど。
どうしても我慢できなかった。
そしてあたしは資格職につくべく看護学校を受験して。
優紀も同じ道を志して一緒に頑張ってきた。
入職して3年目。
仕事は面白い。
業務の流れも医療の知識も身について、自信もついた。
ちょっとの事じゃ動じなくなったし。

道明寺は、月一回は帰国して来て、その度に組まれる宴会の席で何とか和解しようとウルさいけど。
ふ・ざ・け・ん・な・ってのよ。
口説くんなら婚約破棄してから来い。
ってのは毎度言ってるセリフ。
今回の帰国で、また状況が変わるのかな~、ってのは覚悟してたことだけど。
まさか刺されてうちの病院に入院するとは・・・・・
ホント読めない男なんだから。




あたしはボーっとしていたらしい。
「牧野さん、OP終わりました。お迎えです」
後輩の言葉にビクッとなった。
「あ、ごめん。お迎え一緒に行ってもらっていい?」
ベッドでOP室に迎えに行く。
道明寺が出てくる前に申し送りを受けると、予定通りの術式で、トラブルもなく終わっていた。

良かった。

ほーっと息をついて、出てくるのを待つ。
ストレッチャーに乗せられている道明寺は、貧血のせいか青白い顔をして。
身体にはモニターのコードや、点滴のルートがつながってる。
それは昔見た姿を思い出させて、一瞬ひるんだけど。

今は違う。

あたしが、自分の手で、関われる。
そう思うと、意外なほどの充実感が沸き上がってきて、ああ、あの時あたしは、何もできない自分にすごく傷ついていたんだなあって、改めて思った。

「道明寺さん」
名前を呼ぶと長い睫毛に縁どられた瞳がうっすらと開く。
「わかりますか?」
「・・・・・・まきの・・・」
覚醒以前の、ぼんやりした、少し甘えたような声。
不思議そうな顔で見る後輩を眼の端にとらえながら、安心させるように微笑んだ。
「無事終わりましたよ。これから病室に戻ります」

手術室を出ると、F3が
「司」
と駆け寄る。
後ろで控える西田さんも、ポーカーフェイスは健在ながら少し顔色が悪い。
「牧野、司は?」
「大丈夫。トラブルなく終わったよ」
にっこり、答えながらも頭の中では帰室後の処置を組み立てていた。


手術場から出てきた武田先生から、OPについて西田さんに話される。
尺骨動脈を縫合したこと。
神経損傷はない事。
貧血が強い事。
抗凝固剤の持続注入を1週間続けること。
「動脈縫合の場合、血栓と、腫脹による動脈閉塞が2大合併症になります。場合によって壊死による切断ということもあり得るので、リスクとしては小さいですが覚えておいてください」

面談室から退室して、病室へ向かう途中、西田さんに聞いた。
「あの、先生のお話、わかりました?」
「はい。ですが、最後のところが・・・・」
「ですよね。簡単に言うと、血の塊で縫った血管が詰まったり、手が腫れて血管が圧迫されたりすると、血が通わなくなって指先から腐ってきます。そうしたら切断するしかないんです。そうならないためにも、1週間はずっとお薬を注射しないといけないんです」
「よくわかりました」
西田さんは大きく頷いて、社長に報告いたしますので、と電話をしに行った。

あたしはそのまま特別室に戻る。
「お~牧野、やっと帰ってきた~!」
「どうしたの?」
明らかにホッとした様子の美作さんと西門さん。
花沢類は、いつものポーカーフェイスだけど・・・
「怖かったぜ~!こんないっぱい機械が付いた司と一緒に居んの。ピッピピッピいってるし。
この音、止まったらと思ってビビる」
「お前、よくこんな仕事できるな」
「何よ、天下のF4がだらしないなあ」
「F4の、リーダーは刺されて入院中」
「五、七、五?」
花沢類の呟きに、思わず吹き出した。


           




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