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専務と私~魔女来襲~ 9


「杉菜さぁぁぁん!!」
わああああ・・・!と、女3人が、入って来た人物目がけて走り寄る。
「・・・・・・・・・どうしたの?」
突然3人に囲まれて、しかもそのうちの1人は頭の先からびしょ濡れで、ポタポタと垂れているのが水なのか涙なのか、わからない状態で。
困惑を顔に貼りつけたその人は、不意につくしを見た。
つくしと彼女の目が合う。
その周りでは3人が、
「信じられない!この女!」
「平気で暴力をふるうなんて」
「あたしたちは杉菜さんの為を思って」
「だって、室長ったら酷すぎます」
「杉菜さんがこんな目にあってるのに、平気で他の女を連れて歩くなんて!」
と、口々に訴えている。

それなら、樹本に文句を言うのが筋じゃないか。
全く、この手の女たちは・・・・。
と、つくしのコメカミでピキッと音が鳴った時。
「わかったわかった。ゴメンね、心配してくれて」
杉菜さんと呼ばれた人は、3人の女を宥めると、仕事に戻りなとトイレから送り出した。
そして、つくしに向き直ると、ぺこりと頭を下げた。

「・・・・あの子たちに、やられたんでしょう?」
「・・・・・・・」
「すいませんでした」
「あ・・・いえ、別にあなたに謝られても・・・・あたしも反撃したし」
「あの子たち、秘書室の子たちで・・・・・わたしの、後輩なんです。なんか、わたしの事、心配してこんな事したみたいで・・・」
本当にすいませんでしたと、もう一度頭を下げた。
その後頭部に蜘蛛の巣。
・・・・・・・・蜘蛛の巣?
それに良く見れば、っていうか、見ようと思わなくても目に入るっていうかアレなんだけど。

なんでこの人、ジャージなんだろう。
しかも埃まみれの。


聞いていいのか悪いのか、つくしが逡巡していると、杉菜が声を掛けた。
「あの、良かったら着替え貸しますよ。っていうか、着替えて下さい。風邪引いちゃうわ」
「あ・・・ああ、すいません」
「ジャージですけど」

あ、やっぱジャージなの?
一見普通に見えるこの人は、実はすごく変わった人なんじゃないか。
考えた事が、顔に出たのかもしれない。
杉菜という人は、綺麗な笑顔になって
「まあ、風邪をひくといけないので、早く行きましょう」
と、先に立って歩き出した。



「・・・・・・・・うわー・・・・・・」
そして連れて来られた場所。
そこは、薄暗い廊下をずっと進んだ突きあたり。
「・・・・・・倉庫・・・・?」
窓のない、広いだけの空間にはスチール棚がズラリと並び、なんだかわからない箱や機械や紙の束が乱雑に積み重なっていた。
「そうなんですよー」
その棚の間をスタスタと歩きながら杉菜が言う。
「ちょっと景気が悪い感じなんだけど、ここがわたしの職場なんです」
一番奥まで進むと、隅っこにデスクとその前に応接セットがあった。
どう見ても『使わなくなったので、ここに置いてあります』と言う感じだったが。
「・・・・・・・・・・・」
なんと言ったらいいか分からないつくしに、横からビニールパックされた物が差し出された。
「はい、これ、着替えどうぞ。ずっと前にうちの会社で扱ってた物なんです。古いんですけど、新品だから」
中身はタグが付いたままの衣類だ。
さっき言ってたから、ジャージなんだろう。
ありがたく受け取り、つくしは隅っこの方で着替えた。
「冷えたでしょ?お茶入れてるので、飲んで行ってください」
「あ・・・ありがとうございます」


ようやく濡れた服の冷たさから解放されて、ほっと息をついたつくしに、カップに入ったお茶が差し出された。
杉菜は申し訳なさそうに、もう一度頭を下げた。
「本当に、すいませんでした」
「え、いえっ!あの、さっきも言ったかもしれないけど、あなたは何もしてないんだし、それに3倍返ししたから」
「・・・・ぷっ」
「ぷ?」
小さく聞こえた音に、キョトンとしてつくしが見ると、杉菜が下を向いて肩を震わせていた。
「・・・・あの?」
「・・・・ぷ・・・くくく・・・・ご、ごめんなさい・・・・あ、あの子たちには悪いけど・・・」
苦しそうな声は震えている。
笑いで。
「ま、まさかあの子たちも、やり返されるとは思ってなかったんでしょうね。あなた、すごい。えーと・・・」
「牧野です。牧野つくし」
「牧野さん。凄いパワー。凄い、強靭な精神力だわ―」
「・・・スイマセン凶暴で」
「凶暴っ!ぷぷぷぷぷっ」

笑う杉菜につくしが赤くなる。
ちょっと、さっきのはやり過ぎたかも知れない。
人様の会社だって言うのに、来て早々に派手なバトルを繰り広げてしまうなんて、ホントあたし乱暴者って感じじゃないか。
ナイフみたいに尖っては触るものみな傷つけてバイクで死んだ仲間のためにガードレールに花供える10代でもあるまいし、いい大人なのに全くもう。
これって、やっぱり道明寺の傍に居るから、凶暴さが感染しちゃってるんじゃないだろうか。
司が聞いたら
『ふざけんな、てめぇは生まれついての凶暴女だろ』
とでも言いそうな事を考えて、つくしはがくりと肩を落とした。


「室長ね、もうじき婚約するっていう噂があるの」
笑い止んだ杉菜が、落ち着いた声で言った。
「だから、あの子たち、あなたをその相手だと思ったんじゃないかしら」
「でも、樹本君にはずっとつき合っている人がいるって、言ってたじゃないですか」
「ああ~。いるわね~」
「婚約するならその人じゃないんですか?だって」
「その人との結婚は、室長のお母様が反対してるの」
杉菜は少し笑って、それから何でもないことみたいに付け加えた。
「ちなみに、その相手ってわたしなんですけどね」
「えーっ!!」
素っ頓狂な声を上げたつくしを見て、杉菜は更に笑いだした。
そしてひとしきり笑うと、目尻に浮かんだ涙を拭きながら言った。
「だから、あなたがあの子たちに絡まれたのって、わたしのせいなんですよ。本当にすいませんでした」
「はぁ」

ちょっと頭が混乱している。
樹本に突然、つき合ってほしいと言われた事。
目の前の女性が、樹本の彼女だって事。
両方が本当なら、樹本はとんでもない悪い男じゃないか。
眉間にしわを寄せて考えていると、杉菜が心配そうに覗き込んできた。
「本当に、ごめんなさいね」
「あ、いえ。そうじゃないです。ちょっと考え事してて・・・杉菜さんは、ここ、お一人で勤務なんですか?なんか、淋しいですね。窓もないし、なんか、えー・・・・その・・・物置みたいな場所だし」
「あはは、そうなの。先週、秘書室からここに飛ばされちゃって」
「とばされた?」
「だって、ここ本当の物置きなんだもの。責任者なんて、先週までいなかったのよ。それが、わたしを配置するためだけに『第2物品管理室』とか無理矢理名前つけちゃって。馬鹿みたいよね」
「どうしてそんな事に?」
「やっぱり、わたしが室長と別れないから、圧力をかけてるんじゃないかしらね。室長のお母様に『後悔するわよ』って脅されたし。他にもいろいろされてるし。やっぱり、息子の相手が一般庶民って、許されないみたいで」
まるでひと事みたいに、杉菜は笑った。
が、その笑いが、つくしを見て固まる。

「あ・・・あら・・・・どうしたの・・・・・かな?」
そこには、両手を握りしめて、背中にメラメラとしたオーラを背負ったつくしが居た。
「・・・・・ったく・・・・」
「え?」

「全くどいつもこいつも金持ちってやつは~~~~っ!!」

「あ、あのぅ?あなた、えーと」
「牧野です」
「牧野さん、ど、どうしたの、急に」
「二言目には庶民だの貧乏人だの、うるせーんだよっ!権力使って、人をいいように動かして、それが悪いとも思っていないんだから。ああああぁぁぁぁぁ、もう、いろいろイヤな事思い出してきたぁぁぁぁっ!杉菜さんっ!」
「はっ、はいっ!」
「負けちゃダメっ!負けちゃダメですからねっ!」
「はいっ!」
「ホントもう頭に来るっ!あー腹立つ!」
「ままままきのさんっ!わたしのために怒ってくれるのはありがたいんだけど、どどどどうしてそんなに」
「だって、あたしもやられたんですもん」
「え?」
「相手の親に。息子と別れろって、家にお金持って来られたり、ヤツとお嬢様とのお見合い会場に呼びだされたり、友達人質に取られて圧力掛けられたり」
「えええぇぇぇぇー?それって、わたしよりひどい事されてるんですけどー!」
「もうドブネズミ呼ばわりですよ。または足元の小石。あの時はホントに腹が立って腹が立って腹が立って。いくらあたしが貧乏人だからって、もうホント、虫けら扱いなんだもん」
「そうかー。そうだったのー。なんか・・・・・・・・力づけられる。大変なのが自分だけじゃないって思うと元気出る」
「そう、だから負けちゃダメですよ!あたしも応援するし!」
「ありがとう~~~!」



ひと事とは思えない。
実際こんな、自分と同じ立場の人間と出会ったのは初めてだった。
優紀にも、桜子にも滋にも、根底のところでは伝わっていないんだろうなという想いが、目の前のこの人となら共有できる。
その初めての体験に、杉菜も同じ想いだったらしく、暗い倉庫の片隅で、2人はきゃーきゃーと声を上げて喋りまくった。

「だいたい、お金持ちのやる事って無駄が多すぎるのよ。ご飯食べに行けば、どう考えても多いだろうって量、注文するし、買い物に行きゃあ値段も見ないで『色違いのも全部』みたいな買い方するし」
「そうなのよ~~~っ!どこ行くにも車出して、一番いい席用意させてね~~!」
「たまにご飯作ってあげれば『ビンボー食』とか言うしねー!」
「普通においしいよねー!室長とかも、見た事ない食べ物はすっごく警戒するのよねー。同じ日本国民が毎日食べてるものなんだから、黙って食べなって叱るんだけど」
「あはははは!樹本君、叱られてるんだ。おかしい。そうそう、スーパーとかも嫌がるよねぇ」
「スーパー、基本だよね」
「基本だよね。月曜火曜は」
「『やさい市』」
「ゼロのつく日は」
「ポイント10倍」
「毎月29日は」
「お肉の日」
「ねーっ」
「ねーっ」
「あはははははは」
「あはははははは」
「あははははは。ホントもう、他人とは思えない牧野さん。こんなに話の合う人、初めて」
「あははは。それは多分、雑草仲間だから」
「雑草?」
「そう。つくしは成長するとスギナになるんですよ~」
「なるほど」
「座布団くれます?」
「山田君に言っておく」
「あははははは」
話題は横道に逸れまくっていたが。


笑って笑って、杉菜が涙を拭きながら
「いけない。話に夢中になって仕事サボってたわ」
と言った時は、お互い声も嗄れかけた頃だった。
「あああ、すいません。仕事のお邪魔して」
「ううん、いいの。仕事って言ったって、納期がある訳でもないし、急ぐ事もないから」
「ここで、何の仕事してるんですか?」
「何もないのよ」
「・・・?」
「やらなきゃいけない事は何もないの。まあ、干されてるって事なんでしょうね。でも、何もしないでお給料貰うわけにはいかないから、この倉庫の物品の確認と、掃除と、整理をしようと思って。皆、要らなくなった物を適当に置いて行くもんだから酷いの。奥の方なんて層になっちゃって」

それでジャージで蜘蛛の巣で埃まみれなんだ。

・・・・・・胸の中がざわめく。
ワクワクとも、ドキドキとも違った不思議なざわめき。
それはつくしの気分を高揚させて、気がついたら声に出していた。
「あたしも一緒にやります」
「ええ?駄目よ、そんな、手伝ってもらうわけにはいかないわ。牧野さんは、もう戻って。えーと、社長室、わかる?」
「戻ったって暇で辛いんですもん。ただ黙って座ってなきゃいけないの。助けると思って是非!大丈夫、後悔させません。あたし掃除めちゃくちゃ得意なんですよ」
そう言うと、つくしは立ち上がって脇にあったモップを手に取った。
「ジャージ代だと思って頑張ります」
ぴろ、と、ジャージの裾を引っ張って、笑った。



               10へ



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コメント
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2010/11/13(土) 10:32 | | #[ 編集]
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2010/11/13(土) 16:29 | | #[ 編集]
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2010/11/13(土) 17:14 | | #[ 編集]
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2010/11/13(土) 20:50 | | #[ 編集]
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2010/11/13(土) 22:02 | | #[ 編集]
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2010/11/14(日) 22:35 | | #[ 編集]
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2010/11/16(火) 08:55 | | #[ 編集]
すげー
すごい!めちゃくちゃ面白い!!
なに??この展開??
いっきに読んじゃいました。
なるほど!!樹本の母親は・・・
って一人で色々考え始めちゃった。
面白くなってきました~~。
にしても、いいですね。ポイント2倍にお肉の日。
ちなみに私も近所のスーパーで「あっ!今日はポイント5倍」ってスキップしてました~。
2010/11/16(火) 10:17 | URL | rann #sowQq82.[ 編集]
hanadayoriさま
こんばんは
こちらこそ、いつもありがとうございますe-68
なかなか話が進まず、申し訳ありません。って毎回言ってますね(笑)。
魔女はいつ出てくるんだろう・・・自分で言っておきました。
いつもは昼休みにご訪問頂いているとのこと・・・あの、やっぱり『ヌルイですが・・・』とかの時もひ、昼間に・・・/////////←余計なお世話
えーと、続き頑張ります。
どうもありがとうございましたv-344
2010/11/18(木) 22:30 | URL | とば #-[ 編集]
いろはさま
こんばんは
そうですね~。類じゃなかったですね~。
女子トイレへの侵入は軽犯罪ですから(笑)!捕まっちゃいますから(笑)!
でも彼なら、何の違和感もなく女子トイレに馴染みそうな気がします←悪口ではありません(笑)
今回女子しか出てないな~と思って、次の書きかけのヤツを見てみたら男子しか出てませんでした。
バランス良く!自分(笑)!
頑張ります。
今日も、ありがとうございました。
2010/11/18(木) 23:08 | URL | とば #-[ 編集]
Cさま
こんばんは~。
そうそう。つくしはスギナになるんですね。
『シャレかよ!』
という突っ込みがこなくて、安心しているところなんですけど(笑)。
なんか、オリキャラばっかりだーe-286
坊っちゃん初めF3もそうなんですけど、桜子と滋さんに会いたいよう←自分がなんとかしなさいよう。
今回、T3は出ない予定のため、やや自分(だけ)が淋しいですが頑張りますe-271
ありがとうございました。
2010/11/18(木) 23:21 | URL | とば #-[ 編集]
くろうささま
e-420わあe-420
え?同じ世代ですか?
ちっちゃな頃から悪ガキでe-343
なめ猫は小学生の時e-442
ときめきトゥナイトは蘭世と真壁君の方e-442
口裂け女には「ポマード」e-442
どうでもいい情報でした(笑)。スイマセン(笑)。
樹本母のアレの理由はすっごいくだらないので、なにも推測しないまま流し読みしてください(笑)。
どうもありがとうございました。
2010/11/18(木) 23:35 | URL | とば #-[ 編集]
チルっ子さま
e-343ちっちゃな頃から←もういい(笑)
e-420昭和の仲間がたくさんで、嬉しいですe-420
あんまり進まない話に、もうちょっと打つのが早かったらなぁと溜め息なんですが、ここにきてキーボードを打つ2本の指のうち1本・・・・・受傷・・・。
いえ、ただのひび割れなんですけど(笑)。
鼻のアブラでも塗っておきます(笑)。
こちらもありがとうございました。
2010/11/18(木) 23:45 | URL | とば #-[ 編集]
LUCAさま
こんばんは
タイトル、うけてしまいましたe-446
よし!最後は専務の膝の上で終わらせようe-415←え
そして、今回は無理ですが、もっと濃密にオフィスラブを!いつか!
でも会社の仕組みが全然わかりません!←いばるな
専務と常務はどっちが偉いの?
タイムカードって、今でもあるの?
仕事中、お茶飲んだりお菓子食べたりしてもいいの?
そんな訳で、会社の話なわりに、全然仕事してないんですけど(笑)。
まず魔女を何とかしないとe-443
いつも嬉しくなるコメントをありがとうございます。
2010/11/19(金) 00:00 | URL | とば #-[ 編集]
(ゆ)さま
うちのつくしちゃん、いつもスロットル全開(笑)
いやいやいやいや。
(ゆ)さま宅では、坊っちゃんの方がいろいろ全開じゃありませんか。
ん?
あ。ラブv-344とか。可愛がりv-344とかそっち方面で!!
何で『全開』っていうと、まずファスナーが出てくるんでしょう←お前だけだYO!
ファスナー・・・じゃない、坊っちゃん、次あたり出てくるかな~と思いますe-420
こっちはまだラブラブしないので、そちらさまへ萌えを頂きに伺いますね(笑)。
e-420宜しくお願いいたしますe-420
2010/11/19(金) 00:36 | URL | とば #-[ 編集]
rannさま
わたしも明日はポイント3倍です(笑)。
樹本母の事はあまり気にせずどうぞ。
所詮わたしの考える事なので、悪い人じゃないんですけど迷惑な人ですよねe-444
でも最後まで出ます←言いきった
さら~っと流しておいてください(笑)。
こちらもありがとうございました。
2010/11/19(金) 00:42 | URL | とば #-[ 編集]
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