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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

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リクエストを頂きました 3の2

  2



「いや~、偶然だなあ、牧野」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・そうですね」
「いや、ホント懐かしいなあ。まさか、こんなとこで会えるとは思ってもみなかった」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・そうですか」
・・・わざとらしいよ、道明寺・・・
いけない。口元がひきつる。
隣にいる社長の目を気にして、どうにか笑顔を作ろうと頑張るが上手くいかない。

「いやあ、牧野さんが道明寺さんの後輩だったとは」
社長がもう一回言った。
「あ、いえっ!今は全然っ!あの、高校を卒業してから全然でっ。在学中は大変お世話になったんですけど、もう、全然。全然で。ね!全然ですよね、道明寺さん!」
全然多すぎ。
吹き出すのを堪えながら、司がつくしを見る。
不安と動揺で、泳ぎまくっている目が面白い。
そのわかりやす過ぎる反応に、思わず手が出そうになる。
それを押さえて、司はつくしに向かって笑った。
「本当に懐かしいな・・・いま社長にもお願いしたところなんだけど、少し話、できないか?こうやって会える事も、もうないかもしれないしな」
司が言うと、社長もにこにこと続ける。
「牧野さん、いいから行っておいで」
「だっ・・・ダメですよ社長。あたし幹事なんですから。ここの、子供部屋の担当で外せないんです。責任を持ってお預かりしている、皆さんの大切なお子さんです。だから、非っっ常~~~に残念ですけど、ご遠慮させていただきます」
「他の幹事に変わってもらう事は出来ないのかい?」
「ええ、もう、みんな役割が決まってるので。そろそろビンゴも始まるし、時間的にゴトー部長が脱ぎはじめる頃だし、皆いっぱいです!」
「じゃあ代わりに、私が子供たちを見ていよう」
「ええええっ!?」

もうっ!社長っ!

つくしは心の中で悲鳴を上げる。
わかってる。
社長はただ親切心で言ってるだけだ。
ここで道明寺と繋がりを持って、後で仕事に利用しようとか、そういう事は考えない人だと思うから。
でもその親切、今はちょっと迷惑なんです~~~っ!

「せっかく先輩が言ってくれてるんだから。久しぶりなんだから、積もる話もあるだろう。大丈夫、子供の世話くらいできるよ。孫も5人いるし」
「でも社長。社長が宴会抜けてこんなところにいる訳には・・・」


「大丈夫ですよ」
揉めるつくしと社長の頭の上から、低い声が降ってきた。
「え?」
司が西田に視線をやった。
「幹事の仕事は、代わりにこの男がやります」
つくしと社長も西田を見る。
その作り物の様な顔は、少しも表情筋を動かさない。
しかし、僅かに顔色が変化したような気もする。
3人がじっと見つめる中、西田は静かに頭を下げた。

「いや、そんな訳には」
首を振る社長に、司が更に言い募る。
「いや、実はこの西田、物凄い子供好きなんですけど、周りには全く子供がいなくて。通りすがりの子供と触れ合おうにも、あの能面顔で怯えられて上手くいかず。それで、いつも子供と触れ合う機会を虎視眈々と狙っている、そういう男なんです」

それじゃ西田さんが変態みたいじゃないかっ!

心の中で突っ込むつくしの見守る中、司は西田に
「な?」
と、同意を求め、西田は
「・・・・・・・はい」
と返事をした。
やや間はあったが。
「西田も、自分から頼みたいくらいだよな」
「・・・・・・はい」
「ああ、それなら良かったじゃないか。牧野さん。そんな子供好きな人が代わってくれるなら、安心だ。道明寺さんの秘書なら身元も確かだし。遠慮なく行っておいで」
「でででででも、これから、子供たちといろいろ遊ぶんですよ?」
つくしが西田を向くと、そこにはなんだか達観した様な空気が漂っている。
「ハンカチ落としとか」
「はい」
「紙芝居読んだりとか」
「大丈夫です」
「それに、ビンゴの後のカラオケ大会で、あたし、トップバッターで歌う事になってるんですよ?幹事代表で、山本リンダ」
「・・・・・・・」
「山本リンダですよ?」
「・・・はい」
一体何があったんですか、西田さん!
その変わらない表情は、答えをくれなかったが。


ぶっ。
と、吹き出す音がした。
司から。

アンタ一体、どんな手で西田さんを脅してんのよ。
つくしがギリっと司を睨みあげた時、宴会場の襖が開き、幹事長が顔を出した。
「社長~、ビンゴ始めますよ~。ガラガラ回して下さ~い」
「ああ、今行くよ」
社長は司に会釈して、つくしに
「それじゃ、遠慮なく行って来なさい」
と、声を掛けると宴会場に戻って行った。


「それでは、私も」
西田が頭を下げて子供部屋へと入って行き、襖を閉める。
また子供たちが泣くんじゃないか・・・と、耳をすませるつくしに泣き声は聞こえず、中からは西田の声が聞こえてくる。
「初めまして。わたくし西田と申します。これから少しの時間ですが、皆さんのお世話をさせていただきます。どうぞ宜しくお願いいたします」
多分、幼児相手にも慇懃に頭を下げているのだろう。
泣き声はまだ聞こえない。
短い静寂の後、子供の小さい声がした。




「・・・ロボだ」




「ロボぉ?」
「ロボってなに?」
「超合金でできてるってことだよ。中にネジとか入ってんだぜ」
「いいえ、わたしは人間ですが」
「パパと見た映画に出てきたんだ。あんな風に真っ直ぐ喋って、顔も動かないんだ」
「じゃあロボだ!」
「すげぇ!」
「いいえ、私は・・・」
「わああぁぁぁぁぁ!」
「ロボだああぁぁぁぁ!」
「ロボだああぁぁぁぁ!」
「遊んでえぇぇぇ!」
「うで飛ばしてぇ!」
「かたぐるま!」
「目からビーム出して!」


大騒ぎになった子供部屋の様子に、助けに入ろうかどうしようかつくしが悩んでいると、急に背後に圧迫感を感じる。
司が後ろに立ったのだ。
「西田すげぇな。一気にガキの心、鷲掴みじゃん」
なんて言って、次には後ろから手を回してくる。


子供たちは大丈夫そうだ。
つくしは、聞こえてくる楽しそうな子供たちの声に、ふっと詰めていた息を吐きだすと、さりげなく抱きしめようと絡んでくる長い腕から、するりと脱け出した。
そして数歩歩いて距離を置いた後、司を見上げた。
「道明寺?」
口の端を引き攣らせて。


全く何を考えているんだ、このオトコは。
社員旅行にまで現れるなんて。
しかも社長と話したりして、あたしと道明寺が知り合いだとかバラしちゃったりして。
・・・・・・。
そんな事されたら、もう、こうするしかないよね。
あたしじゃなくても、きっと誰だってそうする。
絶対。



胸のあたりで組まれた、つくしの手に力が入った。
そして、ぐ、っと手に力を溜めて、助走をつけて、右手をグーにしてガーッと後ろに引いて反動つけて、斜め上に向かって

「喰らえっっ!」

思いきり繰り出したパンチは、パシッと音をたてて司の手の平で止められた。
くそぉぉぉ。
悔しそうに睨みあげるつくしに向かって、ニヤリと笑い下ろした秀麗な顔に

ヒュ・・・

風を切って、今度は左の拳が襲いかかる。
「・・・っぶね」
間一髪で避けた司は、そのままつくしの左手も握りこみ。
そして、傾けた顔を覗き込むように下ろしてきた。
体重を掛けて。
「すげぇ挨拶」
「あああああんた一体、何しに来たのよ!」
上から圧しかかる重さを、ギリギリと押し返しながらつくしが司を睨む。
「う~~~~!」
自分の腕は、力を入れ過ぎてブルブル震えてるっていうのに、平然としている司が憎らしい。
「重いっ!道明寺!」
文句を言ったのに、腕にかかる重さは更に増して、整った顔がもっと近づく。
こうなりゃ頭突きでもしてやろうか、と、つくしが頭を引きかけた時、司が言った。


「お前が忘れ物したから、届けに来てやったんだろ」
「え・・・忘れ物?」
「おう。無いとお前が困るだろうと思ってわざわざ持って来てやったのに、いきなり殴りかかるとか、ホントお前凶暴な女だよな」
「・・・・忘れ物?」
つくしの腕から力が抜ける。
司はそれを確認すると、後ろを向いて歩き出した。
「こっち」




赤い絨毯の敷き詰められた長い通路を、司について歩きながら、つくしは首を傾げる。
忘れ物って・・・なんだ?
バッグの中身を思い浮かべてみる。
お財布・・・・ある。
携帯・・・ある。
アパートの鍵・・・ある。
あとは、ポーチにハンカチ、ボールペン。
手帳もある。
全部ある。
何回考えても、忘れ物に心当たりはない。
でも、東京からわざわざ届けにくるくらいだから、相当重要なものに違いない。

考えているうちに、司が足を止めた。
ぶつかりそうになって、つくしも慌てて止まり俯いていた顔を上げてみると、司が格子戸に手を掛けてスッと開けたところだった。
「来いよ」
「へ、部屋取ったの?」
「ああ、こっから日帰りだとキツイだろ。泊って、明日早く出る」
「えー?ごめん、なんかあたしのせいで」
「おう、感謝しろ。どうした?入れよ」

つくしはキョロキョロとあたりを見回した。
万が一にでも会社の人に見られたら・・・と。
しかし、会社の人どころか一人の人影もなく、通路はシンと静寂を保っている。
と。
急に右手を引かれた。

「ひゃあ!」

バランスを崩したつくしの後ろでパンと格子戸が音をたて、そのまま転がるように部屋の中に引き入れられる。

「ちょ・・・・」

文句を言おうと司を仰ぎ見ると、そこには悪戯が成功した子供みたいな顔で笑う司がいて、思わず悪態をのみ込む。
大きな手が、乱れたつくしの髪を漉いた。
ドクンと、心臓が鳴った。

「き、急に引っ張ったら危ないじゃん」
バカじゃないか、道明寺相手に何を緊張しているのかと、掴まれたままの手を振り払うように部屋の奥まで進む。
正面の大きな窓、その向こうに灯りが見える。

「うわ・・・」

窓の外を見ると、岩場だった。
正確には岩場を模して造られた浴室。
黒っぽい岩肌を上から湯が流れて、湯気を立てている。
その先の庭は暗くてよく見えないが、ところどころに置かれたぼんやりした灯りの中、銀木犀の花が白く浮かび上がる。

月が、高い塀から顔を出したところだった。

「うわ~、いいな~、露天風呂がついてる~!」
窓を震わす勢いで、つくしが歓声を上げた。
「お前、こーゆーの好き?」
司が、つくしの頭の上から外を覗く。
「大好き。すごーい!ね、もうお風呂入ってみた?」
「まだ」
「お湯、すごくいいらしいよ。あたしは幹事の仕事があったから、まだ温泉入ってないんだけど、同室の子が宴会前に大浴場行ってきたんだって。もう、すべすべのつるつるで、すごく広くて、露天3つあって、中にもいろんなお風呂があってすごく良かったって言ってた。あんたも後で大浴場行ってみれば?」
「やだ」
「なんでよ。むかし銭湯だって入った事あるでしょ?」
「あー、大衆浴場な。あれは面白かったけど」

その声が妙に近くで響いて、つくしは窓の外に向けていた注意を慌てて背後に戻した。

耳に、吐息がかかる。
つくしがくるりと後ろを向くと、同じ目線で司の顔。
「ちょ・・ヘンな事考えないでよ」
慌ててそこから離れ、座卓の前の座布団に腰を下ろした。
少し遅れて向かい側に、司も。

「・・・・・」
「・・・・・」
「なんか喉乾いちゃった。お茶飲んでいい?」
「ああ」
「道明寺も飲む?」
「飲む」
2人分のお茶を入れながら、つくしは首を傾げる。
「うーん・・・なんか・・・落ち着かなくない?」
「別に」
「ん~・・・あ、わかった!畳だからだ!なんだか、あんたと畳って違和感あるわー。言われたことない?」
「ねーよ」
「せめて正座しとけばいいのに。はい、お茶どうぞ。熱いよ」
「サンキュ」
「あのさ、ところで忘れ物って何?あたし、さっきから考えてるんだけど、全然思い当らないよ。あんたんちでバッグから出したって言ったら、携帯くらいしかないし、携帯はちゃんと持ってるし」
首を傾げるつくしに、司は持っていた湯呑を茶卓に置くと
「ああ、ほら、コレ」
ポケットに手を入れた。




         

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いつもありがとうございます















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