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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

ケンカした


ケンカした。


あたしも悪かった。
あたしも悪かったんだけど、認めたくなくて、負けたくなくて、意地はって。
この口からは思ってもない事がポンポン出てきちゃって、自分でもどうしようもなくて。
アイツの声がどんどん尖っていくのが嫌で、もっと悪態ついて。

そして



本気で怒らせた。




ゆうべの電話。
『もういい』
で終わった会話。
直接会って謝らなきゃで、朝イチで訪れた道明寺邸。
会わないって言われたら、強行突破するつもりで装備してきたジーンズとスニーカー。
ふかふかの絨毯にも、どっしりした家具にも、全くそぐわない。


ちら・・・・と。
顔を動かさないようにして、物凄い横目で窺うと、長いソファーの一番はじっこ、遥か向こうに道明寺。
長い足を悠然と組んで、肘かけに頬杖ついて。
醒めた目を手にした紙面に止めて。
長い睫毛が、伏せた瞳に影を落とす。




・・・・30分。
この部屋に通されて30分。
謝ろうと思って、もう30分・・・も経ってるのに。
一体あたしはなんなんだと、自分に呆れかえる瞬間。
潔さがあたしの取り柄の筈だったのに、ソファーの端と端に別れて、こっちだけが凄い緊張感でアンテナびんと立てて様子を窺って。
バカか、あたしは。


「・・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・・・・・道明寺?」


勇気を出して呼んでみたら、無視された。
美しい横顔はピクリとも動かず、何もなかったように紙に目を落としている。

「道明寺」

  無視。

「道明寺」

  シカト。

「道明寺」

  完全スルー。


「う」
弱りきってソファーに上がり込む。
そのまま動物みたいに四つん這いで、じりじりと1メートル、2メートル・・・・・・
振動すらも伝わりゃしない、遥かな距離に悲しくなる。






・・・・・・違う。
遠いのが悲しいんじゃない。
こっち向いてくれないから。


いつもみたいに、バカ女って呼んで、髪の毛くしゃくしゃに掻き混ぜて、ホントどーしよーもねぇ女だなって言って、大きい手で耳元くすぐって、笑わせてくれないから。
長い腕であたしを絡め取って、胸に閉じ込めてぎゅうっと抱きしめて、暴れんなよって囁いて
くれないから。

「道明寺ぃ」

とうとう隣に到達したのに、こっち見ないし動かないし返事しないし。

「ごめん・・・・ね・・・?」
ようやく言った言葉に、道明寺がこっちを見た。
「こ、怖いんだけど」
少しも緩まずに上げた視線はまるで凶器だ。
その軌跡は、あたしをざっくり切りつけたあと、また元の位置に戻った。

ああ、もう。
しょぼんと凹んで、そのまま膝を抱える。
困ったなと思う気持ちと別に、どこかで安心しているのは右側から伝わってくる彼の体温のせいだ、多分。
だって、怒ってる時でもあったかいんだ。

膝を抱えてくっついて、さてどうしようかなと考える。
あっち行けって言われないのに安心して、彼の腕に寄り掛かると、放り出してた腕を
「痺れる」
と、持ちあげてそのままソファーの背もたれに置いた。
しめた、と、開いた隙間から一気に彼の膝に乗り上げて、そのまますっぽりと収まる。
彼のなかの、あたしの場所に。

「怒ってる?」
そろりと視線を上げて聞くと、道明寺はジロリとあたしを睨んだ。

「カンカン?」
引き結んだ唇は、こういう時、彫像みたいに冷たいカーブを描く。
・・・・何か喋ってよ。

「許せない?」
彼の瞳の中の自分は、あり得ない程情けない顔をして。


困りきって、気合いがしゅーんと音たててしぼんだ時、待ち焦がれた低い声が言った。
「お前昨日、俺になんつった」
「イカレパーマ」
「違う」
「非常識界のカリスマ男」
「違う」
「バカ街道独走中」
「違う、っつーかくだんねぇ悪口繰り返すな。てめ、分かってんだろ」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・『刷り込み』って・・・・言った」
「『あんたがあたしを好きだっていうのは、カモの刷り込みと同じで、たまたま初めて好きになったのがあたしだから、そのまま何も考えないでここまで来ちゃっただけなんじゃないの』」
「・・・・・・・・・」
「『可愛げがなくって、気ばっかり強くって、美人でもないし、スタイルも良くない。そんな女は気に喰わないんでしょーよ。それなら、さっさとあたしから卒業して、あんたにぴったりの素敵な人見つければ』」
「・・・道明寺、記憶力いいね」
「ああ、ショックだったからな」
「う・・・凄いイヤミ」
「お前さ」
こっちを見た視線に、僅かに悲しいような色が混じる。
「俺はなに言われても傷つかねぇとか、思ってる?」
「・・・・・・ごめん」


彼を傷つけた。
酷く傷つけた。
それを理解した心が、絞られるみたいだ。
後悔に鷲掴みにされた心臓が、逃げ場を求めるように強く鼓動を打ち、呼吸さえもできない。
どうして、いつもこうなっちゃうんだろう。
考えなしに言葉にしてしまってから後悔して。
許されるのが当然みたいに甘えて。


「酷いコト言って、ごめん」

涙が出そうになって、慌てて下を向いた。
泣きながら謝るなんて冗談じゃない。
そんなずるい事、できるもんか。

「もう、言わない」

視界が揺れて滲む。
棒を呑みこんだみたいに硬直する身体に、あたたかい手が触れる。
ビクッと震えた背中を、力強い腕が抱きしめた。

「顔上げろ、牧野」
低い声が、あやすように耳をくすぐる。
罪悪感で顔を上げられないあたしはただ黙って首を振り、その拍子に零れそうになった涙を止めるために大きく眼を開いた。
「牧野」
「・・・・・・・」

「牧野」
辛抱強く囁く優しい声に、引き寄せられる感覚。
つられるように顔を上げると、視界の中、滲んで見えない道明寺からプッと吹き出す音がした。
「あ~、やっぱり何回見てもいいよな」
「え?」
「この、風邪ひいたアヒルみたいな顔」
「な、なんだとぉぉっ」
見えないままに睨みつけると、道明寺は面白そうにひとしきり笑って、それからあたしの手を取った。
「ほら」
そう言って、自分の両頬に触れさせる。
「上手に詫び入れられたら、許してやるから」



うん。



美しい曲線を描いたくちびるに、キスをする。
まるで子供の遊びみたいな、触れるだけのキス。
だけど、あたたかくて、安心して、幸せな。
一番好きな。




触れている唇が動いた。
彼の唇が笑ったかたちになって、そして優しい声で
「許す」
と言った。
「うん」
嬉しくて、彼の首にぶら下がるように抱きつくと、道明寺はあたしの両目の涙を吸い取って、それから自分の胸の中にすっぽりと抱きしめた。

「ホント、しょーがねー女」
予想通りの台詞に思わず小さく吹き出すと、道明寺はあたしの髪をくしゃっと丸めて、笑ってんじゃねーよと軽く引っ張った。

「お前くらい始末に負えねー女、見たことねぇ。この俺に向かって好き勝手ほざいて、振り回して、怒られればシュンとして見せやがって」
お説教開始だ。
「負けず嫌いで考えなしで、思ってもない事ベラベラ捲し立てて、それで自分が落ち込んでりゃ世話ないっつーの。っとに、めんどくせーヤツ」
はいはいはいはい、すいませんでした。
「泣いて謝ったって、次はねーぞ」
泣いてないもん。
目から流れてないんだから、泣いてる事になんないもん。
「ホント、自分でも呆れる。なんでこんな女がいいんだか。お前の言う通りだぜ。可愛げがなくって、気ばっかり強くって、美人でもないし、スタイルも良くないし、凶暴だし、突拍子もねーことばっか、しでかすし、胸なしトリガラだし」
・・・・ん?
今なんか、余計な事言ってなかった?




「でも、そのままのお前がいい」
きゅっ・・・と、抱きしめる腕に力がこもった。




「そのままのお前を、愛してる」


「道明寺・・・・」
優しい目で見つめられて、優しく抱きしめられて、また涙が出てきそうだ。
あたしはそれを隠すように彼の胸に顔を埋めて・・・










「なんて言うと思ったか」

「へ?」

「冗談じゃねぇ。このアホが。毎回毎回、人が一番ダメージ喰らうような暴言、するっと吐きやがって」
「ど、道明寺、道明寺?ちょっと、普通、ここで和解じゃないの?」
「ナイーブな俺の心をズタズタにしやがって、そう簡単に許すか」
「え、だって、だってだってさっき許すって言ったじゃん!」
「あんなカワイクねー事、二度と言えねーよーに、きっちり詫び入れさせてやる」
「わ、詫びって、もう、やったし!それ以上に何させようっていうのよ!」
「なにって?」

道明寺はキレイに顔を傾けると悪魔みたいに笑って、その全身からだらだらと色気を垂れ流し、焦ったあたしの顔を覗き込んだ。
それから囁かれた言葉は、とても朝の明るい光の中で聞くようなものではなく、あたしは目を剥いてピョンと飛び上がると道明寺の腕の中から逃げ出して、あたふたとドアに向かった。
置き去りにしたソファーの道明寺から笑い声。
それから内線電話に話す声。
「三沢?ああ、俺。いま牧野がそっち行くから、捕まえとけ。いいか、ぜってー逃がすなよ」


あ、危ない!ピンチだ、あたし!
バン、と後ろ手にドアを閉めて走り出す。

うぅぅぅぅぅぅ、舐めんじゃないわよ!
アイツとつき合ってるせいで、あたしの危機回避能力はハンパなく育ってるんだから!
むかし、全校生徒相手に鬼ごっこした脚力を見せてやろうじゃないのよ。
見下ろすと都合よく、戦闘態勢のデニムとスニーカー。
ほら、ちゃんと役に立ったじゃないの。偉いぞ、あたし!
動揺で、キョロキョロと周囲を見回しながら、さてどうやって逃げようかと。
焦るあたしはもしかして、もうとっくに罠の中?
遠くから聞こえて来る

『そっちに回り込め』
『挟みうちに・・・・』

不吉な会話を聞きながら、頭の中では道明寺の楽しそうな笑い声が響く。

「くそぉぉぉぉっっ!」


絶対、絶対、ぜぇったい!


捕まったりするもんかっ!





                  Fin




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コメント
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2010/12/05(日) 10:35 | | #[ 編集]
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2010/12/05(日) 13:45 | | #[ 編集]
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2010/12/05(日) 15:14 | | #[ 編集]
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2010/12/05(日) 16:53 | | #[ 編集]
No title
しあわせな気持ちになりましたー。とば様、いつもありがとうございます。
2010/12/05(日) 17:48 | URL | いいち子 #t77.EDlU[ 編集]
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2010/12/05(日) 20:59 | | #[ 編集]
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2010/12/06(月) 00:36 | | #[ 編集]
あははは
楽しい!
鬼ごっこだ~
でもね~つくし・・・
そんだけヒドイこと言って、司を傷つけたんだから観念しなさい!!
司は君のこととなると、とてつもなく傷つくのよ。
他はどうだっていいけど・・・。
だから・・・朝の光が眩しかろうが・・・
時間がどんなに早かろうが・・・
二度と言わなくなるように・・・君こそが刷り込まれてしまえーーーーー
この贅沢者~~~
2010/12/06(月) 09:45 | URL | rann #sowQq82.[ 編集]
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2010/12/08(水) 01:22 | | #[ 編集]
No title
好きです!!
この、道明寺がちょっと引いた感じ
大好きです!!

ありそうで、なかなか無いこの絶妙な引いた感じの
道明寺ぃv-10もう、大好き!!

これからも頑張って下さい!!
とばさんも大好き!!
2010/12/10(金) 22:13 | URL | ひこうき #-[ 編集]
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2010/12/11(土) 09:03 | | #[ 編集]
(ゆ)さま
キャーe-420
そうですよね、いいですよね!ケンカ。
もう、ぜひぜひぜひe-266
見たいです~、甘ゲンカ。
もう、あの人たちったら、ケンカしたとか言ってるけどケンカだと思ってるのは本人たちだけ、なので(笑)。
つくしちゃんが何しても、すぐ許しちゃううちの坊ちゃんもアレなんですけど(笑)、お説教、口汚く罵りながら手は頭を撫でているとか希望(萌)。
ひどく甘やかしておりますね(笑)。
2010/12/12(日) 17:07 | URL | とば #-[ 編集]
いろはさま
こんばんは
つくしちゃんが逃げ切るに一票、ありがとうございます。
SP軍団が頑張って捕まえようとしても、その他の使用人に邪魔されそうです(笑)。
意味もなく廊下にワックスをこぼしてみるメイドとか(笑)。
何となく、わたしの中で、SPは坊っちゃん属でその他はつくしちゃん寄りという設定がありましてe-68
それでも、SPから逃げ切って、やったー!ってなってるつくしちゃんが、どこからともなく現れた坊ちゃんに捕まる事希望e-415
2010/12/12(日) 17:19 | URL | とば #-[ 編集]
チルっ子さま
おはようございます
ふふふふふ。ナイーブ(笑)。
痒いバカップルにお言葉をありがとうございますv-344
ジンギスカンキャラメルって、こっちの方では普通に100円ショップとかに売っているんですけど、売っているっていう事は買う人がいるんですね←もうジンギスカンキャラメルの話はやめるように(笑)
2010/12/13(月) 10:09 | URL | とば #-[ 編集]
Cさま
あ、ラブラブの方でお願いいたします(笑)。
鬼ごっこ大好きe-415
坊っちゃん、ジャンプのボスキャラ並みに悠然と自室で構えていてほしいんですけど(あ、Cさまジャンプとか読まないんでしたっけ。努力・友情・勝利)きっと途中でウズウズして出て行っちゃうに違いない。
とにかく一緒に居る二人が書けたので満足です(笑)。
ありがとうございましたv-344
2010/12/13(月) 10:20 | URL | とば #-[ 編集]
LUCAさま
おはようございます
イ・ミンホさんがアレな理由に、思わず爆笑してしまいました!
でもそうですね。
二次活動も、いつかは終わる時が来るんでしょうけど、花男はやっぱり一生好きだと思いますe-415
孫にも読ませよう。まだ娘にも読ませていないけれど。
完全版は重いので、棺桶かしがりそう・・・あ、スイマセンかしがるって方言ですか?
えー、傾きそうですね!
2010/12/13(月) 10:33 | URL | とば #-[ 編集]
いいち子さま
うあーん!いいち子さま!!←さっそく泣きついている(笑)。
元気です。弱音ばっかり吐いてすいません。
元気です←しつこい(笑)
今年もつくしちゃんの誕生日がやってきますね!
あのカウンター、ホントに見てるとドキドキする(笑)。
寒くなってマフラーとか巻くようになったので、手編みの話をしょっちゅう思い出します。
やっぱり西田さんとかSPの皆さんが好き(笑)!
いいち子さまのところのSPの皆さんは、なんか、みんないい人そうです。
寒いので体調気をつけてくださいませ。
ホッカイドー、今日もアイスバーンで嫌になっちゃうほんとにもう。


2010/12/13(月) 10:59 | URL | とば #-[ 編集]
くろうささま
こんにちは
わー、嬉しいです。同世代v-344
年齢の割に、深みも落ち着きもないわたくしではございますが、ああとばさんって、おバカさんなんだなくらいの分析でヨロシクお願い致します(笑)。
つくしちゃんから先に謝るのって、うちでは珍しいな~と思いながら打っておりました。
はい、すげぇやりづらかったです(笑)。
v-353達成感v-353
あ、わたしは意地悪な方が、より好きです←M発言(笑)。
2010/12/13(月) 12:42 | URL | とば #-[ 編集]
ゆかさま
ははははは!
勘付かれました。
・・・が、わたしじゃありません!
つくしちゃんを甘やかしているのはわたしじゃなく、坊っちゃんです!
あと出てこないけど使用人の方々。
e-272メロメロビームe-272
でも、甘やかしたいのに甘やかさせてもらえない普段の坊ちゃんも好きでーすe-266
楽しい突っ込みに、大喜びしました。
ありがとうございました。
2010/12/13(月) 12:50 | URL | とば #-[ 編集]
rannさま
こんにちは
えー、朝っぱらからそんなー。
って、すごい棒読みです(笑)。
坊っちゃんナイーブだからなぁ(大爆笑)!ぎゃはは。
刷り込まれるんですね、つくしちゃんe-420
あとで思い返しても
『・・・@:*&ぎゃ&$kk#!!!』
ってなるくらい刷り込まれるといいですよねe-266愛をe-266
・・・えれえれえれ(想像して砂を吐いております)
2010/12/13(月) 13:01 | URL | とば #-[ 編集]
バンビさま
こんにちは
好きって言って頂けると、本当に嬉しいです。安心します。
魔女で2人が離れ離れなので淋しくて、わーっと書きなぐってしまったケンカなんですが、読み返すと大変カユい出来上がりになってますね(笑)。
衝動って怖い(笑)。
誉めていただきホッとしました。ありがとうございました。
2010/12/13(月) 13:11 | URL | とば #-[ 編集]
ひこうきさま
こんにちは
いやぁ、コメントの中で、一番先に『引いた』って目に入って、
イヤアアアァァァ、引かれたァァァァ、わたしが悪いんですごめんなさい~~!
って勝手に土下座モードに入ってしまったネガティブ女です(笑)。←落ち着けや
よく読んだら、すっごく嬉しいコメントでした。しあわせになりました。
お久しぶりですe-415ずっと見ていて下さったんですね。ありがとうございます。
わたしにまで、だ、だだだだだだ大好き言っていただいちゃって、動揺動揺。
頑張ります!

2010/12/13(月) 13:19 | URL | とば #-[ 編集]
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