FC2ブログ

つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

ハニィハント 32

「牧野」

キッチンへ、グラスを下げに来た時だった。
穏やかな、柔らかい声につくしは振り向いた。
「花沢類」
昨日の空港以来、2人になるのは初めてで。
一瞬ドクンと鳴った心臓が、声を上ずらせる。
類は、まるでいつもと変わらない風につくしを覗き込む。
「どうした?」
「・・・・・・・・花沢・・・類・・・・?」
「なに?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「牧野?」
「その・・・・・昨日・・・・・ありがとう・・ね」
「ああ・・・・昨日」
なんにもなかったみたいに、まるで普通の顔の類に、つくしの微かな緊張が解けてすっと力が抜ける。
これから言おうとしている事を考えたら、ちょっと顔なんて見られないから、シンクに向いた。
「溜まってきたね~、一回洗っちゃおうかな」
グラスを手に取りカチャカチャと鳴らし、この音にまぎれてあんまり聞こえなければいいなと思いながら、つくしは話し始めた。

「その・・・・・・・・昨日だけじゃなく、ずっと、ありがとう。・・・・・・考えたんだけどさ、あたしあの時・・・・花沢類がNYに迎えに来てくれた時、思わずって言うか、恥ずかしながらって言うか、その・・・・泣いちゃったじゃない?それでさ・・・なんか、弱み見せたから、もういいやみたいな感じになって、ずっと甘えちゃってさ・・・・・・・花沢類の気持ちに気がつかないで頼ってばっかりでさ、ずっとずっと・・・・・・・あ」
カチャカチャと、鳴っていた音が止まる。
「は・・・・・花沢類」
泡だらけの手のままで動きを止めたつくしの頭の上で、後ろから肩を包んだ類が楽しげに言った。
「多分、俺の方が牧野にありがとうって言わなきゃいけないと思う」
「え・・・・な・・んで・・・・?」
「あんたが、俺をまるっきり変えたから」
キョトン、とつくしが類を仰ぎ見る。
「そんな事・・・・・・してないよ?」
「いろんな事、教わった。多分あんたが思ってる以上に」
「え、何だろう。あたしが花沢類に教えた事って・・・・・・・・」
「いいよ、わかんないなら」

全部だよと、思いを込める。
怒ったり笑ったり、喜んだり悲しんだり。
愛おしいと思う気持ち、幸せだと感じる心。
色とりどりの感情、眩しいくらいの輝き。
それからバカ笑い。

「何だろう。花沢類に教えたこと教えたこと・・・・・・・・・イワシとメザシは同じ魚だとか?スーパーでの買い物の作法とか?それともスタンプカードの事?えーと、あとは」
「あははははは!そう。あと、キリンの飼い方。口裂け女の秘密。レンガで家をつくるには。カエルを王子様に戻す方法」
「え・・・・・・・ちょっと!花沢類、やっぱり冗談ばっかり!真面目に考えて損した!」
ほらまた感情が溢れてくる。
抱きしめるのを我慢して、わざとからかった。
「さっき、司なんて言ったの?」
「え?」
「さっき、なんか牧野に言ってたじゃん。なんて言ってたの?」
するとつくしは
「べべべべべべべべべべつに。別に。別に。別に」
わかりやすく動揺しだしてガチャガチャとグラスを洗いだした。
また類が笑う。

と、戸口から桜子が顔を出した。
「先輩、コルク抜き、そっちにありません?」
「あ、あたし部屋にあるよ。持ってくる」

つくしが出て行くと、桜子は類に向き直った。
カタン、と、テーブルにコルク抜きを置き、そして長身を見上げにっこり笑った。
「お別れは、済みました?」
表情を隠した類が、桜子を見下ろす。
「心配しなくても、もう整理はついてる」
「それならいいんですけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブス」
「は?ちょっと花沢さん?もしかして八つ当たり?やめてくださいよね」
そう言って挑戦的に類を見上げた桜子の視線が、類のそれと絡む。
そして小悪魔はビシッと人差し指で類を差し、言いきった。
「牧野先輩はもう、道明寺さんのものなんですから」
「スゴイ変わり身」
邪魔していたくせにと言外に含んで言ってやると、桜子が笑う。
照れくさそうに笑って、そして小さく呟いた。
「いいんですよ」
と。
「手の平返しとでも、何とでも言って下さい。私は先輩が幸せならそれでいいんです」
ツンと顎を上げる顔の頬の紅潮を見て、類は笑った。
それを見て桜子も笑った。
同じ一人に魅入られた者同士。
恋なんかじゃない。多分もっと強い想い。
これはもう、同病相哀れむしかないと思いながら、クスクスといつまでも。
笑った。




カンカンと、階段を昇ってつくしは自分の部屋に入る。
入って灯りをつけると、暖色のライトの中に愛着のある物たちが浮かびあがる。
見まわさなくても全部が目に入ってくる。
あたしが築いてきたもの。
守ってきたもの。
なんとなく動けなくなって、そのまま立ち尽くす。

カチャ

ドアが静かに開く音がして、背の高い影が入って来る。
「道明寺」
司は真っ直ぐこちらへ来ると、ふわりとつくしを抱きしめた。
「遅いから」
「心配したんだ?」
「違う」
きゅう、と腕に力が入る。
「道明寺?」
胸に押し付けられて、モゴモゴと声を出すつくしの髪に鼻を擦りつけて、司がポツリと言う。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一緒に来いよ」

「道明寺?」
「離れらんねぇっつってんだよ。例え一日でも我慢できねー。・・・・・・・ちくしょ・・・」
「道明寺・・・・」
そろそろと、小さな手が背中を昇っていく。
そして宥めるようにポンポンと軽く叩いた。
「すぐ、追いかけていくから」
「いやだ」
「ホントにすぐだから」
「いやだ」
「やだって・・・・・・こ、子供じゃないんだから」
「ぜってーやだ。牧野、牧野、牧野。一緒に来い。俺と来るって言ったじゃねぇか」
そう言って身体を離し、つくしを覗き込んだ目の色と言ったら・・・・・・・。

ヤ バ す ぎ

絶対狙ってやってるに違いない、この男は。
この切なげな低い声も。
温かく包んでくる手の力も
熱が絡んでくるような眼差しも。
美しい唇から洩れだす吐息さえ。
全部を使ってあたしを陥落させようとかかって来る。

整った顔を、一番キレイな角度に傾けて視線を落としてくる、これは罠だ。
だってこんな顔されたら、ごめんウソって。
残るなんてウソ、一緒に行くに決まってんじゃんって。
思わず言っちゃいそうじゃないか。

極上の誘惑を目に入れないように、つくしは大きい背中にぎゅうっと抱きついた。
顔見ちゃダメ、目を見ちゃダメ、絶対ダメ。
「あたし、あたしさ、道明寺・・・」
胸にぶつかる声は、ちょっと上ずっていた。

「ちゃんと、したいの」
ドキドキして、喉が詰まった。
「この部屋ね、就職と同時に借りたんだけど、結構一人暮らしって大変で。ヘンな勧誘来たり、電球切れちゃって、換え方わかんなくて3日くらい真っ暗な中でお風呂に入ったり、夜中にゴキさん出てきたり、外の壁に蜂の巣出来ちゃって、窓開けられなくなったりとか。でも、結構幸せに暮らしてたんだよ。毎日、会社行って仕事して、ご飯作って、掃除して、洗濯して。頑張ったらご褒美に何か買ったりとか、腹立つ事あったらケーキ、ホール喰いしたりしてね」
何を言い出したのかと、訝しい雰囲気になった背中にぎゅうっとしがみつく。
「仕事もね、一生懸命やってたんだよ。あの通り、あんたから見たら笑っちゃうような小っちゃい会社だけど、周りも皆いい人でね、楽しかった。頑張ってたの」
「・・・・聞かねぇよ」
「・・・ねぇ・・・・・ちゃんと、自分の手で終わらせてから行きたいの。会社も生活も。このままあんたと行ったら、全部放り投げる事になっちゃう。そんなのイヤだよ」
「聞かねぇって」
「ねぇ、あたしね、あたしは・・」
「聞かねぇ、お前の話なんて」
「・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・あたしは、ここで、一人で立ってた」
そう言ってつくしは司の胸から離れた。
半分伏せられたキレイな瞳は、何を考えているかわからないままに、つくしをじっと見下ろしてくる。

「それで、これからは、あんたと2人で歩いていく」
ピク・・・と、長い睫毛が揺れた。
「だから、きちんとしていくのはあたしのケジメ。一人で立ってたあたしにね、自分に誇れるように、ちゃんとしてから行きたいの」


「道明寺」
「・・・・・・・・・・」
返事は、ない。
「道明寺・・・・・・・・・・・ねぇ、お願い」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・お願い」
「・・・・・・・・・・・・・お前、今どんな顔してんのかわかってんのかよ」
「・・・え?」
「・・・・・・・・・・・・・卑っ怯くせぇ・・・・・」
司が忌々しげに呟く。
愛しい女から初めてねだられるのがこんな事だなんて、全く頭にくるったらない。
「ワガママ言う時だけ、すり寄って来て、んなカワイイ顔しやがって・・・・・・・ムカつく・・・」
「べ、別にあたしは」
「わざとだろ」
「ちょ・・・ちょっと・・・重・・・・・・道明寺・・・・道明寺っ!」
ずっしりと、体重をかけて乗っかってきた司を支えようと、つくしがプルプル震える。
お構いなしに圧し掛かって来る司は、耐えきれなくなって膝を崩したつくしを乱暴に床に横たえると、押さえつけて上から見下ろした。

「お前、そんな顔すりゃ、俺が何でも言う事聞くと思ってんだろ。俺がお前にべた惚れで、可愛くてたまんねぇの知ってて、そんな事してんだろ」
「おおお思ってないよ!何よ、そんな顔って。どんな顔もしてないっつーの、アホ」
「・・・・ったまくる・・・・」
吐き捨てて、司は整った美貌を至近距離まで降ろしてきた。

つくしの目が大きく開いて、すぐ近くまで迫った瞳をただ見つめる。
真っ黒な瞳の中に、暗い火が見えるような。
視線に絡め取られて息もできなくなるような。
そんな錯覚に陥りつくしは身をすくめる。
「・・・だ」
「牧野」
ダメ。
制止の言葉は呑みこまれた。
司の喉に。

咬みつくように降りてきた唇と、すぐさま割り入って来る舌の動きに、全ての神経が絡め取られる。
少し乱暴なキスに、身体の中からゾクゾクと熱が上がった。
このまま、本当に言う事を聞きたくなる。
愛おしくて切なくて、何でも聞いてあげたい気になる。
後頭部から頭を固定されて、ただ唇への愛撫を受けとめる事しかできないつくしは、呑みこまれそうになる意識を叱咤した。
ちゃんと、言わなきゃいけない事がある。
伝えなきゃいけない事がある。

「んんんんん?ん、んんんん。んん-んんっ。んんん」
口を塞がれているのに話そうとするから、舌が逃れては絡め取られ、くちゅくちゅと居たたまれないような音が立つ。
顔から火が出そうな気持になりながら、つくしはそれでも話した。
「んんんんんんん。んんんんっんんん。んーんんんーんー」
「・・・・・・・・・うるせぇな、喋んなお前」
ぷは、と息をついで、それからあふあふと呼吸を整えながら、つくしは司の中に吸い込まれた言葉を繰り返した。

「あのね、昨日、嬉しかった。お前が正しいと思った道を行けって、言ってくれて。フォローは俺がしてやるって、言ってくれて。すごく嬉しかった」
上気した顔は真っ直ぐに司を見つめる。
「背中押してもらってる気がして、でも全部包んでもらってる気もして、あんた、いい男になったなぁって、ちょっと感動した」
一気に言って、つくしは小さく息をついた。
複雑そうな表情の司を見て、笑って、もぞもぞと下から抜けだす。
「・・・・・んなコト言ったって認めねぇ」
「お前が正しいと思った道を行けって、言ってくれたもんね!嬉しかったなぁ!」
「うるせぇ!ソレとコレとは・・・」
「すっごく嬉しかったなぁ!尊敬しちゃったなぁ!」
「・・・・・るせぇっつーの!」
「ぎゃ!苦しっ!重っ!」
もう一度、身体の下に敷きこまれたつくしがバタバタと暴れ出す。
「すっげぇ卑怯。やなオンナ、お前」
「苦しい~潰れるって~~~~!」
「潰しといてやる。半殺し。んで動けなくなったところをNYに運んでやる」
「バカ」
顔を見合せて笑う。
一瞬、司の目に切なげな色がちらついて、つくしは笑い止んだ。
「・・・・・・・・・・道明寺?」
「・・・・・・・・・・あんま遅いと、ヤツら覗きに来るな・・・ほら、行くぞ」
「・・・・あ、うん」
手を引かれて立ち上がると、ちょうど唇の高さに司のそれがあって、軽くキスされてちゅっと鳴った。
「強情オンナめ」


司は認めるとは言わなかった。
でも、優しく見下ろす視線が、柔らかな表情が、つくしの我儘を許してくれているような気がする。
しょーがねーな、って言ってるような気がする。
気のせいかもしれないけど、そんな気がする
ぎゅっ、と大きい手を握ると強く握り返してくれて、その温かさに何にも言えなくなって、ただ手を引かれて階段を下りて行った。



***



遅かったとからかわれるのを覚悟して帰った司の部屋には、出た時のままの配置で親友たちが待っていた。
・・・・・・・・・・が、様子がおかしい。
目を合わせない西門総二郎。
グラスを持つ手が震えている美作あきら。
「氷足りないですね~」と、不自然に立ち上がった三条桜子。
皿に盛った料理をひたすら詰め込んでいる大河原滋。
そして花沢類は、入ってきた司を見て呟いた。

「牧野しか喰わない単食動物・・・・・・・」

「ぶっ・・・!」
「ぶはっ!」
「は・・・花沢さん!!」

「牧野が居なかったら不能・・・・・」

「類!駄目だって・・・ぶ・・・ははははっ」
思わず吹き出し、その後慌てて口元を押さえて俯いた4人の肩が震えている。
ピクピクと。
「お前ら・・・・・・・」
こちらでは単食動物の形の良い眉がピクリと震え、遥か上方からジロリと5人を見下ろす。
「何を、話していやがった・・・・?」
問いかける声は低く低く、威嚇まじりの雰囲気に、しかし天使はたじろがない。
「俺、今回、殆んど状況わかんなかったから聞いてた。皆に」
「・・・・・・・つまり、俺らを肴にして笑ってたって事かよ」
「情報交換って言ってよ。・・・・・ぷ。何かいろいろあったみたいだね」
優しげだ。
声も口調も表情も優しげだ。
優しげで、そして楽しげだ。
「司、NYで夜這いかけられたってホント?」
「ぶっ・・・!」
「牧野奪還しに行って、犬けしかけられて帰ってきたりとか?」
「・・・ぐ、ぶっ・・・」
必死で堪える総二郎とあきらは、美しい顔には似つかわしくない濁音を発する。

「牧野も大変だったみたいだね、いろいろ」
「え?あ、あたし?な、なになになに。ちょっとなに笑ってんの!何聞いたのよ!」
急に水を向けられたつくしが滋と桜子を睨むと、2人は何のこと?みたいな、わざとらしい笑顔をつくって首を傾げた。

「てめぇら・・・・」
ボキボキと、美しい手指から威嚇音が聞こえる。
「あんたたち・・・・」
バキバキと、小さな手からも、やや小さい同じ音。

「やべ」
「逃げろ」
「キャーッ」
「あはははははは!」

嵐の前触れに悪友たちは一気に立ち上がり、ゲラゲラ笑いながら逃げ出した。
「んじゃ、また明日な~!見送り行くからな~!」
「ケンカするんじゃないよ~!」
「いや、するだろ」
「じゃ、そーゆー事で!」
ざぁぁぁっと一気に逃げられて、意表を突かれてうっかり黙って見送ってしまった司は数瞬呆然と佇み、それから
「あいつら~」
と、出て行った。

残されたつくしは、しばらくポカンと立ち尽くしたあと、ソファーにドサリと沈みこむ。
「全くあの人たちは!」
西門さんと美作さんだけじゃない。
シゲルさんも桜子も花沢類だって。
結局、全員お祭り好きなんじゃないかとブツブツ言う。
ブツブツ言って、文句を吐いて。
頭の中で全員の首絞めて。
それからつくしは笑った。
ふざけ過ぎで、お祭り好きで、ホントどうしようもない人たちだけど。
いつでも心配してくれて、見ててくれて、応援してくれて、叱ってくれて、導いてくれる。
大切な人たち。


「・・・・・・・・・・・仕方ない、許すか」
逡巡の果てにそう言って、それから、さぁ片付けてしまおうと勢いよく立ちあがった。
長年の家事で鍛えられた両腕は、考えなくても機械的に皿を重ね、グラスを洗い漱いでいく。
手が勝手に動く分、頭には、ぼんやりといろんな事が浮かんでくる。
明日から、またしばらく司と離れ離れだ。
そう思うと、胸が重くなるような困った感じになる。
自分で決めた事だと頭を振って、その気持ちを振り払っても何だか全身に絡みついてくるような気がする。


皿を洗いながらつくしが溜め息をひとつ漏らした時。
背中が温かく包まれ、ウエストに腕が絡みついてきた。
「道明寺」
「逃げられた」
「あはは」
そのまま軽く抱きしめられる。
「どうした?」
「え?・・・・・・うん、別に・・・あ、ちょっと眠くなった、かな」
「じゃ、寝ようぜ」
「寝ようぜ?・・・・・・・・って、や、やっぱ今日も泊まるの?あたし」
「当たり前だろ。なに、お前帰る気でいた訳?」
「え?い、いや、別に、そそそそんな事もないって言うか、あるかもって言うか・・・・・・・その」
慌てて皿なんかをガチャガチャいわせだしたつくしを、溜め息を一つ落として司が抱きしめる。
「帰すわけねぇ」
低く吹き込んだ声に、小さな耳が薄く色づくのを見て、そのままくるりと振り向かせた。
するとつくしは俯いたまま、司の胸に額を寄せ小さい声で言った。
「・・・・・・・ヘンな事しない?」
「する」
「だだっだだだだダメだよ」
「なんで」
「だ、だって、昨日したじゃん」
「今日もする」
「ダメだって」
「なんで」
「だ、だって・・・そ、そんな毎日とかって・・・・・ふ、普通しないんじゃないの?」
「普通するだろ?」
「わ、わかんないけど」
俯いた顔も、多分真っ赤だ。
どうしても見たくなって、顎に指を引っ掛けて上を向かせた。

「ぶっ」
「な、何よ」
「予想通り」
「なにが・・・・ん」

「・・・・・・・・・」

何度も何度も甘噛みするようなキスを繰り返して待っていると、つくしの手がそろそろと胸を這い、差し伸べるように首に廻される。
「・・・・・・・・・・・・ん・・・・」
嬉しくて、強く唇を押しつけると喉の奥から声を漏らし、唇が薄く開く。
司はゆっくりとその中に入り込んでいった。

離れられない、と思う。
この小さな身体の温もりも、唇の甘さも。
真っ直ぐな瞳も、強く清浄な心も、誇りと矜持も。
全部が自分を魅了して止まない、まるで奇跡。
それなのに。
やっと手に入れたのに、この強情女は一緒に行けないなんて言う。
あたしだって淋しいけど、とか言いながら、離れて行きやがる。

思う様、抱きしめて味わってぐちゃぐちゃにしてやりたい気持ちをギリギリのところで押さえて優しいキスで繋いでいくと、つくしの身体からゆるりと力が抜ける。
「・・・・・・・・・・しねぇよ」
「・・・・・・・え?」
「ヘンな事なんて、しねぇ」
だから逃げんな、と。
柔らかな身体を抱き上げた。





                   33へ


0574.gif



コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/06/08(火) 17:15 | | #[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/06/08(火) 18:58 | | #[ 編集]
もう少し・・?
先週末からPCがおかしくなり泣きながら、フォーマットがやっと終わり、早々にこちらへアクセスしてみたら、ハニイハントのお話がアップされていて、読み終わり、ただいま気分爽快ですv-221

個人的に特に、もうたまんないよ!って思ったのが

『「いやだ」
「ホントにすぐだから」
「いやだ」
「やだって・・・・・・こ、子供じゃないんだから」
「ぜってーやだ。牧野、牧野、牧野。一緒に来い。俺と来るって言ったじゃねぇか」』

・・・って件。
こんな駄々っ子みたいな司には、とば様のお話でないと出会えないです。
いろいろ他にもサイト様がありますが、やっぱりとば様のつかつくのお話が大好きで、いつも砂吐かせてもらってますv-398

類、お祭りコンビや滋・桜子達とのからみも絶妙で、ホンと幸せ・・・(#^.^#)

今回の話は、始まりからすでに、つかつくにとって年月が経過していたので、ちょっと自分に重なる事もあったので特に思い入れもあり楽しく拝見してます。
ラストどうなるのかな。。o(^-^)oワクワク

ちなみに、まだ、私は息切れてませんので何でも来い!ですv-397
2010/06/08(火) 20:54 | URL | くりん #sCj5cBmo[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/06/08(火) 22:14 | | #[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/06/09(水) 09:10 | | #[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/06/09(水) 09:36 | | #[ 編集]
我慢できるのか?
こんばんは!!

 もう、司とつくし勝手にやってくれってくらいに
e-420イチャコライチャコラe-420甘~くて、ブラックコーヒーv-2732~3杯はいけそうです。

F3と桜子、滋ちゃんの司の絡みと逃げ足の速さに笑かしてもらいましたe-455

「ヘンな事なんて、しねぇ」って言った優しい坊ちゃんは一足先に行くNYで、つくしが来るのを一日千秋の思いで待つんでしょうね^m^

いろんな意味で周りの人は大変?・・・だよね。

     では、また・・・e-463
2010/06/09(水) 23:27 | URL | magenta #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/06/10(木) 20:15 | | #[ 編集]
みかんさま
こんばんは
座布団ありがとうございます。
私もムズムズしながら書いていました(笑)。
なんか、赤くなって、その辺のもの破壊しながらギャーッって言って外に飛び出したい感じ。
だって、胸におでこ、コツンですよ?←ギャーッ(笑)
e-420スイマセン、だぁい好きなんですe-420
迫りながらなんか企んでいる坊ちゃん萌えe-266
先が見えました!
あと2回!
引っ張っております(笑)焦れったいでしょうが、あと少しおつき合いくださいませe-415
2010/06/11(金) 02:43 | URL | とば #-[ 編集]
煌々さま
こんばんは
今回つくしちゃんの勝ちでしたね~カワイイ勝負←え、そうだったの
ぎゃはは、坊ちゃんが全力で口説き落とそうとしても、適わなかったようですね。
喰うか喰われるか(笑)。
お互い無意識におねだり光線を発して、お互いやられているという構図でしたe-272
また微妙なところで終わっちゃいましたけど(笑)。
この話後半ほとんどイチャイチャじゃん?とか、今気付いて(遅せぇよ)どうしようかなと思っています(笑)。
今日も、ありがとうございましたv-344
2010/06/11(金) 03:00 | URL | とば #-[ 編集]
くりんさま
こんばんは~
おお~。駄々萌え(笑)!
気分爽快になって頂き嬉しいです(爽快って・・・笑)
「牧野、牧野、牧野」3回(笑)。←なんかこだわり(笑)
誉めていただきましたe-449ありがとうございます。
坊ちゃんのワガママ+駄々炸裂~~(笑)。
でも負ける~~~~~ぎゃはは。
何でも来いのお言葉ありがとうございますe-420
聞きましたよ。聞いちゃいましたからね~~e-440ニヤリ

2010/06/11(金) 03:11 | URL | とば #-[ 編集]
LUCAさま
こんばんは~
『そーだ、てめ、すぐすぐっていつだよ』
『え!それはだって、すぐはすぐ…』
『何月何日ってちゃんと言えよ。んなすぐとか曖昧な言い方じゃ納得できねぇな』
『え、だってそんなのわかんないよ。こんなのした事ないし、あたしが急いだって向こうの…ほら役所とか水道局とかの都合もあるだろうし』
『・・・・・・・・』
『・・・・な、なによ』
『・・・・役所買収・・・』
『すんなっ!』
ボゴッ

・・・という訳で、すぐっていつなのかわからないんですけど(笑)。
お風邪大丈夫ですか?
ウチの小学生も今日で3日、学校休んでいます~。
熱が下がらなくて。
お互い早く治るといいですよね~。
ありがとうございましたe-420
2010/06/11(金) 03:27 | URL | とば #-[ 編集]
いろはさま
こんばんは
西田さんへのあたたかいお言葉、ありがとうございますe-415
いろはさまも駄々OKですか(笑)?←情熱的とか言え(笑)
嬉しいなーe-420
そちらの雨は、一日くらいでこっちに来るのが普通なんですけど、今回はまだ来ませんねぇ。
あ、もしかしてv-279梅雨?v-279なんでしょうか!
梅雨って6月でいいんでしたっけ?
こっち梅雨ないので、いまいちピンとこないんですけど・・・。
今日もありがとうございましたv-344

2010/06/11(金) 03:43 | URL | とば #-[ 編集]
Cさま
こんばんは~
か、おはようございますか迷う~←どっちでもいい
可愛いってv-42爆発してますが(笑)。
意外と好評で(?)戸惑っております(笑)。
なんかこの回、何にも考えないでさら~っと書いちゃったもので(笑)。
いや~。でもすごいな~と思ったのが、前半の類つくのシーン。
みごとに皆さんスルーしてくれてましたv-218
ぎゃはは、やっぱそうだよね~と思いながら、ちょっと類が不憫になってしまいました(笑)
     ↑
   笑ってるよ。
今日もありがとうございましたv-344
 
    
2010/06/11(金) 03:55 | URL | とば #-[ 編集]
magentaさま
おはようございます
『ヘンな事なんて、しねぇ』
つくしちゃん信じてるのかなぁ。ぷ。
と、いいトシの私とか思っちゃうわけですが(笑)。
胸やけ大丈夫ですか?
頑張ってください。ここが一番カユイところです(笑)。
ははは、ありがとうございましたv-344
2010/06/11(金) 04:05 | URL | とば #-[ 編集]
usausaさま
おはようございます
はいv-206
最近アレ始まりました。パパ嫌い。
なんだか子供を見ているとムズムズするというか。
自分の時を思い出して、これからあんな事やこんな事があるんだろうなと思うと・・・イヤだよぅ(笑)←どんな人生を送ってきたのか(笑)
好きなv-205もいるらしいんですけど「ママにだけは絶対教えない」
言いふらすからですって(笑)。さすが!わかってんじゃん!
ビジネス・ホテル・2人部屋に、つい反応してしまいました(笑)。
反省~(笑)
2010/06/11(金) 04:21 | URL | とば #-[ 編集]
やっと大人になったかな。つくし。
あのつくしが、司に素直についていきたいって思う。司もつくしのやり遂げたい思いを理解する。どちらも今はなれることが一番辛いけれど、これからの長い二人の人生共にしていきたいからこそ、今の行動を我慢できる。
 長くなって嬉しい話です。そろそろ大詰めなんでしょう。・・・次々に書かれるお話が嬉しくて嬉しくて。感謝です。
2010/06/11(金) 05:04 | URL | ありママ #mU4QT9vA[ 編集]
ありママさま
こんにちは
ホント長くなって、おつき合いいただいている皆様、ありがとうございます。
最初はストックいっぱいあったんですけど、だんだんと頼りなくなってきて(笑)、でもなんとか終わりそうでホッとしています。
一ヶ月くらいで終わらせるとか、類の誕生日までには終わらせるとかいろいろほざいていたようですが
v-353初夏ですねv-353
息切れしながら頑張りますv-344
ありがとうございました。
2010/06/11(金) 10:27 | URL | とば #-[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する