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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

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復讐の女神 6

「よう、牧野。メシ行こーぜ」
「あんた・・・よくも、毎日毎日・・・」
終業時刻を1時間過ぎた柴崎物産専務室。
お前だって毎日毎日残業してんじゃねーかよ。
「道明寺さん、お疲れ様です。いーぞー、牧野。月曜の会議の資料だけ出しといて」
「あんたももう終わる?」
「おー。終わる。また来週な」
「ん。じゃ、お先に」
相変わらずのこの2人の雰囲気にちょっとムカついて、柴崎を軽く睨む。
この前タテついてきた奴と同じに思えないほど、愛想良く笑う。

「じゃ、行こ?」
カバンを持って来た牧野が首をかしげて見上げる。
このカバンが曲者。
完全に、バッグとは呼べねーでかいごついおもい、3拍子揃ったこのカバン。
これのせいで。
毎日メシ、誘って、こいつも素直についてくるけど。
テーブルに着いたら、早速このカバンから書類を取り出し仕事の話を始めやがる。
接待かっつーの!

「何喰いたい?」
ゆっくり車に向かいながら尋ねると
「う~ん・・・エビとチョコレートケーキと春巻、酢の物。
あと明日休みだから、がっつり呑む」
「お前、そのセレクトなんか気持ち悪りぃ」
「え!なんで!」
俺は思わず、チョコレートケーキの上にエビが乗っかってるのを想像して、
そう牧野に言ってやった。
「うわ、エビケーキ?あんたなに気持ち悪い想像してんのよ。食欲なくなる」
「それでフツーくれーじゃねーの?」
「ぁあ?」
大声で笑いながら並んで歩ける幸福。

「ウチ行くぞ」
「なんで?」
「外でんな気持ち悪りぃオーダー出来っかよ。俺の品性疑われる」
「よし、じゃあ絶対外で食べよう」
「てめ」
まるで高校の頃に戻ったみて―な。
くっだらねーやり取りに、信じらんねーくらい満たされる。
「ところであんた、仕事いいの?毎日毎日迎えに来るけど、ヒマなんですか?副社長」
「ヒマじゃねーよ」
ちらっと見下ろすと、反則技の視線と目が合って、照れ隠しにそっぽを向く。
血が昇った顔を隠すのに、口元を手でおおってごもごも言った。
「でも、これから2か月は空けさせてある。後で取り戻せばいいし」
「え、何でそんな」
「お前とつき合えんのが2か月だけだからに決まってんだろーが!」
ニブすぎるこの女。
牧野は急に下向いて、相変わらず直接的だとかオブラートがどうとか
ぶつぶつ言いだした。
「とにかく」
向き合って顔を上げさせて、言ってやった。
「2ヶ月間は毎日会う。ぜってー会う。お前もそのつもりでいろ」
牧野はびっくりした顔で見ていたが
「ぜったいヤダ」
とゲラゲラ笑いだした。
「相変わらず自分勝手」
「うっせお前、んな大口開けて笑ってんじゃねぇよブス!」
「ブスって言うな!イカレパーマ!」
ガキみてえにギャンギャン喚きながら、競歩みてーになって車に乗り込んだ。



「くっくっく・・なあ、スゲー光景。これ」
牧野のリクエスト通り、エビの料理が数種類と、春巻きと、
すのもの?と、チョコレートケーキの載ったテーブルは
ディナーにはあり得ねぇ雰囲気を醸しだしている。
コンセプトはなんだよ、みてーな。
サーブする使用人も戸惑いながらも、ウマそーにどんどん喰っていく
牧野を見守っていて。
給仕としてはNGだが時々こっそり笑みを漏らしている。

「やっぱあんたんちのご飯はおいしーね」
『あんたんちのご飯』で片付けられる、一流シェフが
最高の技術であつらえた料理の数々。
クッ
ほんと、こいつは。
ワインを口に運びながら、じっと見ていると、気づいてこっち見た。。
「なに?なんかヘン?」
「いや、変わんねーなと思って」
ウマそーに、喰うとこ。
すると牧野は、手を止めて少し俯き、困り眉になった。
「変わってない?あの、あたし、一応美作さんちでテーブルマナーとかも
教えてもらったから、前よりマシだと思うんだけど、まだまだだった?」
ちょっと首をかしげて見上げてくるのは。
それは。
その顔は。
・・・やべーだろ。
この場で襲いかかりそうになる身体を必死に押さえて、
いや、綺麗に喰ってるけど、と答えると途端にパアァッと笑顔になる。

くそっ
ここに誰もいなければ

ちらりと壁際に立つ給仕係を見ると、中年のその使用人は優しい目で牧野を見守っていて、
それで、さっき帰ってきた時の事を思い出した。


リムジンの中からタマに電話して、メニューを指示した。
「エビに春巻きに酢の物にチョコレートケーキ・・・・坊ちゃん?」
何か言いたそうなタマに
「牧野も連れて行くから」
っつったら
「・・・坊ちゃん・・・」
と言って絶句した。
声が震えてたのは気のせいじゃねえ。

邸に着いて、使用人が開けた扉をくぐると
「「「「「おかえりなさいませ」」」」」」
「・・・・・・おい・・・・・・」
「う・・・・っわ・・・・・」
いつもの出迎えの人数とケタが違う。
エントランスをびっしりと埋め尽くした使用人の数。
ずらりと並んで頭を下げている。
「ちょっと・・・・いっつもこんな出迎えさせてる訳?王様か、あんたは」
牧野が睨んでくるのに慌てて
「ちげーよ!!」
と怒鳴り返して。
つか、コックとか混じってて明らかにおかしいじゃねーかよ。
どういうことかとタマを探したら、コトコトと杖をついて現れた。
「お帰りなさいませ坊ちゃん。お食事の準備ができておりますのでお着替え下さい」
「おい、ちょ・・・タマ!」
有無を言わせず、体当たりみてーにさあさあさあさあと部屋の方に押しやられた。
「・・・んだよっ!!」
仕方なく部屋に向かうと、しばらくして後ろから、どおん・・・と空気を震わす歓声。

「「「「「「「「「「牧野様!!!!!!」」」」」」」」

「「「「「おひさしぶりです!!!!!」」」」」

「お会いしたかったです」
「牧野様!」
「牧野様!」


タマを振り返ってニヤリと笑う。
「俺は仲間外れかよ」
「仕方ないでしょう、坊ちゃん。使用人が主人の前で大騒ぎする訳にはいきませんからね」
「っったく」
お前が王様じゃねーかよ。
多分慌てふためいている姿を想像して低く笑った。


「おいしかった。ごちそうさまでした」
グラス片手にニコニコしてるのを見ると、つられる。
つられて口元が緩む。
「それ空けちまえ。こっち抜くから」
新しいボトルを掲げて見せる。
うん、と素直に言うことを聞くところを見ると、コイツけっこー酔ってんのかも。
「だいじょーぶか、お前」
「ううん、ヤバい」
驚いて顔を見ると
「食べすぎてスカートきつくて、ははは」
はははじゃねぇ。
「着替えておいで、つくし。昔のあんたの部屋に椿様からのお土産が
そのままあるから。着替えたら坊ちゃんの部屋に行きな。まだ呑むんだろ、今日は」
「ありがとうございます。じゃ、道明寺あとでね」

牧野が出ていくと、すかさずタマがくるりと振り返る。
「聞きましたよ坊ちゃん、2か月限定。まさか納得してる訳じゃないでしょうね」
「しょーがねーだろ。復讐されても当然な事やらかしちまったんだから」
「違いますっ!!」
タマの目がすわって妖怪みてーに光りだした。
腰をメキメキいわせて伸ばすと、座った俺とまっすぐに視線をあわせる。

やばい。
説教パターンだ。

「タマが言いたいのは、2ヶ月経ったからって、おとなしくあの子を
手放すつもりじゃないでしょうね、ってことですよ」
「・・・あいつはそのつもりらしーけど?」
「坊ちゃん…」
タマが呆れたように首を振った。
「あんたまだわかんないんですか!
この3年間・・・・
あの子を手放してから、気が違ったみたいに暴れまわって。
椿様に諌められておとなしくなったと思ったら、今度は世捨て人みたいに
無気力になる!坊ちゃんにはね、あの子が必要なんですよ。
この数日、あんた人が変わったみたいに幸せそうだったじゃないですか。
それをまた手放すつもりですか」
「うるせぇな・・・どーしろっつーんだよ」
ガキみてーにふてくされた俺の両肩をがっちりつかんで、タマはどす黒い声色で言った。
「タマに良い作戦がございます」
「あぁ?」
「つくしと・・・」
すすすとこっちに近づいてきて、口元に手を寄せて声をひそめた。

「男女の仲になって子を成す」
「コオナス?なんだそりゃ」
「子!ですよ、子!」
「コ?」
「チッ、全く二ブチンだね。つくしを孕ませちまえって言ってんですよ!」
「なっ・・・!!!タマてめー、何言ってやがるっ!!」
のけぞった俺にしわくちゃババァが覆いかぶさってくる。
ニヤニヤニヤニヤ笑っててマジこえーっつーの!
「ふ、ふざっけんな、タマ!何考えてんだ、ババァ!」
「ケッ、童貞が!ババァババァと言いますがね、タマは今でこそ
ババァですが、初えっちは16でしたよ!」
「んな化石時代の事でいばんな!!」
「おやおやおやおや坊ちゃん、真っ赤になって」
「う、うるせーっ!!!」
説教より悪りぃ。
いたたまれない感じになって、早々に部屋に引っ込んだ。



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コメント
No title
このお話、何度も読んでるんですけど、何度読んでも飽きないんですよね。
この6話のタマさん、最高に面白い?んですもの。
司君はこの人には太刀打ちできませんよね。
言ってる事、全部、あってますから。
2012/03/29(木) 19:55 | URL | あさみ #-[ 編集]
あさみさま
ひー!
コメント頂いてから、随分時間が経ってしまいました~・・・シクシク。
今更ながらありがとうございます。
この辺はすっごい前の話なので恥ずかしいです~~//////
でも嬉しかったです。
ありがとうございました。
2012/05/21(月) 10:21 | URL | とば #-[ 編集]
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