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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

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復讐の女神 9

「ちょっと、腕はなして。痛い」

取りあえず2人になりたくてメイプルのスイートに引っ張って来た。
牧野は隙あらば逃げ出そうと身体を固くしていたが、
部屋に入ると観念したのか、ぶつかるみてーにソファーに沈んだ。
「あんた仕事は?」
「こっちの方が大事」
「またそんな事して!」
「うるせー、後で取り返すからいんだよ!」
「あんた秘書の苦労っていうのを全くわかってないね」
あきれ顔の牧野に日本からずっと繰り返してきた言葉をぶつけた。

「なあ、結婚して、牧野」
「やだ」
即答すんじゃねーよ・・・
「お前がいなけりゃ生きてる意味なんてねーんだよ」
「へぇ。あたしはある。あんたがいなくたって大丈夫」
にっこりと天使の頬笑みを浮かべた女は
悪魔みたいに毒を吐く。
「愛してる」
「知ってる」
「俺のものになれよ」
「ヤダよ」
「牧野」
「なによ」

「目ぇみて話せ」

ピクリと肩が震えた。

勘は外れねぇ。昔から。
「あっ」
視線を外せねー様に、頬を挟んで上を向かせた。
目の奥で揺れる光は、これは。
「は、離して・・・・」
「俺の事、好きだろ?」
「好きじゃ、ないよ」
見る見るうちに、真っ黒な瞳が潤みだす。
「愛してんだろ?」
「愛して、ない」
すーっと、涙が頬を滑り、俺の手を濡らしてパタパタと落ちていく。
「俺は、好きだし、愛してる。
お前以外なんもいらねぇ。
なあ、お前は?」
言ってみろよ。
ボロボロ涙を落としながら牧野の顔がくしゃくしゃになる。
「ばかっ!ばかおとこっ!」
意味がわかったのはそれが最後で、牧野は俺の手を振り払うと胸に飛び込んできた。
「うっ・・・あああん・・・あん・・・がっ!むかえ・・・くっ・・・てい・・た・・・・うっうっああ・・かってに・・
ふ・・でっ・・・んんん・・・ひっく・・・かな・し・・・ひっく・・・みっ・ん・なっ・・ひっく・・・あああううう・・・」
「何言ってっかわかんねーよ・・・」
多分文句言ってんだろーな。
こんな時でさえ強気な女。

愛しい。

かわいくてたまんねぇ。

嗚咽で跳ねる身体を、ただ抱きしめた。


ずーっと前にも、こんな風にガキみてえに泣く牧野を見たことがある。
あの時も、人の事バカ呼ばわりして、泣いて、泣いて泣いて、クッ、そうだ。
寝ちまった。
今みてーに。
まだ小さくしゃくりあげながら、泣き疲れて寝ちまった身体をベッドに横たえる。
泣きながら、ずっと言っていた。
俺の事は好きだけど、離れるって。
どうせまた引き裂かれるんなら。
『あ、あん・・・なお・・おもいは・・・もう・・』
途切れ途切れに吐き出す想いに、胸が千切れそうだった。

睫毛に残る小さい雫を舐めとる。
「・・ん・・・」
覚醒しかけて、また眠りに落ちる。
くそっ!
これで最後だ。
もう泣かさねぇ。
そのためなら、どんなことだってやってやる。



何本か電話を入れてから、牧野を起こした。
泣きすぎて真っ赤な目も腫れた顔も。
ブサイクだけどすっげーかわいい。
「ねえ、あんた膝大丈夫?」
ボーっとして何を言うのかと思ったら。
寝ぼけてんのか?
「あたし昔、2階から飛び降りた時、しばらく膝が痛かったよ。
あー、夢見た。高校の頃の。すっごい久々」
「なんで2階から飛び降りたんだよ」
「んー、英徳のバカたちに追っかけられてねぇ。まあ、間接的にあんたのせいだけど」
くすくす笑って伸びをする。
「寝ちゃったねぇ。ごめんごめん。あたし、もう行くわ。ごめんね、喚いて。すっきりした。
バイバイまたいつか。どっかであった時はヨロシク」

だから自己完結するなッつってんだよ!
ベッドから降りようとする牧野を後ろから抱き締めた。
牧野は一瞬身体を強張らせ、それからくったりと力を抜いた。
「いいよ、最後に。抱いても」
どんな顔して言っていやがる。
くるりと前を向かせてゆっくり押し倒す。
「てめえはいつもそうだよな」
押し殺した低い声に、牧野が目を見開いて怯えた顔をする
「何でも一人で決めて、一人で我慢して、一人で泣くんだよな。
自分一人が耐えればいいとか思ってんのかよ。陶酔すんのもいい加減にしろ。
てめえ、なんも言ってもらえねぇ俺の気持ち、考えたことあんのか?
・・・なあ、俺はそんなに頼りにならねぇの?」

ゆっくり、ゆっくり、牧野の目が見開いていく。

「・・・・・・また、言われちゃった。同じこと・・・」
「あ?」
「そんなに頼りにならないかって・・・ふふふ・・」

「ごめん・・・」
牧野が下から手を廻してきて、ぎゅっと抱きしめられる。
「でもやっぱり守られるのはイヤなの。あんたがあたしのために
無理するとこなんて見たくないよ。・・・・・・ごめん、頑固で」
「わかった、それじゃあ」
ぐんっと牧野を引っ張り起こしてニヤリと笑ってやった。
「お前が俺を守れよ」
「は?」

「行くぞ!NY!」



大騒ぎする牧野を無理矢理ジェットに乗せて、着いた夜のNY。
邸が近付くにつれて牧野がピリピリしてくるのがわかる。
「なあ牧野」
「なによっ!!」
「落ち着け」
「誰のせいよタコッ!一体何しに行くのよ。言っとくけど、あんたの御両親に認めてもらおうなんて気、さらさらないからね!あんたなんて弄んで捨ててやるって最初から言ってたじゃん。
大体、長時間我慢して飛行機乗ってフランスついて何でまたすぐNYなのよ。疲れるっつーの。
来週から出社だからいろいろ準備もあるのに。荷物だってまだ届いてないのに」
よくこんだけべらべら喋れるな。

ああ、類が言ってた。
動揺するとよく喋る。

「何ニヤニヤしてんのよっ!」
毛ぇ、逆立てた猫みてえにナーバスになって噛みついてきやがる。
怖いか、牧野。
俺は、怖い。
これから対峙することで、お前が傷つかねーか。
自分のせいだって悩まねーか。
でももう決めたから。
やるしかねえ。
ひょいと屈んで唇を合わせると、おとなしく応えてくる。

ったく。

毒ばっかり吐くくせに。
ほんとは素直な唇。


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