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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

エンジェリック 12

シャワーを浴びた後、バスローブのまま隣りの部屋へ滑り込む。
ソファー越しに、気配で振り向いた道明寺がニッと笑う。
「逃げだすかと思ったぜ」
「逃げないよ」
隣に潜り込み、髪に手を差し込む。
指の間を通るさらっとした感触に、ため息をひとつついて、そっと引き寄せた。

いっかい

にかい

三回目のキスは主導権を奪われて、泣き声が出るまで愛される。

「・・・・は・・・・・」
解放された唇から小さく息が漏れた。
「何で泣いてんだよ」
「やっとあたしのものになるから嬉しくて」
泣き笑いしながら言うと、身体が宙を浮き、そっとベッドに降ろされる。
「お前そんな事言うな。押し倒したくなるだろーが」
「もう押し倒してるでしょーが」
「・・・・今日は途中でやめねぇからな。何があろうと続行だ」
「誰か邪魔しに来ても?」
「ギャラリーがいた方が燃えんだろ」
「ぷ・・・バカ」
あたしは小さく笑うと、もう一度キスをねだった。



どんなに大事にされてるか、思い知らされる。
優しい手も 唇も 吐息も
あたしに触れる全てが愛を叫んでいる。
嬉しくて、照れくさくて、愛おしい。
甘く泣かされる嗚咽の中で、何度も好きを繰り返す。
「ちくしょう、幸せすぎて、死んじまいそうだ」
少し掠れた低い声が、ノドに響いた。




通過儀礼とか。
イニシエーションとか。
そう、一度は絶対通らなきゃいけない道ですが。
ですが。

痛いんだろうな~・・・・。
24にもなって『まだ』のあたしを面白がって、周りがいろいろ吹き込んでくれたせいで
知識だけは前よりいっぱいある。
ケド。
だからこそ怖いってゆーか・・・
丁寧に愛されて柔らかくなった身体が、その時を察知して身じろぐ。
下腹部に当たる凶器みたいな感触にちらりと見下ろすと、凶悪に首をもたげたモノが目に入り
思わず身体が逃げた。

「は」
「は?」
「ははは・・・」
「はぁ?」
「こ・・・怖くない。全然怖くないよ。オッケー大丈夫」
「・・の割に身体が逃げてんじゃねーか」
「だって・・・その、そ、そーゆーのは見慣れてるんだけど、あの、何て言うか、元気ない状態の、
っていうか。患者さん、おじいちゃんばっかりだし。っていうか、その・・・思ってたより大きいんだけど・・・」
どうしよう。
正直に口に出すと
どうしようって言われてもな、と微かに眉間にしわが寄る。
怖いよ~~~~!!!!
言えたらどんなにいいか。

「なぁ、やめとくか?今日」
多分青ざめてるあたしを覗きこんで道明寺が聞く。
びっくりして顔を見ると優しい顔。
でもそれは少し切なくて。
キュンとくる。

・・・・まったく!
どうしてこの男は、いつもあたしを甘やかしちゃうんだろう。

「バカ紳士」
何でこんなに大事にしてくれちゃうのよ。
昔も、今も。
『そりゃお前決まってる。愛だろ、愛』
お祭りコンビの声が聞こえた気がした。

あたしは、道明寺の瞳に映る自分を見据えると
ひとつ息を吸いこんで

「絶対、やめない」

迷うことなく宣言し、熱を持てあましている凶器を自分の中に導いた。


道明寺が、どこか痛いような顔をしてあたしを見る。
「・・・・・・・・・っ」
ツラいって言ったら、あたしが何て言おうとやめちゃうに違いないから。
「・・だ・・・・・いじょうぶ」
ひきつるような呼吸の中、繰り返す。
・・・・・・・今、メリメリっていったぁ~!・・・たい、いたいいたいいたい!!!
頭の中は痛いでいっぱいで、自分が情けなくなるけど。
「・・・・・・い・た・」
ちょっと口から出た。
ごまかすように笑いかけると、道明寺は顔を歪めてちくしょうと呟いた。
「俺が痛くなりゃいいのに」
「・・・・情けない顔してんじゃないわよ」
頬に触れると、すりすりと顔を擦りつけてきて。
あぁ、なんか・・・
キュンと胸が鳴ったのと、最後の痛みと共に道明寺があたしの中に納まったのは同時だった。

ああ

やっと

あたしの

続きは考えることもできずに、頭も身体も情熱に掻きまわされ
苦しいんだか気持ちいいんだかツラいんだか幸せなんだかさっぱりわからない時間が過ぎて
彼が初めて見せる顔が壮絶に心を乱し


         最後まで意識を保っていたのが、奇跡






「・・・俺、幸せすぎて死ぬかもしんねぇ」
「ぷ・・・オーゲサ」
「牧野」
「なによ」
「ごめんな。お前、辛いだけだったろ」
「バカそんな訳ないじゃん。その・・・痛かったけど、すごく、幸せだった・・よ?」
ぐいぐいと胸に額を押しつけていうと
「ああぁぁもうっ!!ちくしょー!こんにゃろっ!!なんでんな可愛いんだよ、お前は!」
「ぐげっ!バカっ!くるし・・・死んじゃうっ!!」
ミシッと背骨が鳴り、慌てた道明寺がぱっと腕を緩めた。
その隙にシーツから半分抜け出して、くるくるの頭を掻き抱く。
「待っててくれて、ありがとね」
「俺のセリフじゃね?」
「ううん」


ねぇ、道明寺。
7年前、あゆみさんが現れなかったとしたら。
あたしたち、どうなってたのかな。
なんとなくだけどねぇ、ダメになってた気もするな。
あたしはこんな性格だから。
何にもできない自分に自信が持てなくて。
あんたの隣に立つ事に気がひけて。
早々に逃げ出しちゃったかもね。
でもさ。
今は、もう大丈夫。
あんたと別れてから経験したすべての事が、あたしをかたちづくり、自信になってくれてる。

そう考えると、悪くなかったよね、7年間。


「だからこんなに堂々と言えるんだよ。
あんたが好き。
愛してる。
あんたはあたしのもの。
一生手放さないんだから」

言ってやると腕の中の恋人は、きれいな目を細めて
うっとりするような顔で笑った。





「ところで、あんたの腕もほぼ完治だし、あたしそろそろ病院に戻るから」
機嫌のいいうちに、と言いだすと、予想に反してニヤリと笑う。
「そろそろ言い出すと思ってたぜ」
「へ?」
「つーか、こーゆー時にそーゆー事言い出すのが牧野って感じだよなぁ」
「何がよ」
「いや、別に」
道明寺は一人でくつくつ笑った後、何でもない事みたいにさらりと言った。
「戻れねーぞ、お前」
「は?何でよ、だって」
「明日、辞令が出るはずだ。牧野つくし、道明寺邸に派遣続行」
何よ、このズルイ顔。
「期間は10年」
「じゅっ・・・!!!!」
「何か、院長がCTとラジエーション?だかも欲しいんだってよ」

あ・・・あんの・・・
タヌキおやじ~~~~!!!!
「だからお前は、ず~っとここで俺の世話だ」
子供みたいに笑う顔に、叱りつけようとした気持ちが萎えて・・・。
はぁ~・・・あたしも甘いよなぁ。
ちょっと考えるフリして言ってやった。
「仕事ならしょーがないなぁ」
ちゅ 
「しょーがないだろ?」
ちゅ





「ま、1年も経たねーうちに結婚退職することになるだろうけどよ」
「気が早い」
「7年越しだぜ、おせ―くらいだろ」
「ははは」



                          Fin




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2013/06/11(火) 02:53 | | #[ 編集]
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