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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

復讐の女神 8

生まれてこのかた
こんなに幸せだったことはねぇ。

毎日、牧野を見て。
話しして。
抱きしめて。
キスして。
時々は一緒に朝を迎えて。

幸せ絶頂の中、明日は2ヶ月目の期限が来る。
2か月の期限なんて、とーぜんブッちぎるつもりだった。
『弄んでボロボロにして捨ててやる』がコンセプトの期間限定カップルだったが、
もうそんなのなしでいいだろ。
2度と手放せねぇ。

いつものようにメシに誘いに柴崎物産に立ち寄る。
いつものように受付に、牧野に会いたい旨を伝える。
いつものように専務室に通される・・・はずだった。

「申し訳ございません。牧野は本日付で異動になっておりまして」
「何?」
「こちら本社には出勤しておりませんが・・・」
「・・・んだと?てめ、ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!!昨日までちゃんといたじゃねーか!」
「ですから本日付で・・・」
バンッ!!
カウンターを力任せに叩くと受付の女がビクッと震える。
問い詰めようと身をのりだしたら、後ろから肩を引かれた。

「・・・・・・類」


専務室に入ると牧野のデスクはきれいに片づけられていて。
柴崎蓮が仏頂面で迎えに出た。
「柴崎、牧野は?」
「フランス」
「フランスぅ~?」
「ずっと前から話はあったんですけど、急に受けるっつって。
道明寺さんの所との合同プロジェクトが終わったと同時に。口止めされてて・・・すいません」
「・・・・・あの女何考えてんだよ」
溜め息しか出ねー。

ああそうだった。

言った事は頑固にやり遂げる女だったよな。
だからって別れも言わずに国外逃亡かよ。
「ははは・・・ひっでぇ・・・」
ぶつかるみてーにソファに座って天を仰ぐ。
「そこで笑いますか、道明寺さん」
「まあ想定内だ。あの女にされたひでえ事ベスト5には入りそうだけどな」
「司に、牧野から伝言あるよ。『思い知ったか』だって」
「はっ・・・オ二だな、あいつ。そんで何で類が伝言持ってくるんだよ」
「今、見送り行ってきたとこ」
「んだとてめぇ。彼氏の俺様が転勤、知らされてもいねーのに
なんでお前が見送りとか行ってんだよ!」
類はちらっとこっち見て
「もう彼氏じゃないじゃん」
といつもの無表情で言った。


「俺だって置いてきぼりですよ。くっそ、道明寺さんへの復讐が終わって気持ちにケリがついたら、今度こそオトすつもりだったのに」
柴崎が向いのソファに身体を投げ出して天を仰いだ。
「海外転勤なんて、打診の段階で潰せよ。Jrだろお前」
「俺よりエラい奴からお呼びかかったんだもん。俺のオヤジ。社長様。」
こいつも溜め息しか出ないらしい。
「5年だよ?5年!そのうち3年は俺の秘書でずーっと一緒にいたのにさ。
あの鈍感女、ちっともその気にならねぇし」
「しょーがないよ牧野だもん」
涼しい顔して類が言う。
「それで、司はどうするの。このまま諦める?もう2ヵ月経っちゃったし」
「諦めたほうがいいよ、道明寺さん。牧野がさ、フランス行き受けたって事は、
もうきっぱりあんたと切れたいってことじゃないの?」
「ああ、てめーともな」

気持ちはとっくに決まってる。
俺から逃げられると思ってんのかよ、アホ女。
険悪な雰囲気の中、携帯電話を取り出して秘書を呼び出し用件を言う。
慌てふためく相手に強硬な態度で指示を出し、切ってやった。

「いい事、教えてやるよ」
立ち上がりながらどちらにともなく言う。
「逃げる牧野を捕まえるのは得意中の得意なんだ、俺は」
ドアを開いて部屋から出かけた俺の背中に類の声がぶつかった。
「牧野、泣いてたよ。笑ってたけど、泣いてた。
お前のせいで泣かすのはこれで最後にしろよ」

てめーに言われる筋合いはねえ。
ドアを閉めて走りだした後も中の会話が聞こえていた。
「花沢さんは、もう牧野の事はいいんですか」
「うん。俺、司なんかよりずっと牧野と気持ちつながってるし」

クソッ!
戻って殴る時間はねえ。




邸に戻ると、タマが出迎えた。
「坊ちゃん、準備は整ってます。すぐ使えますが」
「わかった、すぐ出る」
「急に出張ですか」
牧野の逃亡(異動なんて言ってやんねぇ)を知らねータマは訝しげに聞いてくる。
「いいや」
遥か下にいるタマの目をしっかり見て、宣言してやった。
「牧野が逃げ出しやがった。
ちょっとフランスまで行って拉致ってくっからよ」
タマがポカンと口を開ける。
「オリ用意して待ってろ」
大声で笑って、ジェットに乗り込んだ。

牧野の乗った民間機はトランジットの時間あるから先回りできるはず。
「ぜってー、とっ捕まえてやる」
ボキボキ指を鳴らすとCAが一斉に後ずさった。


到着ゲートを睨みつけて牧野を待ち伏せる。
アナウンスが流れ、ゲートが次々と人を吐きだし始めた。
人ごみの中

見つけた

長身のフランス人に埋もれるように、こっちへ来るちいせぇ女。
俯いてる表情は・・・見えねぇ。
わざと進路を塞ぐように前に立つと、そのままボフンとぶつかって
「たっ・・・ご、ごめんなさいっ!!」
慌ててあげた顔が

 驚愕
    呆然
       疑問
逡巡

・・・みるみる百面相を始める。

目が・・・真っ赤じゃねーか。
なあ牧野。

「よお」
「ど・・・」
挨拶返さねーの?
人間関係の基本は挨拶なんじゃねーの?

一番最後の表情は『ヤバイ』
それを見せると、ボケ女はいきなりくるりと後ろを向き、全速力で逃げだしやがった。
「なっ・・!待て!こんにゃろ!!」
俺から逃げられるなんて思うなよ!

とっ捕まえてやる!


空港なんてパブリックなスペースで、
スーツで女と追っかけっこ。

全く、こいつの傍にいるとありえねー事ばっかり。
「くそっ!牧野、止まれっ!」
「ぜっっっったい、イヤっ!!!」
あの女、ちょこまかちょこまかと。
くそっ!

あったまくる
あったまくる
あったまくる!!!

うじゃうじゃいる人間が邪魔で全然距離が縮まんねえ。
牧野はちいせえ身体をフルに生かして、人ごみの中を縫うように駆けて行く。
何の騒ぎかと周りのヤツらが振り返り、警備員まで集まって来た。
牧野を追っかける俺。
牧野と俺を追っかける警備員集団。
コメディー映画かよ!
ヒールのくせに階段を2段飛ばしで駆け降りる。
「危ねぇだろ!てめ、止まれっつーの!!」
吹き抜けになった2階からひょいと手すりを飛び越える。
見上げる外人女が悲鳴をあげる。

うるせぇな。

ガツン、と靴音を響かせて、走る牧野の前に跳び下りた。


「あぶなっっ・・・ぶぼっ!!」
止まれず胸に突っ込んできた女を取りあえず抱きしめる。
「んの・・やろ・・・・」
お互い息を整えるのに話もできねぇ。
そうこうするうちに、警備員にぐるりと囲まれた。
『どうされましたか』
何でもないと答えようとしたところに、胸の中から裏切り者が叫んだ。
『助けて下さい!ストーカーなんです、コイツ』
あっ!
類にフランス語教わったとか言ってたよな。

余計なこと言うんじゃねーよ!
誰がストーカーだよ。

警備員の目が厳しくなる。
「てめぇ!なんて事言いやがる!こいつら信じてんじゃねーかよ!」
「ホントのことでしょ!離してよっ!」
「もう許さね」
『取り合えず彼女を離しなさい』
『は?やだね』
ぐるりと囲んだ警備員たちを睨みつける。
『俺は道明寺司だ。わかってんのか』
上から話しは降りてるんだろう。ヤツらの雰囲気が変化する。
『そしてこれは俺の婚約者だ。ちょっとヘソを曲げてるがな』
「だーれーがー婚約者よ!ヘンな事言うな、アホんだら!」
『婚約者・・・ですか?』
『違う!違います!』
警備員たちの探るような視線に半分キレた。
『疑ってんのかよ。わかった、証拠見せてやる』
都合のいい事に牧野は俺の腕の中。
すっぽり仕舞いこまれて手も足も出ねー状態。

「牧野?」

高さを合わせるのにちょっとだけ持ち上げた。
ヒールの牧野がさらに背伸びさせられて、いっそう不安定な体勢になり・・・
不安げに見上げてきて、無自覚に絶好のポジションを取った。
後ろから頭を固定する。
二ヤッと笑ってやると、丸い目をして
「ちょっと?どう・・・」
悪りぃな続きは聞かねーよ。
ぶつけるみたいに唇を合わせた。

「ん・・・・んんんっ・・・・んんー!!んんんんー!!」
往生際が悪りぃな。
キスされながらもすっげ文句たれていやがる。
多分毒を吐いている唇の隙間から舌を滑り込ませる。
くちゅくちゅと音のたつような濃厚な絡みを繰り返すと、だんだん牧野の抵抗が弱まる。
目元がほんのり色づいて、潤んだ目が閉じられていく。
上等。
ぐったりと、体重を全部俺に預けてくるまで舌を絡ませ
「ん・・・・ふん・・・」
鼻から甘い呻きが漏れたのを確認してから、ちゅっと音を立てて唇を離した。

『わかったか』
取り囲んだヤツらをぐるりと見渡す。
でかい男どもが揃って赤面してる姿はなかなかの見物だが。

んだよ。キスぐれーで赤くなってんじゃねーよ!ガイジンのくせに。
『良くわかりました』
その中の一番偉そうなヤツが一歩前に出て言った。
『大変失礼いたしました・・・・・・・・どうぞお幸せに』
一礼してその場を離れていくと、残ったヤツらも後に続く。
「ったく邪魔しやがっ・・・・てえぇっ!!!」
両足に激痛が走って、見ると腰砕けになってた牧野が復活し、唯一自由に動かせる足で
ガンガン踏みつけてきやがって。
「だからヒールで踏むなッつってんだろ!!痛てぇんだよ、ばか!!」
「バカ・・・はどっ・・・ちよ!こんな!こん・・なところ・・で!あんなことしてっ!
みんな呆れて見てたじゃないのよっ!!!この、恥知らずっ!!!」
「外国じゃあんなの挨拶だろ」
「あんなびちゃびちゃ音立てる挨拶があるかー!!」

タップダンスかよ。

カツカツカツカツ足繰り出してきやがって。
「いい加減にしろ!元はと言えばてめーが逃げるからだろーが!」
ひょいと牧野を持ち上げると、今度は蹴りいれてきやがる。
「てめ、ここで犯してやろうか」
至近距離で視線を合わせてギリ、と睨むとやっと大人しくなった。



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