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つかつく砂吐き推進委員です。ヨロシクお願いいたします。

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エンジェリック 6

「坊ちゃん」
「司!」
「ねーちゃん、来たのかよ」
玄関で待っていた先輩と椿お姉さんが車に駆け寄る。
「来たわよ!全くあんたはいつもいつも心配ばっかりかけてっ・・・・・」
瞳に涙を浮かべながら襟首を掴みあげそうなお姉さん。
「悪りぃ」
「何よ!ふんぞりかえって!偉そうにしてんじゃないわよ」
「ちげーよ!このカッコで居ろって牧野が言ったんだよ!」
「つくしちゃん!!」

車のドアが大きく開けられ、お姉さんが引っ張り出してくれた。
「白衣!ほんとに看護婦さんなんだ、つくしちゃん!」
そのまま大きく手を広げて抱きつこうとそるのに、慌ててストップをかけた。
「お久しぶりです。あの、先に道明寺をベッドに寝かせたいんですけど・・・」
見回すと、人手には不自由しない感じで。
「すいません、SPの方、2人くらい手を貸して下さい」
頼むとすぐにこっちに来てくれた。
「司、歩けないくらい悪いの?」
「歩いて退院されましたが・・・・」
心配するお姉さんと西田さんに
「今だけ。熱が下がってる途中だから、かなり辛いと思うんです・・・あ、お願いします」
車イスに納まるまでまでの距離で、2回ふらついた。
「坊ちゃん」
一瞬涙ぐんだ先輩に声をかけた。
「先輩、早く寝かせたいのでお部屋の方、お願いします」
「あ、ああ、こっちだよ」

部屋はお願いした通りに整えられていた。
「ベッドがでかすぎるのが難点だなぁ」
ぶつぶつ言いながら点滴のルートを継ぎ足した。
熱い息を吐いて苦しそうな道明寺に
「汗かききったら着替えて身体拭こうね」
と声をかけると、うっすら目を開けて頷いた。
安心させるように笑いかけると、長い睫毛が震えて、そのまま閉じた。

「つくし、あんたも一休みしな」
「いえ、荷物だけ置かせてもらいます。こっちですか?」
お願いした続き部屋。
病院みたいにナースコールがないから、そうしてもらった。
そういえば、この家には坊ちゃんコールってのもあったっけ。
取りあえず荷物を置いて、点滴の準備だ。



注射を確認しているとベッドの道明寺が
「あち・・・」
と呟き、左手をバタバタさせている。
「汗かいて気持ちわりぃ・・・」
眉間にしわを寄せてブツブツ言う。
「身体拭こっか?」
覗きこんだら、子供みたいにこっくりと頷いた。

お湯を用意してもらって、シャツのボタンを外す。
「自分でできない所だけやったげるからね」
とりあえず、と、背中を拭く。
いつも拭いてる高齢の患者さんに比べて、段違いに広い。
石鹸を泡立てて肌に滑らせると、大きい背中が居ごごち悪そうに揺れた。
「おい、牧野」
「何よ」
「あんまヌルヌルさせんな。ヘンな気になる」
「はぁ!?」
思わず背中をバチンと叩いた。
「いっっっ・・・・・!!!!」
後ろから見ると、耳が真っ赤になっていて。
多分顔も。
ったく何考えてんのよ。

「しょーがねーだろ?ホントの事なんだから」
「もう!ヘンな事考えてんじゃないよ!」
「だってお前、触り方とか普段と全然違うじゃねえか」
「普段あんたになんか触ってないじゃん」
「だな、ここ何年か殴るか蹴るかしかされてねぇ」
「そそそれはあんたがヘンな事してくるから・・・・」

何でこんな話になったのよ。
あたしは照れ隠しみたいに手早く上半身を拭きあげると、新しいパジャマを着せた。
「後は自分でやりたいでしょ?あたし外出てるから。10分で戻ってくるからね」
すると道明寺がニヤニヤしながら、やらしい目でこっちを見た。
「俺は別にお前にやってもらってもいいんだけど?」
「あ、そうなの。じゃ」
その方が速いと、上掛けをまくり上げてズボンを脱がそうとしたら
「おい、ちょっ、ちょっと待て、嘘だって!」
と、焦った道明寺に止められた。
「どっちなのよ」
首をかしげると、道明寺は口の中でぶつぶつ言ってからジロッとこっちを見た。
「男の裸なんか慣れてんのかよ」
「慣れてるよ?そういう仕事だもん」
「・・・・お前、恥ずかしくねーの?」
そう言ってそっぽを向く。
「バカ、恥ずかしがってたら仕事になんないでしょ。一旦白衣に着替えたら全然。何とも思わないよ。自分でも不思議だけどさ、何か、スイッチが切り替わるのかもね」
「ふ~ん」
なんか企んでるような目がこっちを見た。
いやな予感。
問いただそうとしたら
「タオル」
と促された。
「自分でやる。出てろよ」
「できなかったら言ってよ?無理しないでね」
「ん」

この隙に先輩とお姉さんに挨拶をしておこうと、リビングへ向かう。
長い廊下の途中で、前からメイドさんが3人やってきた。
「牧野様」
「あ、今日からお世話になります。宜しくお願いします」
3人は困り顔で言いづらそうに言った。
「あの、今、坊ちゃんから内線がありまして」
「へぇ、なんだろ。どうかしたのかな。あたし、見てきますよ」
「あ、いえ。あの・・・・」
「?」
「『牧野の着てる白衣をひん剥いて、なんかフツーの服着せとけ』とおっしゃられて・・・」
「牧野様、あちらで着替えて頂けますか?」
「え?待ってください。どういうことなのか、あたし聞いてきます」
「それが、白衣のままではお部屋に入れるなと・・・」
「椿様からも、牧野様に着替えていただくようにと指示されておりまして・・・」
はぁ?
お姉さんまで?
一体、あの姉弟は何を考えてんの?
あたし、一応勤務中なんですけど。
困惑するあたしを取り囲み、物腰はやんわりとしながら、でも抵抗させず、メイドさんたちは
あたしを部屋に押し込んだ。


さすが道明寺家のメイドさん。
あくまでも控えめな態度を崩さず、こちらの気を立てず、目的を遂げるとは。
結局あたしはカットソーとスカートに着替えさせられて解放された。
なんなのよ、一体。
どういうことかと、すぐに道明寺の部屋に戻り、飛び込んだ。
「ちょっと、あんたメイドさんに内線かけた?」
道明寺は着替えたところなのかベッドのふちに腰掛けている。
文句言ってやる。
まっすぐヤツの前に行って睨む。
「お」
お、じゃない。
言ってやろうとして、吸い込んだ息は
「ひゃっ!!」
という悲鳴で吐き出される。
急に背中に廻された感覚に前に一歩出ると、あたしは、道明寺の足の間に入れられ、やわらかく
抱きしめられていた。

どくん・・・・

心臓が一回大きく打ち、続けてドクドクと異常な速さで脈打つ。
「な・・・・」
胸の下あたりに顔を埋めた道明寺が、小さくすりすりと顔を擦りつける。
「道明寺!」
悲鳴みたいな声を出して、顔に血が昇り火照り出す。
奴の肩にかけた両手も真っ赤になっていて、あたしは全身が染まっているのを確信した。
「なんだよ、ゆでダコ」
少しだけ、顔をずらして見上げてくる甘い目線。
笑いを含んだ声で
「コレコレ。この反応」
とか言いやがって。
「は、離してよ」
「ヤダ、もちょっと」
腰に回された腕に力がこもり、拘束が強まる。

あたしは病人相手に乱暴もできず、逃れようと小さくもがいた。
「あんまモゾモゾすんな。ったくやりづれぇな」
「勝手に抱きついて何を言うか・・・っていうか着替え!メイドさんに着替えさせられたけど、
あたし勤務時間なんだから、白衣着てないと困る」
道明寺がやっと顔を上げた。
「やだ。お前、白衣着てるとなんかすましてるし、怒ってばっかだし、可愛げねぇし、それに
隙がねーんだもん」
「いい事じゃん、仕事中なんだから」
「一本抜けてるくらいがちょうどいいんだよ」
「なにそれ」
ワガママ坊ちゃんめ。

怒鳴りつけてやろうと睨むと、両肩に体重をかけられて長い足の間に沈む。
膝を立てたまま抱きこまれたあたしは、道明寺を見上げる形になった。
「こっちのがかわいい」
顔を傾けて、近づくにつれて伏せられていく長い睫毛。
「目、つぶれよ」


・・・ホンットに・・・・
ほんっとヤダこのバカ。
こんな、こんな、こんな、こんな!
フェロモンだだ漏れで迫ってきて、一体あたしにどうしろって言うのよ~~~!!!

「あっ・・・!」
全身から醸しだされる妖しい色気に、固まったままのあたしの唇は、いとも簡単に塞がれた。
あったかい唇がゆっくりと押しつけられ、文句を封じ込める。
大きな手に後ろから頭を押さえられて動けなくなった。
じんわりと、何度も押してけられては離れる唇が優しすぎて切なくなる。

でも

閉じた唇を開けろと舌でノックされて、もがいた。
これはあたしがキスしちゃいけない唇だから。

彼の婚約者の
モノだから

必死で両手を突っ張るとようやく身体が離れる。
ホッとして手の力を緩めたら、またすごい力で抱きしめられた。
苦しい離せ痛いバカ、怒鳴りつけたけど胸に押しつけられて、自分でも、モゴモゴとしか聞こえない。

必死のあたしの耳に、低くて優しい声が響いた。
「ただいま、牧野」

突然何を言い出すかこの男。
ああそう言えば、昨日帰国して、すぐ刺されて病院送りになったんだっけと思いだした。
「お、おかえり」
なんとか隙間から声を出して返事をすると、頭のてっぺんにすりすりと頬ずりする感触。
「あ~~~~!ちくしょ~~!!!」
低い唸り声。
「抱きてぇ」
更に腕に力が入った。

!!!

「だっだだだっだめにきまってるでしょ!!」
「チッ・・・わーってるよ」
「は、離してよ」
「うるせえ、こんくらい、いーだろが。お前、何年オアズケ喰らわしてると思ってる訳?
7年だぞ7年。ったくありえねーっつーの!こら、暴れんな」
「オアズケって、こ、婚約者のいるヒトとあたしがどーこーなる訳ないじゃん!」
「・・・またそれかよ」
道明寺はひとつ舌打ちをすると、身体を離しあたしを上から見下ろした。
「婚約なんて認めてねーって、何回言ったら解る?強情女め」
「あんたが認めてなくてもそういう事になってんの。世間的にも、それにあんたの会社の重役会だって大賛成なんでしょ。・・・ねぇ、もうやめよう。何回も話したじゃん」
強い視線に負けそうになって、歯を食いしばった。
やばい。
これ以上話したら、泣いちゃうかもしれない。
意識したのがいけなかったのか、涙が出てきた。
「お、おい、泣くなよ。」
道明寺がオロオロしだし、涙をぬぐおうとしたのか右手を上げた。

・・・・・・・・

出血してる~~~~!!!

包帯に、手の平の大きさで血が沁みてきていた。
そういえば、コイツはさっきまであたしを、ぎゅうぎゅうと締めつけていたんだっけ。
「包帯変えないと・・・・」
慌てて立ち上がった。


  




          7へ




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2009/11/26(木) 15:18 | | #[ 編集]
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