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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

休日 5

バンッ!
デスクに叩きつけた分厚い書類が、派手な音を立てる。
司は不機嫌そうに椅子を引くと、乱暴に腰かけた。
横に控えた西田が、抑揚のない声で部下からの報告を読み上げる。

チッ

本当なら今頃、牧野と居るはずだった。
手掛けているプロジェクトにトラブルが持ち上がり、休日出勤を余儀なくされたのは、部下たちも同じ。
責任者である自分も対応のため呼び出されるのはしょうがない。
が。
わかっていても頭にくる。

「17時から、再度打ち合わせとなっております。それまでに、変更になった分の書類に目を通していただいて、決裁印をお願いします」
「ぁあ?・・・・・・西田」
司は眉間に深く皺をよせて、未処理のトレイに乗った書類の束を見遣る。
嫌味っぽく、その紙の厚さを指で測ると、5cmは余裕で・・・・
「何十時間でやれって?」
「そうですね、2時間弱ですか」
シレッと言う秘書に一瞬殺意を覚えて、司は一番上の一枚を取るとひらひら振って見せる。
「無理に決まってんだろ」
「できますよ」
西田のポケットから小さく機械音が鳴る。
「非常時ですので、アメを用意いたしました。今、下に届いたようです」
「はぁ?何言ってんだ?」
「少し外します。書類の確認を始めて下さい」

アメ・・・・ご褒美・・・馬にニンジン・・・猫にマタタビ・・・

ブツブツ言いながら部屋を出ていった西田に向けて言った。
「意味わかんねー。無理なもんは無理。じゃなきゃ打ち合わせ遅らせろよ」
アメだ?んなもんに釣られるか、ガキでもあるまいし。

2件片づけたところで、ドアが開いた。
書類に目を落としていた司が、何か違和感を覚えて目を上げる。
無機質な空間に突然現れた、あたたかい、明るい気配。
「よっ」
小さく手を挙げて、全開の笑顔で入ってきたのは。
「牧野っ?」
思わず駆け寄ろうと立ち上がると、つくしは両手を伸ばして
「あっ!だめっ!」
と叫ぶ。
「はぁ?」
後ろから西田が入ってきて
「その書類を全部片付けるまでは駄目です」
なんて言う。
そのくせ自分はつくしをソファーまで案内して、笑顔なんか作って喋って、そういえば貰いもののチョコレートが、なんてあれこれ世話を焼いていやがる。
・・・んだよ、牧野もスッゲにこにこしやがって。

駆け寄りたくてウズウズしながら睨むと、つくしがにっこり笑って司を見た。
「それ、早く終わったら、残り時間好きに過ごしていいって」
「・・・・・・・・」
アメだって?
・・・・・・・そういうことかよ・・・・・・
西田の計画に乗っかるのは頭にくるが。
大好物を目の前に出されて、オアズケ状態になっている司としては。
仕事を片付けない限り、相手をしてくれそうもないつくしを見れば。

頑張るしかなかった。






我ながらスゲェ。
ありえねー集中力だぜ。
山ほどあったトレイの中身が、どんどん片付いていく。
読んで頭ん中に叩きこんでハンコつく。
合間に、向こうに座って、チョコ喰って、なんか本とか読んでる牧野をちらっとうかがって。
たまに目が合うと、牧野が笑う。
気分が高揚する。

タンッ

最後の決裁印を押して、書類を西田に押しつけた。
「終わった」
受け取った西田は、PCを閉じて立ち上がる。
「さすがですね」
「まあな」
「いえ、牧野様効果が」
「ぁあ?・・・いや、時間が勿体ねぇ、西田、一刻も早くこっから出ていけ。何分ある?」
「20分、ございます」
「早く出てけ。邪魔すんなよ」
「ちょっと、あんたその態度!」
怒りだすつくしに西田は
「助かりました。ありがとうございます」
と言うと、深く礼をして出ていった。
と、同時に司がつくしを抱きこむ。
「ちょちょちょっ!いきなり・・・」
目を白黒させているつくしの髪に、すりすりと鼻をこすりつける。
「やっと触れた」
司は目を細めて笑う。
「見せびらかしやがって」
続けてちゅっちゅっと何度もキスを落とす。
「あ、チョコレート?食べたかった?」
真っ赤になってつくしが言う。
「ちげーよ!」
「でもビックリしちゃった。西田さんから電話きて、『牧野様、助けて下さい』って言うから
どうしたのかと思っちゃった。だって西田さん・・んんっ」
続きは司の口の中に響く。
いきなり深まったキスにつくしの体温が上がり、瞳が潤みだす。
「20分・・・・無理か・・・」
「ちょっと、あんた何考えてる?」
「いいから黙ってろ」
膝の上に引きあげて、小さい身体を抱きしめる。
「西田もなかなか気が利くじゃん。あ~スッゲー元気出る。お前、うちの会社来いよ。
いっつもお前がいたら、仕事はかどりそー」
言いながら顔を傾けて、もう一度合わそうとした唇を、小さい手がブロックする。
「か、会社・・・しご・仕事中・・・」
「俺、頑張ったんだけどな~」
「・・い?」
「ご褒美ねーの?」
長い睫毛を臥せて、覗き込む。
「う・・・・・・」
「目、つぶれよ」
その甘い視線に逆らう事は到底不可能で。
つくしは観念してきゅっと目を閉じた。

クックック・・・
「口は開いてていーんだけど。つか開けろ」
・・・・ちゅく・・・
するりと入り込んだ舌が、つくしのそれを絡め取った。


唇から離れて、舌が耳元を辿りはじめる。
つくしは気を逸らすように、思いつくまま喋り続ける。
「でも、仕事すごい量だったねぇ。ありえないよね、あれ2時間でって、西田さんも・・あっ!だ・めっ!もう。ヘンなとこ触んないでって。・・・あ、あたし、あんたが仕事してるとこ初めて見たけど、真面目にやってるから、ビックリしちゃった。うん、ほ・惚れなおした・・かも・・や!手!どこ・・・あ!
やだ、はずさないで!」
プチン
「ひゃっ!や!やぁだ・・んんっ・・ん~」
調子に乗ってブラを外して触りだした司は、一発殴られるのを覚悟して身構える。
が、つくしは大人しく身をまかせ・・・

・・・・・いけんじゃねぇ?

頭の中で悪魔が囁き、その誘惑に身をまかせようかとスカートに手をかけた瞬間。
コンコン
チッ

「タイムリミットかよ」
明らかに安堵の表情を浮かべて身体を離し、服を整えるつくし。
名残惜しげにそれを見る司。
「時間切れでホッとしてんだろ」
「あったり前じゃん。会社で何するつもりだったのよ、あんたは」
「その割に大人しかったんじゃねぇ?」
「う?う、うん。まあ、あたしはいつも大人しいからね、ははは」

・・・・・・・怪しい。
怪しさ爆発のつくしをじーっと見るが、目を泳がせ視線を合わせず、
「ほら!西田さん待ってる。早く早く!」
なんて言って司をドアまで押しやり・・・
・・・・・・・・・滅茶苦茶キョドってんじゃねーか。

西田がドアを開けて部屋に入ってくる。
「司様、先に会議室へ向かってください。すぐに追いかけますので」
「おい、なんで」
バタン
司の鼻先でドアが閉められた。
「チッ、何なんだよ、あいつら・・・」
怪しすぎる展開に、会議室へ向かう気にもならずそのまま待つ。
するとすぐにドアが開き、つくしが
「それじゃ、帰ります。お邪魔しました」
と、飛び出してきた。
そのまま司の胸にボフンとぶつかる。
「ぶぼっ!・・・・ぎゃっ!まだ居たの!」
「てめぇ今、何隠した」
「な、何にも隠してないよ!!」
「ウソつけ」
「あっ!!」
背中に隠したA4の封筒を取り上げて、つくしに届かないように高く掲げる。
「何だこりゃ」
だめいやだ返してと、手を伸ばしてぴょんぴょん跳んでいるつくしを無視して中身を抜きだす。
「・・・・・うお・・・」

これは・・・。

「・・・・懐かしすぎ」

数枚の写真の中に居たのは、英徳の制服姿のつくしと、楽しそうに笑う自分。

問いただすように西田を見ると、彼の秘書は
「お二人の高校時代に楓様が調査させたものです。牧野様が欲しいとおっしゃられたので
今日のお礼として差し上げました」
「・・・・・そんでイヤに大人しくしてた訳だ」
「返して!ねぇ、返して道明寺!」
「欲しいのかよ、俺の写真」
「だってあんた、写真撮るの嫌がるじゃん。ねぇ、お願いお願い。欲しい、欲しいってば」
腕にしがみついて、子供のようにねだるつくしを抱きしめたい衝動にかられながら、写真を渡す。
全開の笑顔になったのを見て、飛びつきそうになる身体を必死で抑えた。
「ありがとっ!じゃ、またね!バイバイ!」
司の気が変っては大変と、慌てて帰っていく後ろ姿を見送り、司は会議室へと歩き出した。

「なー、西田」
「はい」
「この前、雑誌の取材受けた時の写真、確か送ってきてたよなあ」
なるべくさりげなく聞こえるように努力したつもりだが、後ろから、ぷ、とか聞こえた。
振り返ればいつもの能面フェイスだったが。
「後で出しておきます」
「ん」
頭の中では、さっきの上目遣いのおねだりと、大人しくご褒美をくれていた時のつくしが
代わる代わる現われて。

ヤバすぎ。

「これから、再度打ち合わせに入りますが」
さらっと西田が言う。
「まとまり次第、帰って頂けます」
「・・・・・・・マジ?」
「はい。調整が面倒な件なので、夜中までかかるかもしれませんが・・・」
「かけるかよ」
司は西田を振り返って不敵に笑った。
「2時間で済ます」
「・・・・写真を用意しておきます」
「おう」

楽しそうに会議室に向かう、上司の後を追いながら、西田はひっそりと笑う。

あの、小さな女性が。
この人の核。
生きる意味。


「手放せませんね」
グループのためにも。
坊ちゃんのためにも。

「アメの効果もわかったことですし」
「何ブツブツ言ってんだよ・・げっ!西田、お前スゲー凶悪なツラになってんぞ」
「失礼な。微笑んでいるんですよ」
「こえーっ!!」


やれやれ。

秘書の心、上司知らず。
ですね。





                          Fin




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コメント
最強に好きです!
とばさま、はじめまして。
全部のお話を一気に読ませていただきました。
そして、休日シリーズはリピートさせていただきました。
素敵なお話ばかりですが、このお話がたまりません~!ツボすぎます♪
とばさまの司視点が最強に好きなので、書き込みさせていただきました。
プライマリも、休日シリーズもアップを楽しみにしています。
2009/08/22(土) 00:51 | URL | わか #-[ 編集]
Re: 最強に好きです!
うわー、ありがとうございます。すごくうれしいです。
ウチの坊ちゃん、軽くヘンタイ入ってますけど大丈夫ですか~!
コメントいただいて、とっても励みになりました♡
ありがとうございました♡
2009/08/22(土) 15:53 | URL | とば #-[ 編集]
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