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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

リクエストを頂きました 3

リクエストを頂きました・・・と言うか、リクエストを頂いてからかなりの時間が経っているのですが。休日10の続きの社員旅行の話です。k****さま、2度のリクありがとうございます。多分時間が経ち過ぎて、もうお忘れなのでは(泣)。クリスマスや、つくしちゃんの誕生日があるこの時期に、こんな話を出してくるわたしの空気の読めなさもアレなんですけど・・・と、いい訳はこれくらいにして、社員旅行の話です。休日10の1~3を読まないと訳がわからないので、すいませんが宜しくお願い致します。


 1




『すいませーん!こっちビールくださーい!』
『わははははは!乾杯!』
『はははは、乾杯!』



「かんぱーい!」
「ぱーい」


「はい乾杯」
カチン、と。
つくしは隣でキャッキャと笑う3歳の男の子と、プラスチックのコップを合わせた。
その3歳児の隣にはもう一人3歳児、次が4歳児3人、5歳児が5人。
隣の宴会場では宴もたけなわ。
笑い声と話し声、何回もなされる乾杯。
そのにぎやかな雰囲気に、隣のこちら『子供部屋』の子供たちも訳もわからず笑い、騒ぎ、乾杯を繰り返す。
それぞれの子供の前に置かれた『お子様プレート』は、そろそろどれも空になりそうだ。

「お口拭いて、ごちそう様しようか。もう少ししたら紙芝居、始めるからね。それからゲームもして、いっぱい遊ぼうね」
子供たちに向かってつくしが言うと、10人の子供たちが声を上げて喜ぶ。
それをにこにこと眺めながら、つくしはうっかり思い出してしまった。

今朝の大騒ぎ。



『離せ離せ離せ!バカっ』
『痛って!こら、髪引っ張んなっ』
『は~な~せ~って言ってんでしょ!バス出ちゃう!遅刻しちゃう!もう、しつこいっ!行っていいって昨日言ったじゃん。それなのに時計の電池抜くとか、信じられないっ!なに往生際悪い事してんのよっ!』
『うるせー!てめーこそ姑息に携帯の目覚ましセットとかしてんじゃねーよ!』
『逆ギレすんなっ!離してってばもう、あ、や・・・やだちょっと!』
巻きついてくるのを引き剥がそうと、ぐいぐいと髪を引っ張っていた両手をひとまとめに掴まれる。
振りほどこうとしても、びくともしない。
ギッ!と睨みあげると、そこにはニヤリと笑う余裕の顔。
『力で俺に敵うか、バ~カ』
なんて楽しそうに言って、司が視線を動かすのは白い胸元。
昨夜、司がきつく吸おうとする度に、めちゃめちゃ抵抗して、やっとの思いで守り抜いた(だって、今年の社員旅行、せっかくいい温泉旅館なんだから、絶対大浴場とか行きたいもん)、痕ひとつない肌。
そこを目がけて、形のいい唇がおりてくる。
『・・・や』
肌に触れる、と思った瞬間、司は目線を上げて意地が悪い顔をして笑った。
『やだ!やだ、痕つけないで』
『虫除け』



社員旅行だって言ってるのに。
つくしの会社の社員旅行は家族参加もOKだから、すごくアットホームなのだ。
0歳の赤ちゃんもいる。来年定年のおじさんの奥さんも来る。
みんなでバスに乗って観光して、温泉に入って宴会して寝る。
まるで、田舎の法事みたいな雰囲気だっていうのに、何の虫除けかっ!
虫が湧いてるのは、あんたの頭の中じゃないかっ!

気合いで大暴れして何とか逃れ、やっとの思いで・・・ああ、ダメダメ。
もう思い出さないこと!
せっかく無邪気な子供たちと一緒にいるのに、あんな邪気だらけのオトコの顔を思い出したら眉間に皺が寄っちゃう。



今年の幹事は、つくしを含めて7人だ。
それぞれ役割が与えられていて、だから欠席することはできない。
例えばつくしは子供係。
宴会場の隣の部屋で、幼児の世話をするのが仕事なのだ。
今年は3歳から5歳の、男女取り交ぜ計10人。
大変そうだけど、もっと大変な係だってあるんだから。
たとえば宴会進行係とか、潰れた人を部屋に収めていく係とか、酔ったゴトー部長が脱ぐのを阻止する係とか。






「かぱーい」
「はい、乾杯」
もう何度目になるのかわからない乾杯をした時、

カタン

廊下の方で何か物音がした。
子供たちの母親の誰かが様子を見にきたのかと、つくしが顔を上げた途端、襖が物凄い勢いで開いた。

シュッ  
パンッ

枠木にぶつかった襖が大きな音をたてる。
「・・・・・・!」
目を見開くつくしの視線の先、廊下から部屋の中に入ってきたのは、思ってもみなかった人物。


「ど・・・道明寺っ?」

口をポカンと開けて固まるつくしに、司がスタスタと向かってきた。
そして、つくしの前に立って見下ろした時




「うええぇぇぇぇぇぇぇぇん!」




つくしの隣に座っていた3歳児が泣きだした。

そりゃそうだ。
楽しく食事をしていたところに、いきなりビシャンと戸を開けて、でかい男がズカズカと乱入してきたのだ。
ニコリともしないで。
一直線に自分の方へ。

世の女性たちが目をハートにして溜め息をつくその美貌も、残念ながら3歳男児には通じない。
っていうか、怖い。

「うわぁぁぁぁぁぁぁん!」

もう一人の3歳児も泣きだした。

幼児の感情は伝染する。
最初の一人が泣きだしてから一分もしない間に、次々に子供たちが泣きだし、助けを求めるようにつくしの周りに集まってきた。

「あっ、だ、大丈夫だよ!みんな!このおじちゃんはお姉さんの知ってる人だから!大丈夫、大丈夫!顔は怖いけどなんにもしないからね。ほら泣かないで。あああ、ちょっと道明寺、あんた無表情で立ってんのやめて!子供たちが怖がってんじゃん!」
「てめ『おじちゃん』って誰のことだよ」

「わあああああん!!」
「うえぇぇぇぇぇぇぇん!」

ボソリと言った司に、子供たちの泣き声がひときわ大きくなった。

「あああ、子供たちが怖がるから喋んないで!ほら~、もう~!ちょっと道明寺、出てって。早く早く」
それでも何か言いたげな司を、ぎゅうぎゅうと廊下に押し出して、つくしは一生懸命に子供たちを宥め始めた。
「みんな~、大丈夫だよ~。怖いおじちゃんは行っちゃったからね~!ほら泣かない。泣かないよ~、怖くない怖くない、強い強い!」
怯えてしがみついてくる子供たちを、抱きかかえるようにして背中を叩く。
が、一向に泣きやまない子供たちに溜め息をつき、壁ごしに司を睨み、つくしはイザという時の奥の手を使う事にした。


「あ、そうだ!アイス食べよっか~!」

ぴたりと泣き声が止んだ。

「・・・あいすぅ~?」
3歳児が顔を上げた。
「そうだよ!皆がご飯をちゃんと食べたらあげようと思って、買っておいたんだよ。ソーダとバニラといちごとぶどうとバナナ味。見てみようか!」
「うん」
「あいすたべるぅ~」
「ぼくピンク~」
「ぼくきいろー」


アイス最強!

たった今、泣いていた事なんて忘れたみたいに、アイスを貰い、きゃっきゃ言いながら食べ始めた子供たちを見て、つくしは大きく息をついた。


その時、大きく開いた戸口から、社長が廊下を通って行くのが見えた。
その後ろから西田も。
「西田さん?何で西田さんがうちの社長と・・・」

目を見開いたつくしが固まる中、社長の緊張した声の挨拶と、司の低い声が戸口から聞こえてくる。
今日はうちの社員旅行で~とか、楽しそうでいいですねとか、道明寺さんのところはこういった旅行なんかはとか、いえ、うちはありませんとか。

「それでは、道明寺さんはここへはお仕事で?」
・・・ドキッ!!
「ええ、まあ、そんなところです」

・・・うわ。
ものすっっっごく心臓に悪い。

内緒なのだ、秘密なのだ。
司との事は、会社の誰にも言っていない。っていうか言える訳ない。
バレたら退職する決心の秘密なのだ。
ああドキドキする。
つくしは、全神経を集中して廊下の会話に聞き耳をたてた。

「ちょっと用があってここを通ったんですが、偶然彼女を見つけて」
「うちの牧野ですか?・・・失礼ですが、お知り合いですか?」
「高校が同じだったんです」
そして、ひょいと戸口から顔を出してつくしを見た。

「うぇぇぇぇぇん!!」
「わあぁぁぁぁぁん!!」

途端に子供たちが泣きだして、司は引っ込んだ。
「わわわ、泣かない泣かない。ほら、まだアイスあるよ~溶けちゃうよ~」
廊下では、会話が続いているようだが、子供たちの泣き声で聞こえなくなってしまった。
つくしが気が気でなく子供たちを宥めていると、開いた襖から社長が入ってきた。
後ろから西田も。

「社長・・・」
どうしても西田に向いてしまいそうな視線を、意志の力で社長に固定してつくしが呟くと、社長はお酒で赤くなった顔でニコニコと笑った。
結構な酔っ払いだ。
と言うか、既に誰かの浴衣のヒモで頭にハチマキしちゃって、ローラースケート履いた昭和のアイドルみたいになってるんだけど、誰も注意しなかったんだろうか。
後ろにいる、少しの隙もないスーツ姿の西田との対比がすごい。



西田さん西田さん、違うんです!
今日はこんななっちゃってるけど、いつもはもうちょっとパリッとしてるんですよ、うちの社長!
こんなのは今日だけなんです、ホント。
西田に向かって念じているつくしに、社長が言った。
「いやぁ、牧野さんが道明寺さんの後輩だったとは知らなかった」
にこにこと。
「あ・・・はあ・・・えーと・・・昔・・・高校が・・・その」
ゴニョゴニョと説明にもならない言葉を呟きながら、そのまま促され廊下に出る。
そこには司が、よそ行きの笑顔を浮かべて待っていた。








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