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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

エンジェリック 11



2日後、日曜日、夕刻。
『司君、元気になっておめでとう会』のために皆が続々と集まってくる。
「「「「カンパーイ」」」」」
「「「司君、おめでとーう」」」
「ウッセー!!アホかてめぇら」
毒づく道明寺も、皆の気持ちがわかるのか、笑ってる。


あたしは、久しぶりに会った優紀から病院の話を聞いて。
そのうちシゲルさんと桜子も現れて。
そのまま女子4人で輪になる。
「道明寺さん、良くなって良かったね。よく在宅で出来たね」
「つくしー!!よく一人で頑張ったねぇ!」
「疲れたでしょ?先輩。いくら愛する道明寺さんのためって言っても」
「・・・・・サムイからやめて・・・」
「お、牧野、いつもみたいに否定しねーの?『ナニイッテルノヨ』『アタシタチ、トックニワカレテルンダカラー』  とか言って」
後ろを通りかかった西門さんがからかう。
「ちょっと、西門さん、それあたしのマネ?ってかその声色キモイから」
「先輩、もしかしてまた道明寺さんと・・・」
「な、ないよ?なんもない、あるわけない」
「素直に吐いた方がいいですよ・・・?」
「ないってば!ああ、お腹すいた!シゲルさん!優紀!何か食べよ!」
桜子の追及を逃れて、料理の載ったテーブルの方へ後ずさる。

桜子、舌打ちしてんじゃないよ。
旧家のお嬢様でしょ。

うわあ、おいしそうー、どれたべようかー!
シゲルさんときゃっきゃっ言いながら料理を選ぶ・・・ふりをして道明寺を盗み見る。
ソファーに沈んでくつろいだ様子の道明寺は、笑ってF3と話している。

・・・かっこいい・・・

ずっとずっと前に、とっくに諦めた人なのに、また手に入るかもと思った途端、
何てカッコ良く見えちゃうんだろう・・・・・。
ボーっと見てたら、道明寺が視線を上げた。

!!!!!!

「つくしどうしたの?真っ赤だよ?」
「あああ暑くて!何か暑くない?この部屋」
「うん、別に・・・」
何て、何て厄介な・・・・恋心。

ノックの音がした。
動揺をごまかすように応対に出る。
ドアを開けるとメイドさんが少し困ったように立っていた。
「笠原あゆみ様がお見えです。お礼に見えたとの事ですが・・・」
ザワめいていた室内がシン・・・となる。
「通せ」
道明寺が立ち上がって、短く言った。
そのままこっちに歩いてきて、
「ひゃ・・・・」
あたしの肩に手をまわした。
「どど道明寺」
慌てているうちに、あゆみさんが姿を現した。

顔色が悪い。
きっと、お父さんのことやなんかで寝てないんだ。
「あの、お座りになりませんか?」
声をかけると、驚いた顔であたしを見る。
なんだろう。
知らずに何かマナー違反しちゃったのかな。

「いらねえよ、座って話しなんて」
道明寺が舌打ちしながらあたしを睨む。
「こいつは汚ねー手で俺とお前の仲を裂いた女だぞ。てめ、お人好しにも程があんだろーが」
「だって具合悪そう・・・あの、お父さん、大丈夫でしたか?」
「・・・・・おかげさまで、あの後入院しまして、落ち着きました。・・・・先生から、命が助かったのは
救命措置のおかげだと言われて・・・・・お礼に参りました・・・・・司さん、父の命を助けてくださって
ありがとうございました」
「俺じゃねーよ。こいつだろ」
吐き捨てるように言う。
ホント、敵だと見なした相手には容赦ないよね、コイツは・・・。
「・・・・・・ありがとうございました・・・牧野さん」
「あ、名前・・・」
「知っております。私も英徳でしたから。司さんとの事も知っています」
「はあ・・・」
・・・・き・・・気まずい・・・
「私と司さんは婚約を解消します。今では、笠原より道明寺の方がずっと力を持っていますもの、逆らえないわ。司さんも楓社長も、結局最後まで認めてくださらなかった・・・・」
あゆみさんは一気に言うと、あたしを強い目で見た。

「良かったわね、牧野さん。」






「・・・・・ざけんじゃないわよ・・・・・」

自分でも聞いたことがないくらい、低い声が出た。
あたしの中を、感情が渦を巻いて暴れ出す。
「道明寺・・・手、離して」
「あ?」
訝しげな顔を睨んで、肩にかかった手を振りおとす。
この守られポジションが気にくわないんだっつーの。
「おい!」
そのまま背中をぐいぐい押して皆のところまで連れて行って、無理矢理座らせた。
「お願い。捕獲してて」
びっくりして見ているF3に頼むとあたしは一人であゆみさんのところへ戻った。
「牧野、てめ、何してんだよ!おい、離せ!!」
「「つくし!」」
「先輩!ファイト!」
「何するつもりだ、あいつ」
心配げに呼ぶ皆の声を背にして。

あたしを睨むあゆみさんの前に立って、精一杯に背筋を伸ばした。
牧野つくし、きめる時はきめるんだから。



言いたいことはたくさんある。
アイツを奪われた恨みとか。
その卑怯なやり方についてとか。
何が『良かったわね』なのよ。
この7年間のあたしの気持ちが、あんたにわかる?
いろいろいろいろ。

怒鳴りつけようとして、大きく息を吸った。

その瞬間・・・・

見てしまった・・・・
彼女の目の中の悲しい色を。
叶わない恋に苦しむ眼差しを・・・・・・

ああ・・・

この人も、道明寺が好きなんだ。

わかっちゃったら・・・
もう・・・




「・・・・・あたし・・・・道明寺が好きなんです」

しーんとした室内に響くのは、みんなが息をのむ空気の動きと・・・
暴れていた道明寺がぴたりと動きを止める気配。

言葉は口からじゃない。
胸からあふれ出た。
ずっとずっとずっと、我慢していた言葉。

「道明寺が好きなんです。
誰よりも好き。大好き。
他の人じゃ駄目なんです。
彼を幸せにしてあげたいし、彼に幸せにしてもらいたい。
ずっとずっと、気持ちは7年間変わっていません。
だから、笠原さん」

握りしめた手のひらに爪が喰い込んで痛い。
その痛みが、緊張で混乱する頭を目の前の彼女に留めていた。

「道明寺を、あたしに返して下さい。
  あれは、あたしのオトコです」

「・・・・言った」
「やった!つくし!」
「スゴイ、牧野」
ヒューと口笛、パチンと指を鳴らす音、シゲルさんと桜子がきゃぁと小さく叫ぶ。
花沢類のクスクス笑い。

「言われなくても・・・・」
ぽつりと、あゆみさんが言った。
それから大きい声で
「言われなくてもお返しするわよ。何よ!あたしだって、とっくに振られた女に未練タラタラで、ネチネチネチネチ執念深~く想い続ける男の婚約者なんて、もうウンザリ!」
そしてくるりと背を向けた。
「用事が済んだから帰ります」
ガンっとドアが閉まる前、小さくごめんなさいって聞こえた。
気のせいかも、しれないけど。

極度の緊張で、身体が固まって動けない。
ありえないくらいドキドキしてるし。
頭はぐるぐるして、何も考えられないし。
後ろの方で、皆が興奮して喋ってる声もだんだん遠く・・・・・・・・

「きゃー!!!先輩がっ!!」
「つくしっ!」

ああ、またこのパターンな訳?
が。
ふらつくあたしの身体は、長い腕で受け止められた。
「・・・・・・あ」
見あげると、幸せそうに笑うキレイな顔。
ぼーっと見ていたら急に腕を掴まれて、部屋から引っ張り出された。
「ちょっと外す」
「え?え?え?」
コンパスの違いでほとんど小走りになってるあたしにかけられる、皆の声。
「牧野、頑張れよ~」
「戻ってこなくてもいいぞ~」
「カッコ良かったよ~!つくし~!」


「ねぇ、待って、どこ行くのよ!」
道明寺はあたしを引っ張って、ずんずん進んでいく。
ちらっとこっちを見下ろすと、いきなりそこにあったドアを開けて、あたしを中に押し込んだ。
・・・・・・客室?
意味がわからず振り返ると、黒いシャツの胸元が目の前にあって、言葉を発するより速く
ぎゅうぅぅぅっと抱きしめられる。
「すっっげぇ・・・嬉しい・・・」
ポツリと言うと、身体を離し、あたしの唇にチュッとキスを落とす。
「サイコー嬉しい。俺も。俺もお前が好き。ずっと愛してる。
幸せにしてやりてぇし、幸せにしてほしい。ちくしょう」
ちくしょうって何よ。
吹き出して見上げると、子供みたいに笑うあたしの大好きな顔。

「好き」
首に抱きついてキスをねだった。
チュッ チュッ と
子供にするみたいなキスが繰り返されて、目を合わせて笑う。
軽いキスは自然に深く長くなっていき
あたしは情熱って言うものがどんなものなのか、思い知らされた。

きつく抱きしめられてキスを受ける。
「・・・・・・ふぅ・・・・ん」
チュクチュクいう恥ずかしい音の合間に、甘えるような声が出て。
何も考えられなくなっていく。
服の裾から大きい手が忍び込んで、背中を辿る。
「んっ・・・ん・・・」
うっとりした意識の中、プツンと外されたホックと、やわやわと胸を覆う感触に
一気に我に返った。
「ちょ、ちょっとタンマ!」
いきなり暴れ出したあたしを、またぎゅうっと抱きしめてくつくつ笑う。
「やっぱダメか」
「だ、だめっ!皆、待ってるし、おめでとう会の途中だし、何かあたし混乱しちゃって頭が上手く
回らないし・・・」
「混乱してるうちに、やっちまおうと思ってたんだけどなー。お前に時間をやるとロクな事考えねーから」
「ちょっと」
「ま、いいか」
優しく優しく、あたしの眼を覗きこむと、耳に吹き込むように囁いた。
「後でな」
どくん・・・
その低い声に真っ赤に染まったあたしは、子供みたいに手を引かれて皆のところへ戻った。


宴会の主旨は『司君、つくしちゃん、ヨリが戻っておめでとう会』になっていたらしく。
部屋に戻った時には異様な盛り上がりを見せていた。
っつーか、あたしと道明寺がいない間にどんだけ空けたんですか・・・・
何十本も並ぶシャンパンの空き瓶を、呆れて指さすと、すでに呂律の回らなくなった優紀が
乾杯しっぱなしなの、もうどれだけ呑んだのかわかんない、と笑う。
「2人が帰ってきたよ!」
「帰って来なくても良かったんだぜ~?」
「うっせ、来なきゃ来ないでどーせ邪魔しにくんだろ」
「司、学習してるね」
笑いっぱなしの大騒ぎで。
酔っぱらったシゲルさんが『良かったね、良かったね~』って号泣しだしたりとか。
『あたし・・・道明寺が好きなんです・・・』
『牧野・・・俺だって・・・』
と、小芝居を始めたお祭りコンビを、あたしと道明寺でボコったりとか。

大騒ぎの中、何回も目が合った。
熱をもったような重い視線は。
あたしをがんじがらめに捉え、思考を奪っていき。
お開きになって皆が帰る頃には、あたしと道明寺の指はしっかりと絡まり合っていた。



                               


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