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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

エンジェリック 8




退院4日目。深夜0時。
「うううああぁぁぁぁああ」
眠い。
昼間の1時間チェックは大丈夫。
楽勝。
ただ、夜がね・・・
2時間置きに目覚まし掛けて起きて、道明寺の右手が生きてるか確認。
続けて寝られないのが辛い。
昨夜までは気合いで何とかやってたけど、そろそろ限界が近づいてきた。
「んんんんんん・・・・う~~~~」
枕に顔を押しつけて呻き、それから、無理矢理ベッドから身体を引き剥がした。
ぶんぶん頭を振っても歩きだしても、ボーっとしてヤバい。
半分寝ながらやっとの思いで道明寺のベッドまで辿りついた。

もう何十回も繰り返した手順。
点滴の残量を確認して調整して。
脈とって触って温感を確かめて圧迫して再充血を確認それからドップラー聴取。
夜間用に音を絞った小さな機械から、お馴染みの拍動音が聞こえてきてホッとする。

あと2回。
夜明けまで2回頑張ればまた朝が来る。
今日は朝に武田先生が来るから。
大丈夫だったら、観察の幅を空けてもらおう。
術後4日目だから、急性期は過ぎてるし。
ちょっとこのままじゃ・・・辛すぎ・・・
機械を片付けているとまた眠気の波が襲ってきた。
目が勝手に閉じる。

また2時間後。

あと2回。
あと2回。

早く来て診察して観察の幅も点滴も減らして。先生。
ああ、シャワー入っていいか聞かない・・と・・・
「あ・・ふぁ・・・」
眠い・・
眠い・・・
道明寺が身じろぎしたような気がする・・・・
でもあたしは眠気に負けて、とうとう眼をつぶってしまった。




・・・・・・あったかい
半覚醒の中、頬にあたる弾力のあるぬくもり。
あったかい。
気持ちいい。
もう一度眠りに落ちそうな意識。
「・・・ん・・・」
寝がえりを打とうとして頭をのけ反らせた。
瞬間。
「あ・・・明るいいぃぃぃぃぃっ!?」
がっ、と起き上がると身体の下でぐぇっと声がした。
ん?ん?
「なっ!!」
見下ろすと青筋立てた道明寺が
「てめぇ、胃の上に乗るな!」
って怒ってて、慌てて退いたけど状況がわからなくて軽くパニックになる。
なんで道明寺の上に・・・・・・ああああぁぁっっ!!!
「手!!ウソ!何時?あたし何時間寝ちゃった?手は?」
焦って右手を看る。
「だ・・・だいじょぶ・・・はぁ~~~~」
良かった。
「・・・・7時・・・あたし・・・・・寝ちゃったんだ・・・」
「夜中、見にきてそのまま潜り込んできてたぞ。俺の胸にすり寄ってきてよお」
からかう道明寺に言い返す気力もない。

自己嫌悪でいっぱいだった。
がくりとうなだれたあたしを道明寺が覗き込む。
「どうしたんだよ」
「ごめん」

泣きそうだった。
ごめん、ちゃんと看てあげなくて。
もし、何かあったら、大変な事になるところだった。
「ごめんね、寝ちゃって。ちゃんと看れなくて」
「ばか」
あたたかい腕が、そっとあたしを閉じ込めた。

「何日ロクに寝てねーと思ってんだよ。しょうがねーだろが。元はと言えば、俺が無理に
退院してお前一人に世話してもらってんのが悪りぃ。・・・ごめんな?」
「謝んないでよ・・・余計凹む・・・」
「なんだよ、どーすりゃいいんだよ」
道明寺が呆れたように言ってぎゅっと抱きしめた。
「俺は良かったけどな。寝顔、堪能した」
「はっ?みっ!見てたのっ?」
「おう、見た見た。お前、変わんねーな、寝相悪いとことか。あ、ついでにキスもしといたから。
思いっきり濃いヤツ。お前全然起きなかったけど、ごちそうさん」
「ばっ・・・」
「ば?」
「バカーッ!!!」

パンチが飛ぶ寸前、ノックの音がした。
メイドさんが武田先生の来訪を告げ、あたしは慌ててカルテを準備するためにベッドから降りた。
後ろで小さく、元気出たなって声がしたけど
聞こえないふりして。


***

道明寺は順調に回復している。
先生の診察の結果も問題なし。観察も8時間おきになったし。
点滴も朝・夕2回になったから動き回れるようになったし。
あの日、先生が採血持って行ってくれて結果をメールしてくれたけど、貧血も良くなってる。
元気になっていくのは嬉しい。
けど。

なんだろう。
この気持。
・・・・・淋しい。
隣の部屋で仕事してる気配を感じながら、そっと溜め息をついた。
わかってる。
怪我が治る時が、別れる時。

はぁ~・・・・・
だからイヤだったのに・・・
ずっと避けてきた。
婚約者のいる人だから。
もう、あたしの道明寺じゃないから。
そばにいたら、触れてしまったら、気持ちが抑えられなくなる気がして。
逃げてたのに・・・・・・。
この1週間、濃厚に関わりすぎた。

   気持ちが あふれ出す

なんだか泣きたくなってきて、PCを操作する手を止める。
画面の中には、今朝撮った道明寺の右手の画像。
両足を椅子に引っ張り上げて、重役椅子にすっぽりうずまりながら画面をじっと見た。
「キレイな手・・・」
昔から大好きな彼の手。
大きくて
指が長くて
爪の形が良くって
あったかくって
強い手
何回もつかみ損ねた。
本当はその手に捕らわれたかったのに
意地張って
逃げて
突っぱねて

今さら・・・
もう、遅い
これは、別の人のもの

泣いちゃいそうだった。
涙があふれてきて目の前が霞んだ。

ギシ・・・・と、椅子がきしんだ。
そのままくるりと後ろを向かされる。
滲んで見えないけど、馴染んだ気配がすぐそばに来ていた。
「なんで・・・泣いてんだよ・・・」
「泣いて、ないよ」

まだ。

目を閉じたら涙がこぼれそうだから、必死に目を見開いていた。
「泣くなよ。お前が泣くと、どうしていいかわかんなくなる」
そっと、顎を持ち上げられて、吐息が唇にかかった。
くちびるに熱が与えられて、閉じたあたしの両目から涙が零れてポツンと落ちた。


赤面するほど優しい。
ゆっくり押しつける唇も、軽く吸う強さも、なぞる舌の動きも。
優しくって泣けてくる。
ポツン・・ポツンと雨だれみたいに音が鳴る。

欲しかった。
道明寺がもっと欲しくて自分から口を開けた。
両手でくるくるの頭を掻き抱き、舌で唇の合わせ目をそっとなぞると、ピクリと肩が震え。

スイッチが切り替わったみたいにキスが情熱的になった。

どうしよう、気持ちいい。
くちゅ・・・
くちびるの上を舌が這い、そのあと甘咬みされる。
上と下と交互に繰り返されて、どんどん敏感になっていく。
そっと舌を差し出すと、たしなめるように軽く押し戻された。
そのまま上の口蓋を何度も何度もなぞられて、胸の中がざわざわした。
くちゅくちゅいう水音が脳にダイレクトに響く。
深くて長いキスに苦しくなって、引き攣れたみたいに息を吸う。
吸った息は吐かなきゃいけない。
そっとノドを緩める。
「ふ・・・・・んぅ・・・・ん・ん・・・・」
自分の鼻からぬける、嗚咽みたいな甘え声に思わず薄く眼を開くと、道明寺と目が合った。

ずっと見てた・・・・?

恥ずかしくて、でも気持ち良くて。
「ん・・・んふん・・・」
自分の声にまで欲情する。
おかしい。
今日あたし。

「牧野すげぇ、顔やらしい・・・」
言いたい事だけ言って、またあたしの中に沈み込む舌を、戒める気持ちで吸ってやる。
ちゅ・・・くちゅ・・・
今だけはあたしのもの。
全てを自分のものにしたくて、絡んだ唾液を呑み込んだ。
ごくりと喉が鳴り、被虐的な快感に身体が震えた。

キスしたまま、道明寺が沈み込む。
椅子の足もとに膝立ちして
あたしの膝の間に割り入ってきて、ぴったりと身体が沿った。
「あ・・・・・ん・ん・ふんん・・・」
絡まる舌が気持ち良すぎて声が止められない。
もっと、もっと、と快楽を求める、いやらしい声。
どうしたんだろう。
あたし。
道明寺の口の中に、舌が引っ張り込まれる。
何度もこすりつけられて、喉が苦しくなるような快感を味わう。
強く吸われて、彼の喉がごくりとなった時には頭が真っ白になった。
「は・・・ぁ・・・・」

名残惜しげに唇が離れて行き、そのまま頬を滑っていく。
涙の軌跡を追うぬくもり。
「初めてだ・・・」
ぽつりと漏らされた言葉に意識を向けると
「マジキス」
ニヤリと笑う。
そのままギュウウッと抱きついて来た。
「ちっくしょー、ムラムラきやがる!!!」
「ひっ!!」
胸の上にうずめた顔をぐいぐい押しつけてくる。
「やっ!やっ!やあっ!!!」
肩を掴んで引っぺがそうと力を入れると妖絶な目線だけ見せて。
フェロモンだだ漏れで。
「なあ、すっげ気持ち良かった。お前は?」
と聞いてきた。

・・・・・いいわけあるか、アホっ!!

返事の準備はできていた。
それなのにこの口は。
余韻で痺れるこの口は。
「あたしも・・・・」
なんて言いやがった。

「!!!!!!」
「!!!!!!」
「くっそ、めちゃめちゃにしてやる」
「ぎゃぁぁぁ~~~~!!!」

さっきまでのセンチメンタルな気分はどこへ・・・・
あたしは叫び声を上げながら、部屋中逃げ回るハメになった。
                                                 




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